中大理工物理'08[2]

次の文章の空欄にもっとも適した数式または数値を、それぞれ記せ。数値は有効数字2桁で答えよ。
楕円
(だえん)とは、平面上で、ある2(焦点という)からの距離の和が一定である点がえがく曲線である。ケプラーの第1法則として知られているように、太陽系の惑星の軌道は太陽を焦点の1つとする楕円である。ただし、地球や水星のような惑星の楕円軌道はほぼ円とみなしてよいものなので、以下では惑星の軌道は円軌道として計算することにする。
惑星の質量を
m,円軌道の半径(惑星−太陽間の距離)rとする。惑星が速さvで等速円運動しているとすると、向心力の大きさは (1) である。この力は太陽と惑星の間にはたらく万有引力であり、その大きさは、太陽の質量をM,万有引力定数をGとしたときで与えられる。このことから、惑星の公転速度は (2) と定められる。この値vで軌道円周の長さを割ることによって、公転周期を求めることができる。
地球と太陽の間の距離をとして、これを単位として考えることにする。太陽から木星までの距離を
p倍とする。すると、木星の公転速度は地球の公転速度の (3) 倍であることになる。したがって、木星は (4) 年で太陽を1周する計算になる。
探査機を打ち上げて図
1のような軌道で木星探査を実現させたい。
この探査機は木星と同様にケプラーの法則にしたがって運動するものとする。
(つまり、太陽と探査機との間の万有引力は考慮するが、地球や木星といった惑星と探査機との間の万有引力は無視してよいものとする。)
このことから導かれることを、順に考えてみよう。
まずケプラーの第
1法則より、探査機の軌道も太陽を焦点の1つとする楕円軌道であることになる。地球の軌道上から出発したときの速さをとすると、探査機と太陽を結ぶ線分がある短い時間の間にえがく面積は、近似的には図1の斜線を施した三角形の面積で与えられる。探査機が木星の軌道近くを通過するときの速さをとすると、ケプラーの第2法則(面積速度一定の法則)より
(5)
が成り立たなければならない。また、エネルギー保存則より
(6)
が成り立つ。この2つの式を解くと、地球の軌道上から出発するときの探査機の速さは地球の公転速度の (7) 倍でなければならないことがわかる。
太陽から探査機までの距離は、地球の軌道上から出発したときに最小値をとり、木星の軌道を通過するときに最大値をとる。この最小値と最大値の平均値を楕円軌道の半長軸という。ケプラーの第
3法則より、公転周期の2乗は半長軸の3乗に比例する。したがって、探査機は地球の軌道上から出発して (8) 年後に木星の軌道に到達することになる。
具体的な数値を計算してみよう。木星−太陽間距離は地球−太陽間距離の約
5.2倍である()。よって、木星の公転周期は約 (9) 年である。地球の公転速度は約である。これより、探査機が地球の軌道上から出発するときの速さは、 (10) ,木星の軌道までの航行期間は約 (11) 年と求められる。ただし、として計算せよ。


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解答 ケプラーの法則は、以下のようにまとめられます。
1法則:惑星は太陽を1つの焦点とする楕円軌道を描きながら運動する。
2法則:(面積速度保存則)太陽を始点、惑星を終点とする動径ベクトルが単位時間に通過する領域の面積は惑星ごとに一定値をとる。
3法則:惑星の公転周期の2乗は楕円軌道の半長軸の3乗に比例する。

本問は、ケプラーの法則に関する問題です。

(1) 惑星の向心加速度で、向心力Fとして、惑星の運動方程式は、
 ・・・@
向心力の大きさは、 ......[]

(2) (万有引力を参照)より、@は、
......[]

(3) (2)より惑星の公転速度に反比例するので、rp倍になれば、公転速度は、 ......[] になります。

(4) 惑星の公転周期Tは、
地球の公転周期1年です。公転周期Tに比例するので、rp倍になれば、公転速度倍になり、木星の公転周期年になります。
......[]

(5) ケプラーの第2法則より、
......[]

(6) 探査機が地球を出発するときの力学的エネルギーは、探査機の質量として、運動エネルギー位置エネルギーです。探査機が木星の軌道に到達するときの力学的エネルギーは、運動エネルギー位置エネルギーです。
両地点でのエネルギー保存より、
で割って、(5)の結果を代入すると、
......[]

(7) (6)の結果を整理して、
2をかけてで割ると、

地球の公転速度なので、地球を出発するときの探査機の速さは、地球の公転速度 ......[]

(8) ケプラーの第3法則より、公転周期2乗は半長軸3乗に比例するので、探査機の軌道の半長軸が地球の軌道半径倍になれば、探査機の公転周期倍になります。地球から木星軌道に到達するまでは公転周期時間がかかり、年かかります。
......[]

(9) (4)の結果でとすることにより、

12 ......[]

(10) (7)の結果より、探査機が地球を出発するときの速さは、
......[]

(11) (8)の結果より、

2.8 ......[]


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