岐阜大物理'11[1]

次の文を読み、以下の問いに答えよ。
太郎くんは、ヘリウムガスの詰まった風船に糸を付けて持ち、父の運転する自動車の後部座席に乗った。自動車が直線的に走るとき、その加速や減速に応じて風船が動いた。その運動の向きは車の加速度の向きと同じであった。等加速度運動する電車の中の、ひもでつるされたおもりの振る舞いについて知っていた
)太郎君にとっては、この風船の動きは非常に不思議であった。このとき、空気の流れのせいではなかと窓を確認したがすべて閉まっており、車内の空気は安定していた。この現象を理解しようと、太郎君は以下のように考えを進めた。
風船にはたらいている力が重力と糸の張力及び浮力だけであると考えると、上記の電車内のおもりの話と本質的に同じであり、観察結果と合わないことになる。何か他の力がはたらいているはずである。風船は空気中に浮いているのだから、その力は風船の周囲の空気が及ぼしているに違いないと思った。
そこで、まず車内の空気の運動について考えてみた。自動車が一定の加速度
a[]で運動しており、車内の空気や風船は安定しているとする。車内の空気の小さな部分A(1に示すような長さ[m],体積[]の直方体)の水平方向の運動について調べる。左右の側面の圧力を、図1のように[Pa][Pa]とする。この圧力の差[Pa]によって、部分Aが加速度aで自動車とともに運動していることになる。)その運動方程式を調べ、に比例することがわかった
風船は、この圧力差により水平方向の力を受ける。この力の大きさを求める考え方は、水中の物体が受ける浮力の話と筋道は同じであることに太郎君は気づいた。浮力の話では、水圧の差が深さの差に比例しており、その結果はアルキメデスの原理として知られている。加速度運動している自動車内の物体には、アルキメデスの原理に類似の

車内の物体は、その物体が押しのけた空気にはたらく慣性力(車内の観測者から見た)と同じ大きさで、逆向きの力を受ける
が成立することがわかった。このことから、太郎君は自動車の中で観察した風船の動きと、電車内につるされたおもりの動きについて、)"不思議"が不思議でなくなり、納得できた
以下では、風船の体積をV[],空気とヘリウムの密度をそれぞれ[][]とする。生じる圧力差は小さいので、これらの密度は変化しないとしてよい。また、重力加速度をg[]とする。なお、風船の素材は薄く、その質量は無視できるものとする。
1 下線部ア)の「非常に不思議であった」のは、何が、どのように不思議であったと推測するか。60文字以内で述べよ。
2 下線部イ)に述べていること、すなわち、自動車の進行方向に関する部分Aの運動方程式を書き表し、の関係式が、
となることを示せ。
3 自動車が一定の加速度aで走り、風船の糸が鉛直方向と角θ [rad]をなして安定しているとき、車内の太郎君が観察すると、風船にはたらく力(重力、空気による浮力、糸の張力、上記のアルキメデスの原理に類似の力)とみかけの力である慣性力とがつりあっていることになる。このつりあいの条件式を、水平方向と鉛直方向それぞれについて示せ。ただし、糸の張力をT [N]とし、風船が進行方向に傾いているときのθ を正とする。(2を参照)
4 上で求めたつりあいの式を用いて、風船が進行方向に傾くことを示し、さらにを求めよ。
5 下線部ウ)の太郎君の納得した内容を80文字以内で述べよ。


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解答 人間の通常の感覚とは異なる現象を扱った問題です。なお、慣性力を参照してください。本問のような問題では、国語の文章論述力も問われます。

1 等加速度運動する自動車内で、慣性力によって自動車の加速度と逆向きに動くと予想された風船が、加速度と同じ向きに動いたこと。(60) ......[]

2 部分Aに位置する空気の質量です。部分A断面積Sとすると、部分Aが受けるは、左側から自動車進行方向に,右側から自動車進行方向と逆向きに,よって、部分A運動方程式は、
より、

3 風船の質量です。風船に働くは、水平方向に、問2で求めたによる大きさの右向きの、左向きで大きさ慣性力張力の水平成分が大きさで左向き、鉛直方向に、上向きで大きさ浮力、下向きで大きさ重力、大きさで下向きの張力鉛直成分です。水平方向の力のつり合いより、
 ・・・@
鉛直方向の力のつり合いより、
 ・・・A
2の結果を用いて、@より、
......[]
......[
]
注.問題文中のアルキメデスの原理に類似のは、のことです。の場合には、空中に浮かびませんが、なので、物体は自動車の加速度と逆向きにを受けます。であれば、なので、物体は空中に浮上し、なので、物体は自動車の加速度と同じ向きにを受けます。

4  ......[]
より、であれば、θ の正方向、つまり、自動車の進行方向に風船は傾きます。

5 加速度運動する自動車内で、重力、慣性力だけが物体に加わるのであれば、物体は加速度と逆向きに動くが、重力、慣性力を上回る浮力があれば、物体は加速度方向に動く。(78) ......[]


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