東京工業大学2005年前期物理入試問題


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[1] 図1のように、支点Oに一端が固定された長さRのひもに、質量mのおもりが取り付けられている。支点Oを通る鉛直線上、Oから下に距離のところに釘があり、おもりが右側に振れると、図2のようにひもが釘に引っかかる。ただし、とする。
おもりをひもがたるまないように鉛直線
ONの左側で静止させる。このとき、ひもと鉛直線のなす角をとする。この状態で静かに手を離し、おもりを自由に運動させる。
ひもの質量と伸びは無視できるものとし、支点
Oや釘Nも含めて摩擦はないと仮定する。釘とおもりの大きさは無視できるものとする。重力加速度をgとする。
(a) が非常に小さいとき、このおもりが初めて元の位置に戻るまでの時間を求めよ。
(b) 一般の(小さいとは限らない)を考える。手を離してから、おもりが運動し、釘Nの真下に来るまで、ひもはたるまないものとする。おもりが釘Nの真下まで来て、ひもが釘Nに接触する直前と接触した直後のそれぞれについて、支点Oがひもから受ける力の大きさを求めよ。
(c) の場合を考える。おもりが釘Nの右側で、釘Nと同じ高さに達したとき、釘がひもから受ける力の向きと大きさを求めよ。
(d) の場合を考える。ひもがたるまないまま、おもりが釘Nのまわりを一回転するとき、rが満たす条件を求めよ。ただし、おもりとひもは衝突しないものとする。
[解答へ]


[2] 図1のように磁束密度の一様な磁界中に、長さの金属棒MNが、ばね定数のばねで吊り下げられている。金属棒の両端には2本の平行な導体棒がついている。2本の導体棒は、固定された台に取り付けられた円筒状の金属端子PおよびQの中を、端子と電気的に接触を保ちながら摩擦なく鉛直方向に上下する。外部からの導線は固定された端子PQに接触する。この装置の内部抵抗はである。
磁界は金属棒と導体棒がつくる面に垂直である。金属棒は常に水平を保って動く。金属棒の下向きの変位をで表し、電流を流さないときをとする。

[A] 図1の装置を電流計として使うことを考えよう。
(a) 金属棒に電流を流したところ、金属棒の変位がとなって静止した。流した電流の向き(MからNの向きか、NからMの向きか)と大きさを求めよ。
(b) ばねを壊さないために、金属棒に流す電流がを超えると、それ以上金属棒が下がらないようになっている。金属棒の変位の最大値を求めよ。変位xが電流Iに対応するように、解答欄の図の目盛A0からまで20mAおきに目盛を記せ。
(c) 1の電流計と抵抗を用いて測定可能な最大電流を1Aとしたい。図2()()のどちらがふさわしい回路であるかを選び、必要な抵抗の値を求めよ。
[B] 図1の電流計を使って図3の回路を組み、未知抵抗を測定することを考えよう。電池の起電力はであり、内部抵抗は無視できるとする。スイッチSは初め開いている。測定する抵抗Rのときに電流計に流れる電流がになるように抵抗を設定した。
(d) 抵抗の値はいくらか。
(e) 次に未知抵抗Rを測定した。このとき電流計の読みからRの値が読み取れるように、解答欄の図の目盛B0からまでおきに目盛を記せ。
(f) 3の回路のスイッチSを閉じて未知抵抗Rを測定した。のとき、問い(e)で作った目盛Bから読み取った値を何倍すればRの真の値が得られるか。
[解答へ]


[3] 以下の文章中の@からFの  にあてはまる適当な式または数値を記せ。また、問いに答えよ。ただし、プランク定数を,光速を,電気素量をとする。数値を求めるときには、を用いよ。数値は有効数字3桁で示せ。
[A] X線は光より波長の短い電磁波であり、波動性と粒子性の2重性をもつ。粒子と考えたとき、波長λX線の粒子(光子)のエネルギーと運動量はそれぞれ @ および A と表される。たとえば、波長の光子1個がもつエネルギーは B eVである。
X線の粒子性はコンプトン効果に現れる。コンプトン効果ではX線を光子と考え、静止している自由電子と光子との衝突のモデルからX線の波長変化が説明される。図1のように衝突前の光子の波長をλ,衝突後の波長をとする。衝突後、光子は入射方向に対し角度ϕの方向に散乱され、質量mの電子は角度αの方向に速さvではね飛ばされる。この衝突の前後におけるエネルギー保存則を式で表すと、
と書ける。また、衝突の前後における運動量保存則を、入射方向とそれに垂直な方向の成分に分けて書くと、
入射方向成分:
垂直方向成分:
となる。これらの式から衝突によるX線の波長変化は、と近似して
と表される。ここで、は電子のコンプトン波長でである。
[B]  コンプトン効果は、図2に示すように単色X線を石墨に入射させ、X線分光器を用いて散乱X線のスペクトルを測定することで確認される。X線分光器ではX線をスリットを通して結晶表面に入射させ、反射したX線の強度を検出器で測定する。このとき結晶をX線の入射方向に対して回転角θ だけ回転すると、結晶の回転に連動して散乱角の方向に検出器が移動するように設定されている。この設定により回転角を変えていくことで、さまざまな波長のX線に対し結晶表面に平行な格子面によるブラッグ反射が起こる。その反射強度を測定することで、入射X線のスペクトルを得ることができる。この測定により、石墨からの散乱X線の中に入射X線と同じ波長のX線の他に、コンプトン効果によりわずかに波長の異なるX線が含まれているのが観測される。
(a) 波長λの単色X線をX線分光器に入射させ、結晶を0radから除々に回転していくと、ある角度θ のところで最初の散乱強度のピークが現れた。表面に平行な格子面の面間隔をdとして、λθdの間の関係を式で表せ。
(b) 入射X線の中にλよりわずかに長い波長X線が含まれている場合、この波長のX線が検出器で検出されるときの結晶の回転角をとする。θ 1に比べ十分に小さいとして、θdを用いてを表す近似式を求めよ。ただし、xが小さいときと近似してよい。
(c) 波長λの単色X線を石墨に入射し、散乱角の方向に散乱されたX線のスペクトルをX線分光器で測定した。散乱X線の中で波長変化のないX線が結晶の回転角θ のところで検出されたとすると、コンプトン効果により波長の変化したX線はθ からどれだけの角度離れた回転角のところで検出されるか。θλを用いて表せ。
(d) 結晶はX線に対し回折格子の役割をしている。コンプトン効果が光の領域で回折格子を用いた測定では見つからず、X線領域で発見された理由を、(c)の答を参考にして100字程度で説明せよ。
[解答へ]



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