東京科学大医歯学系数学'25年前期[1]

20個の合同な正三角形の面を持ち、各頂点に5つの面が集まるへこみのない多面体を、正二十面体という。各面に20種類の異なる目が1つずつ与えられており、すべての目が等しい確率で出る正二十面体のサイコロをIとする。I2つの面ABに対し、Iの表面上を、Aの内部の点からBの内部の点へ、Iの頂点を通らずに移動するとき、横切るIの辺の本数の最小値をとする。たとえば、AB1辺を共有しているとき、となる。また、Iの任意の面Aに対し、とする。さらに、In回投げたとき、i回目に出た目に対応する面をとし、のとき、 ()の最大値をM,最小値をmとする。このとき、以下の各問いに答えよ。

(1) xyz空間において、I1つの面とxy平面が平行となるようにIを配置したとき、Iの頂点または辺上の点を通りz軸に平行な直線とxy平面の交点全体の集合がなす図形をとする。の概形を描け。ただし、における線分どうしの長さの比やなす角の角度は正確でなくてもよい。

(2) のとき、0以上の整数kに対し、となる確率をとする。となるすべてのkに対して、それぞれを求めよ。

(3) のとき、となる確率を求めよ。

(4) のとき、となる確率を求めよ。

(5) のとき、となる確率を求めよ。


【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

解答 立体感覚も問われる難問です。元問題に正二十面体の図が描かれているわけではないので、(1)からして大変です。
xy平面と平行であって、Ixy平面上にないIの一つの面である正三角形を△ABC(右図赤色の辺で囲まれる三角形、つまり、一番上に来ている正三角形)とします。ここでは原則として、1Iを投げて△ABCの位置にある面をとし、iIを投げて出た目に対応する面は、△ABCの位置にあるに対してどこに位置するか、ということで考えます。以下では、必ずしも、Iを投げて一番上に来ている面を△ABCとして考えているわけではないことに注意してください。

(1) 問題文では、を、「Iの頂点または辺上の点を通りz軸に平行な直線とxy平面の交点全体の集合」としていますが、これは正二十面体Iのすべての辺、頂点にz軸上方から光を当てたときのxy平面への投影をとする、ということです。

さて、頂点A5つの正三角形が集まるのですが、そのうち△ABCと辺ABを共有する正三角形を△ABDとします。同様に△ABCと辺BCを共有する正三角形を△BCE,△ABCと辺CAを共有する正三角形を△CAFとします。

すると、頂点
Aに集まる5つの正三角形のうち3つは△ABC,△ABD,△CAFです。残り2つのうち1つは△ABDと辺ADを共有し、もう1つは△CAFと辺AFを共有するのですが、この2つの正三角形も1つの辺を共有し、この辺をAGとします。こうして、頂点Aに集まる5つの正三角形は、△ABC,△ABD,△CAF,△ADG,△AFGです。
同様にして、頂点
H,頂点Iをとると、頂点Bに集まる5つの正三角形は△ABC,△ABD,△BCE,△BDH,△BEH,頂点Cに集まる5つの正三角形は△ABC,△CAF,△BCE,△CEI,△CFIです。

線分
DFの中点をJとすると、△ADJ,△AFJにおいて、ADAFAJ共通,DJ=FJより、△ADJ≡△AFJです。よって、∠AJD=∠AJF90°,即ち、AJDF
全く同様にして、DEの中点をKEFの中点をLとすると、BKDECLEF
また、△ADJ≡△BEK≡△CFLであって、AJBKCLです。
よって、△
ABCと△DEFは平行でxy平面にも平行です。

ABC,△ACF,△BCE3組の正三角形と、△ABD,△ADG,△BDH3組の正三角形とは、正二十面体の対称性より、辺ABに関して対称であって、台形ABHGと台形ABEFは合同であり、GH//AB//FE
全く同様にして、DF//BC//HI
よって、△DEF//GHIであり、△GHIxy平面に平行です。
但し、△
DEFと△GHIは同一平面上には存在せず、DHEIFGは正六角形ではなく、ギザギザになります。ですが、DHHEEIIFFGGDなので、DHEIFGxy平面への投影は正六角形です。

正二十面体には、正三角形の面が
20個ありますが、これをばらばらにすれば、本の辺があります。2つの正三角形が接するところに正二十面体の1本の辺ができるので、正二十面体には本の辺があります。正二十面体の頂点は、右図のABCDEFGHIの他に、この裏側に赤線で描いた正三角形の対面となる正三角形の3頂点があり、頂点は全部で12個あります。

また、を描くときに、正二十面体の対称性より、右上図の太線と赤線で描いた図形と同じ図形が、上下が入れ替わって裏側にも存在することに注意します。

こうしてを図示すると、右図のようになります。

(2) のとき、が右図の赤線で囲まれた正三角形だとすると(以後、として、正二十面体のサイコロをi回,j回投げたとき、「と同じ正三角形」というのは、に与えられている目と同じ目の正三角形がになる、という意味です)

となるのは、と同じ正三角形になるときで、その確率は、
となるのは、が右図の@の黄色着色部内の
3個の正三角形のいずれかである場合で、その確率は、
となるのは、が右図のAの橙色着色部内の
6個の正三角形のいずれかである場合で、その確率は、
となるのは、が右図のBのピンク色着色部
(DHEIFGに関して裏側になります)内の6個の正三角形のいずれかである場合で、その確率は、
となるのは、が右図のCの黄緑色着色部
(裏側)内の3個の正三角形のいずれかである場合で、その確率は、
となるのは、が右図のDの水色着色
(裏側)の正三角形である場合で、その確率は、
となることはありません。のときです。
......[]

(3) のときとなるのは、が右上図の赤線で囲まれた正三角形であるとして、
(i) が右上図B,C,D(DHEIFGに関して裏側)の領域内の正三角形,つまり、である
または
(ii) が右上図B,C、Dの領域内の正三角形、つまり、である
または
(iii) がともに右上図@,Aの領域内の正三角形であってかつ、である
場合です。なお、
(i)(ii)には重複があります。
(i)(ii)の確率を考えると、またはが右上図のB,C,Dに来る場合にはがともに右上図のB,C,Dに来る場合が重複するので、その確率は、
 ・・・E
(iii)の場合、と一致し、右上図の赤線で囲まれた△ABCに来たときには、がB,C,Dの領域内の正三角形にくればとなりますが、これは(ii)のEに含まれます。
また、が△
ABCに隣接する△ABD,△BCE,△CAF(右上図の@)に来たとき、例えばが△ABDに来たとき、が右上図表側(@,A)の△CEIや△CFIに来てもになります。が△BCEに来ると、が△ADG,△AFGに来てもになります。が△CAFに来ると、が△BDH,△BEHに来てもになります。これらの確率は、 ・・・F
また、例えば、が△
ADGに来ると、が右上図表側(@,A)の△BEH,△BCE,△CEI,△CFI(4通り)に来てもになります。が右上図Aの6個の正三角形のどこに来ても同様で、これらの確率は、 ・・・G
よって、のときとなる確率は、E,F,Gより、
......[]

(4) が右上図の赤線で囲まれた正三角形であるとします。mを大きくしようとして、のようにすると、はDとなり、と同じ三角形に戻ってしまい、になってしまいます。つまり、何度もIを投げると、それ以前に来た位置と近い位置に戻ってしまうことがあり、になってしまいます。

のときとなるためには、は、右上図のB,C,Dの領域内の正三角形でなければなりません。ここで、
がDだとすると、のときとなるためには、は右上図表側に来る必要がありますが、このときとなりとなってしまいます。
がCの3個の正三角形のどこかに来たとするとです。のとき、が右上図表側に来てしまうととなりとなってしまいます。ですが、例えばが右図の黄緑色の正三角形の位置に来ると、が右図の薄紫色の2つの正三角形のどちらかに来れば、となります。がこの状況となる確率は、 ・・・H
がBの6個の正三角形のどこかに来たとするとです。のとき、が右上図表側に来てしまうととなりとなってしまいます。ですが、例えばが右図のピンク色の正三角形の位置に来ると、が右図薄茶色の4つの正三角形ののどちらかに来れば、となります。がこの状況となる確率は、 ・・・I
よって、のときとなる確率は、H,Iより、 ......[]

の場合を考えます。
がCの3個の黄緑色の正三角形のどこかに来たとします。例えば、が右上図の黄緑色の正三角形であって、が右上図薄紫色の2個の正三角形のどちらかだとして、上記Iと同様に考えると、である位置は、どれもであってとなってしまいます。
がBの6個のピンク色の正三角形のどこかに来たとします。例えば、が右図ピンク色の正三角形であって、が右上図薄茶色の4個の正三角形のどれかだとして、例えば、右図の2通りの状況を考えると、が右図の緑色の正三角形に来れば、となります。この2通り以外には、となる場合はありません。よって、のときとなる確率は、 ......[]
の場合には、 ()のいずれかの中に12になるものがあり、となり得ず、となる確率は0 ......[]

(5) のとき、0から5までの整数値のみとるので、となる、ということは、05をとらない、ということです。
のとき、05をとらない、ということは、と一致せず、が右上図のDに来ることもない(の行先は通り) ・・・J
ということです。この確率はです。
のとき、
05をとらない、ということは、Jに加えて、はともにと一致せず、も右上図のDに来ることはない(の行先は通り) ・・・K
ということです。この確率はです。
のとき、
05をとらない、ということは、Kに加えて、はいずれもと一致せず、はいずれも右上図のDに来ることはない(の行先は通り)ということです。この確率はです。
のとき、
()がすべてのijについて05をとらない確率は、


のとき、正二十面体には20個の面しかないので、の全てが、と異なり、かつ、右上図のDに来ることはない、ということは起こりません。このときは、確率は0です。
以上より、のとき、となる確率は、
のときのとき
0 ......[]



【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

  数学TOP  TOPページに戻る

【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

各問題の著作権は
出題大学に属します。

なお、解答は、
苦学楽学塾制作です。

©2005-2025
(有)りるらる
苦学楽学塾 随時入会受付中!
理系大学受験ネット塾苦学楽学塾
(ご案内はこちら)ご入会は、
まず、こちらまでメール
お送りください。