東工大物理'05年前期[3]
以下の文章中の@からFの にあてはまる適当な式または数値を記せ。また、問いに答えよ。ただし、プランク定数を,光速を,電気素量をとする。数値を求めるときには、,,を用いよ。数値は有効数字3桁で示せ。
[A] X線は光より波長の短い電磁波であり、波動性と粒子性の2重性をもつ。粒子と考えたとき、波長λのX線の粒子(光子)のエネルギーと運動量はそれぞれ @ および A と表される。たとえば、波長の光子1個がもつエネルギーは B eVである。 X線の粒子性はコンプトン効果に現れる。コンプトン効果ではX線を光子と考え、静止している自由電子と光子との衝突のモデルからX線の波長変化が説明される。図1のように衝突前の光子の波長をλ,衝突後の波長をとする。衝突後、光子は入射方向に対し角度ϕの方向に散乱され、質量mの電子は角度αの方向に速さvではね飛ばされる。この衝突の前後におけるエネルギー保存則を式で表すと、 と書ける。また、衝突の前後における運動量保存則を、入射方向とそれに垂直な方向の成分に分けて書くと、
入射方向成分:
垂直方向成分: となる。これらの式から衝突によるX線の波長変化は、と近似して と表される。ここで、は電子のコンプトン波長でである。 [B] コンプトン効果は、図2に示すように単色X線を石墨に入射させ、X線分光器を用いて散乱X線のスペクトルを測定することで確認される。X線分光器ではX線をスリットを通して結晶表面に入射させ、反射したX線の強度を検出器で測定する。このとき結晶をX線の入射方向に対して回転角θ だけ回転すると、結晶の回転に連動して散乱角の方向に検出器が移動するように設定されている。この設定により回転角を変えていくことで、さまざまな波長のX線に対し結晶表面に平行な格子面によるブラッグ反射が起こる。その反射強度を測定することで、入射X線のスペクトルを得ることができる。この測定により、石墨からの散乱X線の中に入射X線と同じ波長のX線の他に、コンプトン効果によりわずかに波長の異なるX線が含まれているのが観測される。 (a) 波長λの単色X線をX線分光器に入射させ、結晶を0radから除々に回転していくと、ある角度θ のところで最初の散乱強度のピークが現れた。表面に平行な格子面の面間隔をdとして、λ,θ,dの間の関係を式で表せ。
(b) 入射X線の中にλよりわずかに長い波長のX線が含まれている場合、この波長のX線が検出器で検出されるときの結晶の回転角をとする。がθ や1に比べ十分に小さいとして、θ,d,を用いてを表す近似式を求めよ。ただし、xが小さいとき,と近似してよい。 (c) 波長λの単色X線を石墨に入射し、散乱角の方向に散乱されたX線のスペクトルをX線分光器で測定した。散乱X線の中で波長変化のないX線が結晶の回転角θ のところで検出されたとすると、コンプトン効果により波長の変化したX線はθ からどれだけの角度離れた回転角のところで検出されるか。θ,λ,を用いて表せ。 (d) 結晶はX線に対し回折格子の役割をしている。コンプトン効果が光の領域で回折格子を用いた測定では見つからず、X線領域で発見された理由を、(c)の答を参考にして100字程度で説明せよ。
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解答 [A]@ X線の振動数は,X線光子のエネルギーは ......[答] A 運動量は ......[答] B λ=[m]のとき、光子のエネルギーは、 ......[答] .......[答] D h .......[答]
E ......[答] 垂直方向成分: ......[答] F ......[答]
[B](a) 隣接する結晶面で反射するX線の経路差は右図より、 両X線が強め合う条件(ブラッグ反射の条件)は、経路差が波長の整数倍となることで、nを整数として、 (波の干渉を参照)ここでは、からだんだんθ を大きくしていって最初に強めあうところだから、
よって、 ......[答] ・・・(1) 加法定理より、 ・・・(2)
(2)−(1)より、
∴ ......[答] ・・・(3) (c) として、問題文に与えられているを(3)に代入すると、 (1)を用いてdを消去すると、 ......[答] (d) 石墨の結晶面間距離は[m],光の波長は[m]程度であって、強めあう条件:となり、これを満たすような自然数nはなく、そもそも強めあう方向がありません。X線の波長は[m]程度であって、強めあう条件は、であり、これなら小さいnに対して対応するθ が存在し、強めあう方向が存在します。に対しては、であり、(c)より、程度で、コンプトン効果が検出できるようになります。 光の波長ではブラッグ反射の条件が満たされる方向が存在しないが、X線の波長では、ブラッグ反射の条件を満たす方向が存在し、もrad程度で検出可能である。 ......[答]
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