東大物理'19年前期[1]

水平な床面上にとったx軸に沿って動く台車の上の物体の運動について以下の設問T,Uに答えよ。

T 図1-1に示すように、台車の上にばね定数kを持ち質量の無視できるばねを介して質量mの物体が取り付けられており、物体は台車上を滑らかに動く。台車に固定された座標軸yを、ばねの自然長の位置を原点として、x軸と同じ向きにとる。ばねはy軸方向にのみ伸び縮みし、ばねと台車は十分長い。台車はx軸方向に任意の加速度aで強制的に運動させることができる。として以下の設問に答えよ。

       表1-1
 時刻t台車の加速度a
加速区間0
等速区間0
減速区間
(1) 台車が,物体がで静止している状態から、台車を表1-1に示す加速度で強制的に運動させる。加速度の大きさは定数である。時刻における台車の速度、および時刻からまでの間に台車が移動する距離を求めよ。
(2) 物体がで静止している状態から、表1-1 (nは自然数)として台車を動かす。時刻における物体のy座標および台車に対する相対速度を求めよ。


     表1-2

時刻t台車の加速度a
加速区間0
減速区間T
(3) 次に台車を止めた状態で物体を ()にいったん固定したのち、で物体を静かに放し、表1-2に示す加速度で台車を強制的に運動させる。
加速度の大きさがある定数のとき、時刻において物体のy座標はとなり、台車に対する物体の相対速度も0となる。の値およびにおける物体のy座標を求めよ。

U 手のひらの上に棒を立て、棒が倒れないように手を動かす遊びがある。このしくみを図1-2に示す倒立振子で考える。倒立振子は質量の無視できる変形しない長さの細い棒の先端に質量mの質点を取り付けたものとし、台車上の点Oを支点としてx軸を含む鉛直面内で滑らかに動くことができる。倒立振子の傾きは鉛直上向きから図1-2の時計回り角度θ(ラジアン)で表す。θの大きさは十分に小さく、の近似が成り立つ。台車は倒立振子の運動の影響を受けることなく任意の加速度aで強制的に動かせるものとする。重力加速度の大きさをとして以下の設問に答えよ。
(1) 台車が加速度aで加速しているとき、台車上で見ると、θだけ傾いた倒立振子の先端の質点には、図1-2に示すように重力と慣性力が作用している。質点に働く力の棒に垂直な成分f θamを用いて表せ。ただし、f の正の向きはθが増える向きと同じとする。

(2) 時刻で台車は静止しており、倒立振子を傾けて静止させた状態から始まる運動を考える。時刻で台車が静止し、かつ倒立振子がで静止するようにしたい。そのために倒立振子を図1-3に示すように運動させる。すなわち単振動の半周期分の運動でから0を通過してに至り、続いてから振幅の異なる単振動の半周期分の運動ののち、においてに戻り静止する。このような運動となるように加速度aを変化させる。

以下の式中の空欄からに当てはまる式を選択肢@からPの中から選べ。選択肢は繰り返し使って良い。また空欄からに当てはまる数式を書け。

時刻からの間のθ
と表される。このように単振動する質点にはたらく復元力F
である。この運動を実現するためには設問U(1)で求めたf Fと等しければよいので加速度aは次の式となる。
この式の第1項が単振動の加速度と同じ形であることを考慮すると、時刻からの台車の速度の変化を用いて
となる。
時刻からの運動についても単振動の半周期分であるので同様に考えれば、この区間の台車の速度の変化を用いて
となる。よって
を得る。
@   A   B   C   D   E   F 
0  G π  H   I   J   K   L   M   N   O   P 



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解答 前半は、面倒ですが、慣性力がからむ単振動の基本問題です。後半は、手の上に立てた棒を倒さないようにするには、手をどのように動かせばよいか、という問題です。

T(1) 0等加速度運動で、等加速度運動の公式より、における台車の速度は、
......[]
0の移動距離は、
は速度の等速度運動で、移動距離は、
は等加速度運動で、移動距離は、

0の移動距離は、
......[]

(2) 物体は台車上で周期単振動をします(ばね振り子を参照)。台車の加速度がなので、物体には、ばねの弾性力の他に、慣性力が働きます。単振動の振動中心(とします)は、力のつり合いの位置で、より、
物体は、最初にで静止していたのでここが振動端です。単振動の振幅は、
において物体は、単振動のとは逆の振動端、
に来て台車に対して静止します。ここから,つまり、の間は、慣性力がなくなり弾性力のみとなるので、単振動の振動中心はに変わります。で一旦台車に対して静止するので、ここが振動端となり、振幅は、
です。物体は、には他の振動端、
に来ます。のときは、以降、この単振動が繰り返され、において物体は、において台車に対して静止します。
,つまり、においては、台車の加速度がに変わり、物体には慣性力が働きます。単振動の振動中心
(とします)は、より、
単振動の振幅は、
物体は、において、もう一つの振動端、
に来ます。において、物体のy座標は、 ......[]
この位置で物体は台車に対して静止するので、物体の台車に対する相対速度は、0 ......[]
注.上記のように丁寧に考えていくと時間がかかります。試験会場では、右図のような図を描いて、「図より」として効率的に答えるのが賢明です。
(3) 0において、台車の加速度がになるので、物体には慣性力が働き、振動中心は、より、,振幅は、

となり、のとき、他の振動端、
 ・・・@
に来ます。
Tにおいて、台車の加速度がになるので、物体には慣性力が働き、振動中心は、より、,振幅は、
となり、のとき、他の振動端、
これが0になるためには、 ∴ ......[]
における物体のy座標は、@に代入して、
......[]
注.(3)(2)と同様に右図のような図を描いて、「図より」として答えるのが賢明です。

U(1) 重力の棒に垂直な成分は,慣性力の棒に垂直な成分は、,よって、質点に働く力の棒に垂直な成分f は、
......[]

(2) 倒立振子は周期の単振動をします。における倒立振子の運動が単振動であることから、図1-3より、振幅は,振動中心はであって、においてにおいてであることより、
 ・・・@ [] 2 [] 1 ......[]
復元力Fは、単振動の角振動数がであることから、
 (単振動を参照)
 [] 10 ......[]
と@より、
よって、台車の加速度
aは、

 [] 4 [] 1 ......[] ・・・A
からの台車の速度変化は、より、
 (不定積分の公式を参照)


 [i] ......[]
の違いを考えると、単振動の半周期は変わらず、を求める積分のうち、単振動の部分(問題文に書かれているA式の第1)はやはり0で、図1-3より振動中心はであって、 [ii] ......[]
時刻において台車が静止するので、0Tの台車の速度の変化について、です。よって、[i][ii]より、

 [iii] ......[]
注.上記のように台車の加速度を変化させるとき、とで、θ0に戻りますが、台車の位置が変化していることに注意してください。T(3)でも台車の位置は変化しています。



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