光電効果

19世紀中葉に、ガラス管の中に電極を2(負側の陰極と正側の陽極)入れて電圧をかけガラス管内部を真空ポンプで排気してゆくと放電現象が起こることが知られていました。陰極側を加熱すると電流が流れるので、陰極から何かが飛び出すのだろうと考えられ、この何かは、陰極線と命名されましたが、磁場をかけると進路が曲げられることから負電荷をもつ粒子の流れであるという推測が出されており、陰極線を当てた金属球が負に帯電することから、1895年、ペランにより確認されました。
また、陰極線の研究から、陰極に紫外線を当てても陰極線が出ることを、
1887年にヘルツが発見し、亜鉛球に紫外線を当てると正に帯電することを、1888年にハルヴァックスが発見し、この現象は光電効果と呼ばれるようになりました。さらに細かい実験が行われて、以下のような事実が確認されました。
(1) 光電効果を起こす光には、ある限界の波長(光電限界波長)があって、その波長より長い波長の光を当てても陰極線は発生せず、光電効果は起こらない。
(2) 陰極線が発生すると、陰極陽極間に電流(光電流と言います)が流れますが、陰極陽極間の電圧を大きくしても、光電流は変化しない。光電限界波長を超える波長の光を強くして陰極に当てると、光電流が増大する。
(3) 陰極陽極間の電圧を陰極の方を高くしても光電流が流れる。しかし、陰極側の電圧の絶対値をある程度以上高くしてしまうと、陰極線は発生しなくなり、光電流は流れなくなる(この限界電圧阻止電圧と言う)。光の波長を一定にすると、阻止電圧は陰極金属の材質に依存し、陰極金属が同じときは、光の波長を小さくすると阻止電圧の絶対値が大きくなる。
以上をグラフで表すと、光電流と陽極陰極間電圧、光の強さ、光の波長との関係は右図のようになります。光の強さを強くした場合を赤線(阻止電圧は変わらず、光電流が大きくなる)、波長を小さくした場合を青線(阻止電圧の絶対値が大きくなるが、電圧を高くすると元の波長の光電流に近づく)で書いてあります。
1891年にストーニーによっ提案されていた負電荷をもつ粒子「電子」は、1897年にJ.J.トムソンが行った、電場中を通過する陰極線の偏向の実験から比電荷が測定され、負電荷を有する基礎粒子としての性格が確定し、この「電子」という言葉を用いて、上記の事実(1)(3)を言い換えると(以下で光電限界振動数は、光電限界波長光速cとの間に、という関係があります)
(1) 振動数光電限界振動数未満の光を陰極金属に当てても、光電子は飛び出さない。限界振動数以上の光を当てると、直ちに光電子が飛び出す。
(2) 振動数を大きくすると、光電子の数は変わらず、光電子の運動エネルギーが増大する。光を強くすると比例して光電子の数が増大するが、光電子の運動エネルギーは変わらない。
(3) 光電子が飛び出す限界の電圧(阻止電圧)があり、陰極金属の材質に依存する。また、陰極に当てる光の振動数を大きくすると阻止電圧の絶対値も大きくなる。
19世紀末の物理学の知見では、光は波動と考えられており、光波のエネルギーは、振動数2乗に比例することが知られていましたが、振動数が小さくエネルギーの小さな弱い光を長時間当てて充分なエネルギーを供給しても光電子が飛び出さないのに、なぜ、振動数が大きくエネルギーの大きな光を当てた瞬間に光電子が飛び出すのか、なぜ、光電限界振動数阻止電圧が存在するのか、説明できませんした。
この疑問を解決したのが、
1905年に出された、アインシュタインの光量子仮説です。アインシュタインは光量子仮説により、1921年にノーベル賞を受賞しました。
既に光量子仮説より以前の
1900年に、やはり当時疑問に思われていた黒体輻射の理論に対して、プーランクが、光はエネルギーをもつ単位で放射吸収される、という量子仮説を提唱していました。アインシュタインの光量子仮説はこれを応用したものになっています。光量子仮説によると、
(1) 光はエネルギーをもつ粒子(光子)としての側面をもっており、電子が原子の拘束を振り切るためのエネルギーW (仕事関数と言います)を超えるエネルギーを、1個の電子が1個の光子から直接受け取らないと、陰極から飛び出さない。Wを超えるエネルギーを受け取った瞬間に、光電子が飛び出す。
(2) 陰極から飛び出す光電子の運動エネルギーの最大値は,光子1個のエネルギー仕事関数Wとの差になる。つまり、
 (右図グラフに、運動エネルギーの最大値振動数νの関係を示す。限界振動数。右図のグラフの傾きからプランク定数を求めることができる。なお、光電子の速さvと、光の振動数ν(ギリシャ文字のニュー)の文字の違いに注意)
光の振動数を大きくしても、光電子の運動エネルギーが大きくなるだけで、光電子の数は変わらない。
光の強さは、光子の数に依存する。光を強くして、光子の数を
2倍にすると飛び出す光電子の数も2倍になる。
注.運動エネルギーの最大値がになるというのは、エネルギーを受け取った電子が金属内部から表面に出て飛び出すまでにエネルギーを使うことがあるから(全部が運動エネルギーになるときが最大値)と考えてください。
(3) 陰極が陽極よりも阻止電圧だけ電圧が高いとき、
となりますが、陰極材質によって仕事関数Wが変わると、阻止電圧も変わる。陰極材質が同じなら、光の振動数が大きくなると阻止電圧も大きくなる。
また、光電限界振動数とすると、となります。仕事関数は、金属によって異なり、1.95.3eV程度の値です。光電限界振動数程度、光電限界波長(可視光〜紫外線)程度の値です。

細かいことを言うと、陰極金属と陽極金属が異なる場合など、阻止電圧が陰極金属の仕事関数で決まるのか、という問題提起がありますが、高校の範囲
(大学入試の範囲)では、こうした効果は無視し、仕事関数は陰極金属によって異なる(光電管、光センサーなどはこうした考え方で設計されています)、として考えます。正しい考え方は高校の範囲では無理なので、疑問を持つ方は大学で勉強してください。


アインシュタインによると、
振動数ν波長λの光は、波動としての側面とともに、
エネルギー,運動量
を有する粒子としての側面を持つ。この粒子を光子と呼ぶ。光の強さ(明るさ)は光子の数によって決まる。



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