学習院大物理'08[3]

伸び縮みせず気体を通さない軽い素材で作られた気球を考える。気球がもっとも大きくふくらんだときの体積はであるとする。気球にはのヘリウムが入っている。ヘリウム、空気は、理想気体とみなしてよく、1molあたりの質量を、それぞれ、とする()。気体定数をRと書く。数値計算の有効数字は2桁とする。

海抜
10km程度までは、高度(海抜)5km増えるごとに気圧は半分になる。また、大気の温度は、高度が1km増えるごとに下がる。気球内部の温度は、常に大気の温度と同じとする。海抜hの気圧と温度をそれぞれと書く。図(A)には、海抜0kmで気圧100,000Pa,温度273Kの場合について、hに対して書いてある。図(B)は、の範囲を拡大したものである。
高度
hにおけるヘリウムの体積をと書く。海抜0kmでは、ヘリウムの体積はより小さいとする。
(a) 気球が上昇すると、は減少するか、増加するか。または変わらないか、根拠を示して答えよ。ただし、であるとする。
(b) である高度で、気球に働く浮力と重力の合力を求めよ。
(c) 海抜0kmで、とする。となる高度を求めよ。また、それより高い高度での気球の浮力を求めよ。
(d) の場合に、気球に2kgのおもりを付けると何kmまで上昇できるか。ただし、,気体定数Rは、とする。


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解答 センター試験の浮力の問題用に取り上げましたが、目新しい設定の問題なので戸惑うかも知れません。(d)は、浮力重力力のつり合いが成立するときに、果たして、気球は止まってくれるのか?という気もしますが、ここでは、力のつり合いの位置までは気球は上昇できる、と考えることにします。

(a) である高度hにおいて、気球内のヘリウムガスの状態方程式は、
 ・・・@
分母のは、気球が上昇しhが大きくなると図(A)より減少します。ということは、気球が上昇すると、は増加 ......[] します。

(b) 気球自体に働く重力は軽い素材でできているので無視します。
気球内のヘリウムガスの質量なので、これに働く重力は、(鉛直下向き)
気球に働く浮力は、気球内に大気があるとしたときにこの大気に働く重力と同じ大きさです。
気球内に大気があるとして、大気のモル数をとすると、状態方程式は、
 ・・・A
@,Aを見比べると、
気球内に大気があるとしたときの大気の質量,これに働く重力は、(鉛直上向き)
よって、気球に働く重力浮力合力は、
鉛直上向きに、大きさ
......[]

(c) 海抜0kmにおいて、状態方程式は、
 ・・・B
高度hにおいてだとして、@÷Bより、

(B)より、 ......[]
高度hを越えると、気球の体積で一定になります。大気の状態方程式はAのままなのですが、大気の占める体積は気球の体積ではなくなるので、高度hにおける大気の体積(気球の体積で制限されずにそのままふくらんだとしたときの体積)として、Aは、も考慮して、
 ・・・C
となります。仮に体積の気球内に大気があるとしたときには、大気のモル数はではなくなり、これをnとして、大気の状態方程式は、
 ・・・D
よって、気球に働く浮力は、
......[]
注.高度hを越えるとき、気球内のヘリウムガスは気球自体からを受けるようになり、気球内の圧力ではないことに注意してください。

(d) 力のつり合いが成立するまでは気球は上昇できるとして、気球+おもりにかかる力のつり合いより、
(B)より、 ......[]


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