千葉大物理'10[8]

屈折率の媒質1と屈折率の媒質2がある。ただし、とする。

1 図1に示すように、媒質1と媒質2の境界面ABは平行な平面で、その間隔はdとする。媒質1中での波長がλの光を媒質1から境界面Aに垂直に入射した。入射光が境界面Aに到達したときの位相は揃っているものとする。以下の問いに答えよ。
(1) 媒質2中での波長λを用いて表せ。
(2) 境界面Aで反射された光と境界面B1回反射された光が媒質1中で互いに強め合う条件をλd0以上の整数mを用いて表せ。
(3) 境界面AでもBでも反射されなかった透過光と、境界面Bと境界面Aで、この順に1回ずつ反射された透過光が互いに強め合った。波長λを固定したとき、この条件を満たす最小のdの値λを用いて表せ。ただし、とする。

2 図2のように、媒質1と媒質2が平らな面で接しており、この面以外に境界面は存在しないとする。媒質1と媒質2の境界面に立てた垂線と角度をなす方向から媒質1中での波長がλの平行な光を入射させた。細い実線は入射波の波面を表す。以下の問いに答えよ。
(1) 媒質1から媒質2に透過した光の進行方向と境界面に立てた垂線のなす角度をとする。の間に成り立つ関係式を書け。
(2) 境界面で反射された光と入射波が互いに強めあい、波の振幅が最大となる点のうち、境界面に一番近い点と境界面の距離(この点から境界面に下ろした垂線の長さ)hを、λを用いて表せ。

3 図3のように、媒質1と媒質2の境界面ABは平行な平面で、その間隔はdとする。媒質1中での波長がλの位相の揃った光を細いスリットSに垂直に入射させる。スリットと境界面Aの距離をとする。境界面Aから距離の位置に境界面Aに平行にスクリーンを置く。スリットSを通って境界面A上の点Pで反射された光と、スリットと境界面A上の点Oを通った後、境界面B上の点Qで反射された光がスクリーン上の同じ点Rに到達した。以下の問いに答えよ。
(1) スリットを通って境界面A上の点Oに入射する光が境界面に垂直な方向となす角度を,点Oを通って媒質1から媒質2に透過する光の進行方向と境界面Aに立てた垂線のなす角度をSPと境界面Aに垂直な方向のなす角度をとするとき、dの間に成り立つ関係式を書け。
(2) スクリーン上の点Rに到達した二つの光が強め合う条件をλd0以上の整数mを用いて書け。
(3) dよりも十分小さいとき、と置くとよりも十分小さい。αの近似値をdを用いて表せ。必要があれば、
を用いて良い。
(4) dよりも十分小さいとき、スクリーン上の同じ点Rに到達した光が強め合う条件をλd0以上の整数mを用いて表せ。必要があれば
を用いて良い。


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解答 難問というわけではないのですが、公式をそのままあてはめる、という感覚では正解が得られないように工夫されている問題です。試験会場で、文章の形で暗記してきた物理法則を思い出すのではなく、まさに眼前で物理現象が起きているかのように捉えることができるか、ということが問われています。
真空中での
光速cとすると、屈折率nの媒質中での光速となります。振動数は真空中でも媒質中でも変わらないので、真空中での波長λとすると、媒質中での波長となります。屈折率は1以上で、媒質中では光速波長も小さくなることに注意してください。
3では、最終解答に使える文字が、だったり、だったりして、行ったり来たりするので面倒ですが、問題文の指定に即して答えるように注意してください。

1(1) 真空中での波長です。媒質2中の波長は、真空中の波長となり、
......[]
(2) 境界面Aで反射された光と境界面B1回反射された光との経路差は、境界面Bで反射する光が媒質2中を進む距離になるのでです。光路差は、この経路差に媒質2の屈折率をかけて、です。
境界面Aでの反射は、屈折率の小さい方から大きい方に入ろうとして起こる反射なので固定端の反射で、光の位相πずれます。境界面Bでの反射は、屈折率の大きい方から小さい方に入ろうとして起こる反射なので自由端の反射で、光の位相はずれません(波の反射を参照)
結局、両反射光では
位相πずれて、強め合う条件と弱め合う条件が逆になり、両反射光が媒質1中で強め合う条件(光の干渉を参照)は、光路差を真空中での波長(整数+)倍であるとして、
......[] ()
(3) 両透過光の経路差は、BAの順に反射する光が媒質2中を進む距離になるのでです。(1)と同様に、光路差は屈折率をかけてです。
境界面Bでの反射も、境界面Aでの反射も屈折率の大きい方から小さい方に入ろうとして起こる反射なので自由端の反射で、光の位相はずれません。
両透過光が強め合う条件は、
光路差を真空中での波長の整数倍であるとして、
 ()
dのとき最小で、
......[]

2(1) 屈折の法則より、 ......[]
注意.より媒質1内の方が光が速く進むので、で、です。左辺と右辺で分母・分子の大小関係が一致していることに注意してください。
(2) 右図より、反射光と入射光の経路差です。媒質1中での距離なので、光路差です。
1で見たように、反射光の位相πずれていることに注意して、反射光と入射光が強め合う条件は、
 ()
Hのときに最小で、最小値hは、
......[]

3(1) 右図で、です。
より、
......[]
(2) SPRと進む経路の長さです。光路長は、媒質1内なので屈折率をかけて
SOQと進む経路の長さは、媒質1中で,媒質2中で
SOQRでの光路長は、媒質1中では屈折率をかけ、媒質2中では屈折率をかけて2倍し、
境界面
Aでの反射は固定端の反射、境界面Bでの反射は自由端の反射で、両光は、位相πだけずれていることに注意して、両光が強め合う条件は、光路差が真空中での波長(整数+)倍であるとして、
 ()
を使って答えるために、両辺をで割って、問2(1)の結果を利用すると、
......[]
(3) 3(1)の結果に、を代入して、

......[]
(4) 3(2)の結果に、を代入して、
3(3)の結果を代入して、


を使って答えるために、問2(1)の結果より、求める条件は、
......[]


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