首都大理系数学'07年前期[3]
以下の問いに答えよ。
(1) 実数a,b,x,yに対して、不等式
が成り立つことを示せ。
(2) 実数を成分とする2次の正方行列Aについて、次の2つの命題(ア)と(イ)は同値であることを証明せよ。
(ア) 行列Aは逆行列をもつ
(イ) 条件をみたす実数x,yはに限る。 (3) 実数a,b,c,dがをみたすとき、行列 , に対して、行列は逆行列をもつことを示せ。
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解答 (1)はコーシー・シュワルツの不等式です(不等式の証明を参照)。
行列Aの逆行列が存在するかどうか、ということを調べるときに、
・をみたすBを探す ・を示す の、2通りのアプローチの仕方があります。この問題では、後者で考えます。
(1) ∴
(2) 「(ア)と(イ)が同値」というのは、(ア)と(イ)が相互に必要十分条件になっていて、(ア)⇒(イ)と(イ)⇒(ア)がともに成り立つ、ということです。 ・(ア)⇒(イ)を示します。
よって、に限られます。 (イ)が成り立つとき、,と仮定します。 (i) なら、よりa,dのどちらかは0です。 なら、条件は、 , xは任意の実数でよいことになり、に限られることに反します。
,なら、条件は、 , は直線上の任意の点でよいことになり、に限られることに反します。 (ii) なら、よりb,cのどちらかは0です。 なら、条件は、 , yは任意の実数でよいことになり、に限られることに反します。
,なら、条件は、 , は直線上の任意の点でよいことになり、に限られることに反します。 (k:実数)とおくと、条件は、 , は直線上の任意の点でよいことになり、に限られることに反します。 以上より、とした仮定は誤りであり、,よって、行列Aは逆行列をもちます。 ∴ (ア) ⇔ (イ)
(3) が逆行列をもつことを示すためには、 が言えればよいわけですが、という条件を合わせて、のような形を作るために、 を考えてみます。
∴ よって、は逆行列をもちます。別解 上記の解答では、やってみたら偶然うまく行った、という面もありますが、問題の流れに沿って(1),(2)を利用して解答するのであれば、 ・・・@ をみたすx,yがどんな実数かを考えることになります。
@は、
となりますが、ここで(1)の結果を使うと、
・・・A
・・・B A+Bより、
ここで、なので、であれば、 ということになってしまいます。
従って、なので,つまり、@をみたすx,yはに限られることになります。
よって、(2)より、は逆行列をもちます。
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