阪大物理'11年後期[2]

電圧を加えると、ある領域から自由に動ける電子は押しのけられるが、正の電荷は移動せずに取り残される物質(半導体)がある。その電場(電界)の様子を理解するため、理想化した場合を考える。初めに、厚さのある十分に広い平板内部に一様に電荷が分布している場合の平板内部の電場や電位を求めよう。

1のように、厚さ[m]で十分に広い平板Aがあり、単位体積あたりの電荷(電荷密度)[] ()となるように電荷が一様に分布している。この平板Aの電荷がその外側に作る電場の方向は平板Aに垂直であり、その右側での電場の向きは右向きで、左側での電場の向きは左向きである。また、クーロンの法則の比例定数をk []として、単位面積あたりの電荷s[]の十分に薄い板の作る電場の強さE[]で与えられる。平板Aの場合にはその単位面積あたりの電荷は[]と見なせるので、平板Aの電荷が作る電場の強さE[]は、
で与えられ、平板Aの右側と左側で同じである。

T.図2のように、厚さ[m]で十分に広い平板Bを平板Aに平行におく。平板Bにも電荷密度がとなるように電荷を一様に分布させた。平板Bを置いても、平板Aの電荷分布は変化しなかった。
1 電場には重ね合わせの原理が適用できることに注意して、領域a(平板Aの左側)、領域b(平板Aと平板Bの間)、領域c(平板Bの右側)の各領域における電場の向きと強さを求めよ。ただし、電場の向きは、図で右向きを正負号、左向きを負符号として表せ。

U.図2で領域bの幅が0であっても、電場の重ね合わせの原理は成り立っている。平板Aと平板Bとを接触させて、厚さ[m]の平板Cを作った。このとき、平板Cの電荷密度は一様でである。図3のようにx軸を取り、平板Cの範囲におく。
2 位置x ()における電場の向きと強さを求めよ。ただし、電場の向きは、図で右向きを正負号、左向きを負符号として表せ。この場合には、平板Cは厚さがx2枚の平板を合わせたものと見なせることに注意せよ。

V.今、平板Cx軸に沿ってN個の小さな区間に分けて、区間ごとの電位差を考えよう。この場合、i番目の区間はからである。また、とする。区間の幅は十分に小さいので、それぞれの区間内の電場の強さは一定で、その区間の両端の電場の強さの平均値に等しいと見なせるものとする。
3 i番目の区間の両端の電位差をdkQのうち必要なものを用いて求めよ。
4 での電位を、での電位を基準として求めよ。

W.図4のように、十分に広い厚さの無視できる薄い平板Pで平板Cに平行に置いた。ここで、平板Pには単位面積あたりσ[]の電荷を一様に分布させた。この結果、平板C内部での電荷分布は変化しなかったが、では電場の強さが0になった。
5 σを求めよ。
6 平板Cの内部 ()の位置に質量m[kg],電荷[C] ()の自由に動ける電子を静かに置くと、電子は電場による力を受けて移動した。電子は電場による力以外は受けないとして、まで移動するのに要した時間をkmqQXのうち必要なものを用いて求めよ。ただし、電子によって、平板Cや平板P内の電荷分布は影響されないとする。
7 電子がに到達した時の速さをkmqQXのうち必要なものを用いて求めよ。


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解答 深く考え込んでしまうと、かえって難しくなるので、出題者の要求に沿ってあっさりと片付けるようにしましょう。

T.問1 平板A電荷が領域aに作る電場は、[N/C]
平板A電荷が領域b、領域cに作る電場は、[N/C]
平板B電荷が領域a、領域bに作る電場は、[N/C]
平板B電荷が領域cに作る電場は、[N/C]
よって、平板A電荷が作る電場、平板B電荷が作る電場を重ね合わせることにより、
領域
a電場は、[N/C] ......[]
領域b電場は、[N/C] ......[]
領域c電場は、[N/C] ......[]

U.問2 (1)の領域b電場の結果において、xとして考えることにより、位置xにおける電場は、
[N/C] ......[]

V.問3 問2電場の結果において、xとして考えることにより、における電場は、[N/C]
における電場は、[N/C]
i
番目の区間の電場は両者の平均をとって、[N/C]
i
番目の区間の左端に対する右端の電位差は、単位電荷電場に逆らって距離移動させる仕事として、
[V] ......[]

4 での電位は、での電位を基準として、
[V] ......[]

W.問5 平板Cの部分に作る電場は、[N/C]
平板Pがその左側に作る電場は、題意より、[N/C]
両者の重ね合わせとして、の部分の電場は、
[] ......[]

6 問5の結果より、平板Pがその左側に作る電場は、
[N/C]
平板Pの作る電場と平板Cが作る電場を重ね合わせることにより、における電場は、問2の結果を利用して、
[N/C]
電子が電場から受けるは、[N]
電子の加速度aとして、電子の運動方程式は、

これは、角振動数[1/s]単振動を表します。単振動の振動中心振動端で、求める時間は、単振動の周期で、
[s] ......[]

7 求める速さは、振動中止における速さで単振動の速さの最大値です。振幅Xで、単振動の公式:より、求める速さは、
[m/s] ......[]


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