埼玉大物理'08[2]

1に示すように、起電力の電池、抵抗値の抵抗、電気容量のコンデンサー、スイッチにより構成された回路がある。はじめ、スイッチは開いた状態であり、コンデンサーには電荷が蓄えられていない。このとき、以下の問いに答えよ。ただし、電池の内部抵抗は無視できるものとする。
1 スイッチを閉じた瞬間に回路に流れる電流を求めよ。
2 スイッチを閉じて十分に時間が経過した後、コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーを求めよ。
コンデンサーに電荷が蓄えられているとき、極板間には引き合う力が働く。図1のコンデンサーを、極板の面積,極板の間隔を,極板間の誘電率をとする平行板コンデンサーとする。スイッチを閉じて十分に時間が経過した後のコンデンサーの極板間に働く力の大きさを求めたい。
コンデンサーを回路に接続したままの状態で、図
2に示すように、一方の極板に、極板間に働いている力Fと大きさが等しく、反対の方向を向いた外力を加え、極板の間隔をだけわずかに増加させたとする。ただし、より十分小さいものとする。このとき、外力のした仕事とコンデンサーの静電エネルギー変化量との間には、次の関係が成り立つ。
 ・・・・・・(1)
ここで、は極板に蓄えられている電荷の変化量をとすると、で与えられる。このとき、以下の問いに答えよ。解答は、ESdのうち必要なものを用いて表せ。
3 コンデンサーの極板の間隔を増加させた前後におけるコンデンサーの電気容量の変化量に比例する。その比例係数を求めよ。ただし、1より十分小さいときに成り立つ近似式を用いること。
4 を求めよ。
5 を求めよ。
6 (1)式を用いて、コンデンサーの極板間に働く力の大きさを求めよ。


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解答 コンデンサーに関する標準的な頻出問題です。

1 スイッチを閉じた瞬間に、コンデンサーは導通したのと同様になります。オームの法則より、
......[]

2 スイッチを閉じて十分に時間が経過した後、コンデンサー極板間は回路シンボル通りに切断された状態になり、抵抗を流れる電流はゼロで抵抗両端の電圧はゼロ、よって、コンデンサー両端の電圧になります(コンデンサーの過渡現象を参照)
コンデンサーに蓄えられている電気量は、
コンデンサーに蓄えられている
静電エネルギーは、 ......[]

3 極板の面積,極板の間隔,極板間の誘電率をとする平行板コンデンサーの電気容量は、
極板間隔dになったときの電気容量は、
問題文に与えられた近似式を用いて、
比例係数は、 ......[]

4 極板間隔dになったときの静電エネルギーは、
より、
......[]

5 極板間隔dになったときに蓄えられている電気量は、
より、

......[]

6 (1)より、
......[]

追記.コンデンサーの極板間に働くを求めるのには、上記の(1)式を用いて、静電エネルギーの変化と電池が供給したエネルギーとから求める方法のほかに、極板間の電界から求める方法があります。
問題文の図
1でスイッチを閉じると、コンデンサーの上側の極板に電荷が蓄えられ、コンデンサーの下側の極板に電荷が蓄えられます。
ガウスの法則より、電荷Qから出て行く電気力線の総本数は本です。
電気力線の密度が電界なので、上側の極板をスッポリと覆う曲面を考えると、曲面の面積(極板の両面)なので、電荷が曲面上に作る電界として、
同様にして、下側の極板をスッポリと覆う曲面を考えると、
電荷が曲面上に作る電界として、
平行板コンデンサーで、
極板面積極板間距離に対して充分に大きいとき、極板の周辺部の影響が無視できて、極板間の電界は一定になります(極板間のどこに電荷を置いても同じ大きさのが働く)。極板間では、両極板の作る電界(の作る電界は極板から出ていく方向、の作る電界は極板に入っていく方向で、極板間では両電界は同じ向きになる)が重ね合わされて、大きさ電界ができます。
しかしながら、極板間に働く
を考える場合には、重ね合わせるのではなく、片方の極板が他方の極板の位置に作る電界が及ぼすを考えることになります。極板は、自分で持っている電荷の作る電界からは力を受けないことに注意してください。従って、下側の極板上の電荷は、上側の極板の作る電界から、大きさを受けることになります。
なので、

となります。このとき、極板間の電界eを用いると、極板間に働くは、
となり、ではないので注意が必要です。

本問では、電池と接続したまま、つまり、
極板間電圧に維持したまま、極板間距離変化させてを求めています。このときには、コンデンサーに蓄えられる電荷だけ変化し、電池がエネルギーを供給することになります(負のエネルギーを供給するので、実質的には、エネルギーが電池に戻ることになります)
では、電池とコンデンサーの接続を切って、
極板間距離だけ変化させて、電気容量にするとどうなるでしょうか?
電池は
エネルギーを供給せず、コンデンサーが蓄える電荷のままになり、極板間電圧電気容量の変化に伴ってになります。
極板間距離にしたときの静電エネルギーは、
静電エネルギーの変化(この変化は極板を移動させる外力によってもたらされます)は、
このときは、電池の供給するエネルギーは存在しないので、より、
となり、電池を接続したまま、極板間距離を変化させた場合と同じ値になります。
電池を接続したままのときと、接続を切ったときとで、の符号は反対なのですが、電池の供給した
エネルギーを加えると、外力のした仕事には違いがないことになります。


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