鳥取大医数学'08年[4]
座標平面上に、直線l: ()と放物線C:がある。lとCとで囲まれた領域をDとする。ただし、Dは境界を含む。領域Dに含まれ、かつ、x,yともに整数である点の個数をで表すとき、次の問いに答えよ。
(1) 領域Dの面積をaの式で表せ。 (3) kが正の整数のとき、をkの式で表せ。 (4) 1以上の実数aに対して、を満たす整数kをとるとき、 が成り立つことを示せ。
(5) 前問(1)で求めたに対して、を求めよ。
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解答 問題文中のx,yがともに整数である点を、ここでは「格子点」と呼ぶことにします。
(1) とを連立して、
(2)(3) (3)の一般的な場合を考えさせるために(2)があるわけですが、(2)だけで解答するなら、,は図を描いて格子点の数を数えてしまうのがよいと思います。をうまく数えようとするとを数えるのと同じことをするので、ここでは、一緒に考えてしまうことにします。 ,つまり、直線と放物線に囲まれた領域D内()の格子点の数を求めるために、mを整数として、直線 ()上の格子点の数を数えて、について加え合わせることにします。
領域Dは、直線上では、 ・・・@ の部分に存在するので、直線上に存在する格子点の数は、@をみたす整数yの個数になります。もも整数なので、その個数は、個です(ではありません!3から7まで整数は個あります)。よって、 よって、(2)は、
(3)は、
......[答]
(4) kを正の整数として、のとき、であれば、 ・・・A 領域Dはaの値によって変わるので、
と書くことにすると、のときの領域Dは,のときの領域Dはです。
,,のそれぞれととの交点は、k,a,ですが、なので、Aと合わせて、 ・・・B (集合を参照) です。正確に言うと、Bの左側の包含関係の記号‘⊂'はの場合があり得ますが、右側の‘⊂'ではです。
,は、,内の格子点の個数なので、Bの左側の包含関係から、 ・・・C です。
は内の格子点の個数なので、Bの右側の包含関係から という不等式ができます((5)はこの不等式を用いて答えることができます)が、が言えないので、与不等式を示すことができません。
上記のように、Bの右側の包含関係ではなのですが、Aより、直線上のの部分の格子点は、には含まれますがには含まれません。この格子点の数はです。よって、 ・・・D です。この右辺とを比較します。 ∴ Dより、 ・・・E C,Eより、
・・・F これで示せました。
(5) (4)で示した不等式Fの各辺を素直にで割るのでは、a,kの2文字が出てきて、はさみうちに持ち込みにくいので、文字を1つにするように工夫します。 1以上の実数aに対して、を満たす整数kをとるとき、 これとFより、
・・・G より、となるので、のときです。
Gの左辺について、,従ってのとき、 Gの右辺について、,従ってのとき、 ......[答]
追記.よくある格子点の数を数える問題で、格子点の数と面積が極限において一致する、という結論が出てくるのですが、私は、この宇宙の基本原理はこうしたところにあるだろうと思っています。
この問題では、,,くらいのうちは、きれいな関係で並んでいるとは言えないのですが、の極限を考えるととなり、微積分学の結果と一致するようになるのです。 (n,pは正整数)として、 (点を通ります)とx軸、直線で囲まれる領域内の格子点の数を考えます。
鳥取大の問題と同じようにして、mををみたす整数だとし、直線上の格子点(の範囲にある)の数を数えると、個あります。について加え合わせると、 ですが、を利用して、 (連続個の整数の積を順列記号を用いて表しました。途中が打ち消しあって消えます) ∴ 同様にを利用して、 ここで、とすると、左辺も右辺もとなるので、 となります。は,,,を4頂点とする正方形の面積ですが、領域の面積は、 となるので、格子点の数は、の極限で、定積分により得られる領域の面積Sに近づくのです。
つまり、微積分学は、格子点が無限に多いときの結果と一致する、ということです。
物理学の基本法則は微積分で表されますが、格子状に並んだ基本粒子の振る舞いを無限に数多くの粒子について寄せ集めると、運動方程式や電磁誘導の法則になるのだろう、と、私は思います。それゆえ、物理学の対象をより微細な方向に進めていくと、光電効果やプランクの量子仮説、ボーアの原子模型のような、1個、2個、・・・、と数えていく格子点的な効果が見えてくるのです。2008年10月に、クォークの研究を行った小林誠博士、益川敏英博士とともに、南部陽一郎博士が、カイラル対称性の自発的破れによるクォークの質量獲得の理論の成果によりノーベル物理学賞を受賞しました。2007年に京都大学の研究チームが量子格子の理論を使ってコンピュータ・シミュレーションを行い、南部博士の理論の検証に成功しているそうです。詳しい理論の中身を知りませんが、こうした研究も、この鳥取大学の問題の延長上にあるのかも知れません。
この続きは、このウェブサイトをご覧の読者諸氏にぜひ考えて頂きたいと思います。
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