東工大物理'08年後期[1]

大きさを無視できる粒子の、外力の働かない運動を考える。
[A] 図のように、速さの粒子1 (質量m)が、静止している粒子2(質量)に衝突し、一体の粒子3(質量)が生成される。
(a) 衝突による運動エネルギーの減少量U ()を、mAで表せ。
[B] Uが、ある正の一定値Q以上の場合、粒子3は、粒子4(質量m、速さ)と粒子5(質量,速さ)に分裂し、のエネルギーが再び運動エネルギーに加わる。すなわち、分裂後の粒子45の各運動エネルギーと衝突前の粒子1の運動エネルギーとの間には、
の関係式が成り立つ。図のように、粒子1の進行方向に対して、粒子4の進行方向のなす角度をθ,粒子5の進行方向のなす角度をϕ として、以下の問いに答えよ。
(b) の場合、粒子45は同じ速さでの方向に向かう。この場合のを、AQで表せ。
(c) の場合、衝突前の粒子1と分裂後の粒子45の各運動量の間に成り立つ関係式を、図中の記号を用いて表せ。
(d) の場合、粒子4の速さ2次方程式
を満たす。空欄()()を、AmQθ の記号を用いてうめよ。
(e) 粒子4の方向に向かう場合を考える。2つの値を持ちうるの範囲を、AQで表せ。
(f) 粒子4の範囲に向かうことのできるの範囲を、AQで表せ。


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解答 数学的な考察から得られる結果がどのような物理的意味を持っているか、というところが物理学の醍醐味のはずなのですが、入試問題で出題されると、受験生の悲鳴になってしまうかも知れません。後半は、物理的意味を考える以前に、数学の2次方程式の問題としてもかなり難問です。なお、衝突・合体・分裂の問題を参照してください。

問題文の図の右向きを正方向とします。

[A](a) 衝突後一体となったときの粒子3速度とすると、外力が働いていないので、衝突前後の運動量保存より、

衝突による運動エネルギー減少量Uは、


......[]

[B] 衝突後の粒子4,粒子5速さとします。
(b) 題意より、として考えます。
分裂前後の運動量保存より(衝突前の運動量です)

 ・・・@
よって、問題文中の運動エネルギーの関係式より、
 ・・・A
@より、
これをAに代入して、

......[]

(c) 運動量保存則を表す式を2成分に分けて書きます。
粒子1の運動方向の成分について、
......[] ・・・B
粒子の運動方向に垂直な方向の成分について、
......[] ・・・C

(d) ここは、(c)の運動量保存則の式から何をすればよいか戸惑うかも知れません。
AmQθ の記号を用いて」という指定を見ると、ϕ が出てきません。ここに着目します。つまり、ϕ を消去せよ、と、問題文は指示しているのです。
Bより、
Cより、
この
2式を2乗して加えると、ϕ が消去されて、
 ・・・D
問題文中の関係式より、
ここにDをAで割ったものを代入します。
をかけて、
 ・・・E
よって、
()() ......[]

(e) 「粒子4の方向に向かう場合を考える」という指定がついているので、として、Eを考えます。Eは、
 ・・・F
となりますが、この
2次方程式は、の範囲に相異なる2実数解をもちます。
その条件
(2次方程式の解の配置を参照)は、なので(粒子1が静止していたのではこの問題は成立しない)、Fの左辺をとおいて、
“Fの判別式:”かつ“
です。

 ・・・G
 ・・・H
G,Hより、
......[]

(f) のとき、となります。Eの左辺をとおくと、の軸はの範囲にきます。2次方程式が、の範囲に相異なる2つの解をもつことはあり得ません。ということは、となる解は、存在しても1つしかない、ということです。よって、2次方程式の範囲に少なくとも1つの解をもつ条件は、“”です。

......[]


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