東京科学大医歯学系物理'25年前期[1]

1 図1のように、上面の面積S,高さhの直方体が鉛直な姿勢で、上面の位置が水面から深さz,下面の位置が水面から深さの水中にある。大気の圧力を,水の密度を,重力加速度の大きさをとする。解答は、問題文末尾にある[ ]内の記号のうち必要なものを用いて表現すること。

(1) 直方体の上面、下面のそれぞれが水から受ける力の大きさを求めよ。[hSz]
(2) 直方体が水から受ける合力の向き、大きさを、鉛直方向と水平方向に分けて理由とともに答えよ。合力の大きさが0の場合は、解答欄に合力の向きを記入する必要はない。[hSz]

2 図2のように風船部、連結用のロープ、およびゴンドラで構成されている気球がある。風船部は断熱性の素材でできており変形せず体積はで一定である。風船部内の大気の質量を除いた気球全体(風船部+ロープ+ゴンドラ)の質量はMである。と比較して他の部分の体積は十分に小さく、風船部以外にかかる浮力は無視できるとする。風船部の下部には弁が備わり、問題(1)(5)では常に弁は開いており、風船部内の圧力は周辺の大気の圧力と等しいとする。また風船部内にはヒーターがついており、風船部内の大気を均質に加熱できる。はじめ気球は地表に置かれている。地表における大気の圧力を,温度を,密度をとする。大気のモル質量(1molあたりの質量)w,気体定数をR,重力の加速度の大きさをとし、大気は理想気体の状態方程式に従うものとする。解答は、問題文末尾にある[ ]内の記号のうち必要なものを用いて表現すること。

(1) 地表における大気の密度を求めよ。[Rw]
(2) はじめ風船部内の大気の温度はであった。気球にはたらく浮力の大きさを求めよ。[Rw]
(3) ヒーターで風船部内の大気の温度をゆっくり上げていくと、ある温度で気球が地表からはなれ浮上した。このとき、風船部内の大気の密度を求めよ。[M]
(4) (3)の気球が地表からはなれたときの風船部内の大気の温度を求めよ。[]
(5) 気球の質量Mがある値より大きい場合、風船部内の大気の温度をどんなに上げても、気球が地表から浮上しなくなる。を求めよ。[]
(6) 気球を地表に固定して、風船部の下部の弁を開いたまま風船部内の大気を加熱して温度をにし、その後、図3のように弁を閉じてから固定をはずした。気球はゆっくり上昇し、ある高度で静止した。上昇する間、風船部内の大気の温度はで一定とする。気球が静止した高度での大気の温度がのとき、そこでの大気の圧力を求めよ。[MRw]

3 上面の面積S,質量がmで上端の閉じた管があり、図4のように、全体が水没している。管内には物質量n,温度Tの理想気体が封入されている。管の上面と大気との水面は距離z,管の上面と管内の水面は距離hだけ離れている。はじめ管はで静止していた。大気の圧力を,水の密度を,重力加速度の大きさを,気体定数をRとする。なお、管は常に鉛直な姿勢を保ち、全系の温度はTで一定とする。管壁の厚さ、管内の気体の質量、水の蒸気圧は無視できるものとする。解答は、問題文末尾にある[ ]内の記号のうち必要なものを用いて表現すること。

(1) 管内の気体が管内の水面から受ける力の大きさを求めよ。[hS]
(2) 管内の水面が管内の気体から受ける力の大きさを求めよ。[hnRST]
(3) hを含まない式で答えよ。[mnRST]
(4) が増えると、hは増えるか、減るか、理由とともに答えよ。このhの変化はzの変化より十分に速い。その後、管は浮き上がるか、沈むか、理由とともに答えよ。



【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

解答 問1,問2,問3,独立した3問ですが、どれも浮力に関する問題です。問3(4)は、「浮沈子」で検索してみてください。簡単な実験の方法などが紹介されています。

1(1) 直方体の上面が水から受ける力は、大気圧と直方体の上側に位置する水に働く重力の合力です。その大きさは(向きは鉛直下向き)
......[]
直方体の下面が水から受ける力は、大気圧と直方体の下側の深さにおける水圧による力の合力です。その大きさは(向きは鉛直上向き)
......[]

(2) 直方体が水から受ける合力は、水平方向では、左側から受ける力と右側から受ける力がつり合い、前側から受ける力と後ろ側から受ける力がつりあうので、0 ......[]
鉛直方向では、(1)2力の合力となり、上向きを正として、
合力の向きは、鉛直上向き ......[] 合力の大きさは、 ......[]

2(1) 地表で大気の体積をとして、この体積内に存在する大気の質量は,ここに大気がnモル存在するとして、大気の質量はです。よって、
です(また気体のモル数は、で与えられます)。地表での大気の状態方程式 ・・・@
両式よりを消去して、 ∴
.......[]

(2) 気球に働く浮力は、気球内に気球外側の大気があるとしたときの大気に働く重力に等しく、@よりとなるので、 ......[]

(3) 気球が地表から離れ浮上する瞬間に、気球内の気体(密度をとします)を含めた気球全体に働く重力と気球に働く浮力つり合います。
 ∴ ......[]

(4) はじめの気球内の気体(モル、温度)の状態方程式:
 ・・・A
地表から離れる瞬間の気体(モル、温度)の状態方程式:
 ・・・B
B÷Aより、 ∴ ......[]

(5) 気球内の気体の密度をd,温度をTとして気球内の気体を含めた気球全体に働く重力はです。これが、気球に働く浮力を上回ると、気球は上昇しません。
 ・・・C
(4)と同様にして、,これをCに代入して、

としてもこれが成り立つためには、であって、 ......[]

(6) 温度における大気の密度をとすると、体積内に存在する大気のモル数はです。
温度における状態方程式: ・・・D
温度における大気の圧力をとして状態方程式: ・・・E
気球が静止した高度において、気球内の気体を含めた気体に働く重力と浮力とのつり合いより、
D,Eより、

.......[]

3(1) 管内の気体が管内の水面から受ける力は、深さにおける水圧に等しく、大気圧による圧力と、面積S,高さの領域内に存在する水にかかる重力の和に等しく、その大きさは、 .......[]

(2) 管内の気体の圧力をとすると、状態方程式:
管内の水面が管内の気体から受ける力の大きさは、 ......[]

(3) 管内の水面の位置における力のつり合いより、
 ・・・F
一方、において管が静止していたことから、管に働く重力と管に働く浮力とのつり合いより、
 ∴
Fに代入すると、

.......[]

(4) F式で左辺のを大きくすると、があまり変化しないとすれば右辺のhは減ります。hは減る ......[]
hが減ると、浮力が小さくなるので、管は沈みます。管は沈む ......[]



【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

  東京科学大物理TOP  物理TOP  TOPページに戻る

【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

各問題の著作権は
出題大学に属します。

なお、解答は、
苦学楽学塾制作です。

©2005-2025
(有)りるらる
苦学楽学塾 随時入会受付中!
理系大学受験ネット塾苦学楽学塾
(ご案内はこちら)ご入会は、
まず、こちらまでメール
お送りください。