京大物理'12[2]

次の文章を読んで、  に適した式を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、  はすでに  で与えられたものと同じ式を表す。また、問1〜問4については、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。

同じ極板面積と極板間距離を持つ平行板コンデンサー
ABがあり、図1のように、電圧の直流電源、抵抗値rの抵抗、および2つのスイッチからなる電気回路を構成している。両コンデンサーの極板は正方形で十分に広いとする。最初、コンデンサーAの極板間は、比誘電率()で形状が直方体の誘電体(絶縁体)ですきまなく満たされており、コンデンサーBには何も挿入されていない。このとき、コンデンサーBの容量をとすると、コンデンサーAの容量はである。
両スイッチは図
1のように開かれており、両コンデンサーに電荷は蓄えられていないとする。その状態から開始して、以下の操作(i)(iv)の手順でコンデンサーBに蓄えられている電荷について考える。ただし、誘電体の移動に際して極板との摩擦は無視できるとする。

(i) スイッチを閉じ、十分に長い時間が経過してからこれを開く。
(ii) コンデンサーAの誘電体を抜き取り、コンデンサーBに挿入し極板間を満たす。
(iii) スイッチを十分に長い時間閉じておく。
(iv) スイッチを開いてから、コンデンサーBの誘電体を抜き取り、コンデンサーAに挿入し極板間を満たす。

操作(ii)で誘電体を抜き取るのに要するエネルギーは イ であり、その後のコンデンサーAの電圧は ロ となる。操作(iii)の後、コンデンサーBの電圧は ハ であり、コンデンサーBに蓄えられた電荷は ニ ,両コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーの和は ホ である。操作(iv)の後、コンデンサーBの電圧は ヘ となる。

1 上記の操作(ii)(iii)を逆の順序で行っても、(ii)の後に十分に長い時間が経過すれば、両コンデンサーの電圧と電荷量は元の手順での(iii)の後の値と等しくなる。逆の手順による電圧と電荷量の計算を行うことなく、その理由を簡潔に説明せよ。

以下では元の手順で考える。操作(iii)でスイッチを閉じると、抵抗に電流が流れ、両コンデンサー間で電荷が移動する。移動に要する時間を大まかに見積もろう。電流は時間とともに減少するが、これを平均的に一定電流Iが時間Tにわたって継続するとみなすと、電荷の移動量に着目して ニ とおくことができる。

2 電荷の移動により両コンデンサーが失う静電エネルギーと、時間Tの間に抵抗で生じるジュール熱とが等しいとしてTを求めよ。導出の過程も合わせて示せ。

操作(i)(iv)を行った後、同じ手順を何度も繰り返すと、コンデンサーBの電荷量はやがてある一定値に落ち着く。このとき、操作(i)(iv)で電荷が移動しなくなる。

3 の値を求めよ。導出の仮定もあわせて示せ。

次に、コンデンサーBに誘電体が完全に挿入された状態で極板間電圧がVになるように充電されているとする。図2のように、コンデンサーBに抵抗値Rの抵抗を接続し、誘電体の挿入量を調整することにより、抵抗の電圧を短時間一定に保つ方法を考える。極板間で、誘電体が存在する部分と存在しない部分の体積比をxとすると、コンデンサーBの容量は ト となる。電圧がVのとき、抵抗に流れる電流により、微小時間の間に、コンデンサーBの電荷は チ だけ減少する。一方、体積比をに変更すると、それによる容量の減少量 リ となる。

4 電圧をVに保つように体積比を変化させるとき、変化率を求めよ。また、電圧を一定値Vに保つことができる時間を求めよ。導出の仮定もあわせて示せ。


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解答 コンデンサーの基本問題ですが、ボリューム満点で、試験会場では、かなり急ぐ必要があります。

() 誘電体が入っている状態でコンデンサーA静電容量です(コンデンサーを参照)
スイッチを閉じ、十分に長い時間が経過して充電完了後、コンデンサーAが蓄えている電荷は、静電エネルギーは、
スイッチを開いてから、コンデンサー
Aの誘電体を引き抜いても、コンデンサーA電荷は変わりません。誘電体を引き抜いた後のコンデンサーA極板間電圧は、
誘電体を引き抜いた後のコンデンサーA静電エネルギーは、
操作(ii)で誘電体を引き取るのに必要なエネルギーは、
......[]
() ......[]
() コンデンサーA(誘電体なし)とコンデンサーB(誘電体あり)の並列接続の合成容量は、,操作(iii)の後のコンデンサーB電圧は、
......[]
() コンデンサーBに蓄えられた電荷は、
......[]
() 静電エネルギーの和は、合成容量に蓄えられている静電エネルギーと考えて、
......[]
() 操作(iv)の後、コンデンサーB静電容量になり、コンデンサーB電圧は、
......[]

1 上記の操作(ii)(iii)を逆の順に行っても、スイッチを閉じている間のコンデンサーAB合成容量は同じです。また、極板に蓄えられる電荷(i)の操作で決まるので()と変わりません。電圧も変わりません。

操作(iii)でスイッチを閉じたとき、コンデンサーAからコンデンサーBに移動する電荷になります。()より、
これより、
となります。

2 両コンデンサーの失う静電エネルギーは、
時間Tの間に抵抗で生じるジュール熱は、
両者を等しいとして、
......[]

3 コンデンサーB電荷量が一定値に落ち着く、ということは、操作(iii)でスイッチを閉じる直前に、コンデンサーB電荷量で、コンデンサーAとコンデンサーB電圧が等しくなっている、ということです。
このとき、コンデンサーA電圧,コンデンサーB静電容量電圧は、,よって、
......[]

() 誘電体のある部分もない部分も極板間距離は同じなので、誘電体のある部分とない部分の極板面積の比もxです。極板面積Sとして、より、両者は並列接続されているのでコンデンサーB合成容量Cは、
......[]
() 抵抗両端の電圧Vです。抵抗を流れる電流は、オームの法則より、
時間でのコンデンサーB電荷の減少分は、です。
......[]
() ()の結果でとして、

......[
]

4 コンデンサーB極板間電圧は一定値Vに保たれているので、電荷の変化量はとなります。これが、()よりに等しいことから、
()の結果を代入して、
......[]
これより、は一定で、のとき、
電圧を一定値Vに保つことができる時間は、 ......[]


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