阪大物理'26年前期[2]

電流が流れている金属や半導体に磁場(磁界)をかけると、磁場に応じた電位差が生じる現象をホール効果とよぶ。このホール効果を利用して磁場を検知する磁場測定装置について考える。いま、図1に示す直方体の形をした半導体を考え、各辺に平行なx軸,y軸,z軸を定める。半導体のx軸方向の幅をLy軸方向の幅をdz軸方向の幅をhとする。半導体のキャリアとしてはたらく電子や正孔は、電荷をもつ粒子として振る舞うと考える。キャリア1個の電気量の大きさをq,単位体積あたりのキャリアの数をnとする。

T.まず、磁場測定装置を構築するにあたり、半導体の基本特性を調査したい。 1に示すように、特性が既知の磁石で半導体を挟むことを考える。磁石間には、z軸に平行で、大きさの一様な磁束密度が生じている。半導体にはケイ素を用い、そこに不純物を添加してキャリアが正孔のp型半導体、キャリアが電子のn型半導体の2種類を用意し、いずれかを用いる。半導体側面に導線を接続し、x軸の正の向きに大きさIの電流を流す。

1 ケイ素(原子番号14)の結晶に、アルミニウム(原子番号13)またはリン(原子番号15)を微量添加した半導体を作製したところ、電流が流れやすくなった。このときの半導体の種類として適切なものを、以下の()()の中からそれぞれ1つ選んで記号で答えよ。
() p 型半導体,() n型半導体,() どちらでもない

2 次に、半導体中のキャリアの運動について考える。キャリアが受けるローレンツ力の大きさFを、キャリアの速さvqの中から必要なものを用いて表せ。ただし、キャリアは磁場に垂直な平面内で運動しているものとする。

3 半導体中のキャリアは、ローレンツ力を受け A面またはB面に蓄積され、A面とB面の間に電場が生じた。電流を流して十分に時間が経ったところ、この電場からキャリアが受ける力とローレンツ力がつりあい、これ以上キャリアの蓄積が進まなくなった。この際のA面とB面の間に生じた電場の大きさEを、Iqnhdの中から必要なものを用いて表せ。

4 半導体における単位体積あたりのキャリアの数n, 既知の量と測定可能な物理量で推定したい。測定可能な物理量は、A面とB面の間に生じる電圧の大きさ,半導体を流れる電流の大きさI,半導体の各軸方向の幅hdLである。また、磁束密度の大きさはで既知である。さらに、半導体中のキャリア1個の電気量の大きさqは、既知の物理定数である電気素量と等しい。 nを、IhdLqの中から必要なものを用いて表せ。
5 最後に、使用した半導体がp型半導体かn型半導体かを調べたい。A面の電位B面の電位の大小関係と、使用した半導体の組み合わせとして適切なものを、以下の()()の中からすべて選んで記号で答えよ。

 A面,B面の電位半導体の種類
()n型半導体
()n型半導体
()p型半導体
()p型半導体

U.次に、T.で基本特性を明らかにした半導体のうち、p型半導体を用いた磁場測定回路を図2のように構築した。電源を半導体両端につなげ、大きさの電圧を加えた。半導体のA面,B面の間に生じる電位差は電圧計で測定した。なお、電圧計の内部抵抗は十分に大きく、回路への影響は無視できるものとする。また、電圧計のプラス端子を半導体のA面,マイナス端子をB面に接続した。図2で示す灰色面を半導体の正面とする。

6 を加えたことで半導体内に一様な電場が生じた。この電場によって半導体中のキャリアが受ける力の大きさを、qLhdの中から必要なものを用いて表せ。

7 電源電圧を加えた後、十分に時間が経ったときに、キャリアにはたらく抵抗力とがつりあい、キャリアは一定の速さvで移動するようになった。この抵抗力の大きさは、比例定数cを用いて、で表されるものとする。この状況におけるvを、qcLhdの中から必要なものを用いて表せ。

8 内部抵抗が無視できる電流計で測定したところ、電源を流れる電流の大きさはであった。半導体の抵抗率ρhdLの中から必要なものを用いて表せ。

9 cρnqの中から必要なものを用いて表せ。

V.地球は北極付近をS極とし、南極付近を N極とする巨大な磁石とみなすことができ、この巨大磁石によって地磁気が生じている。図2で示した磁場測定回路を用いて、大阪における地磁気を測定することを考える。図3に示すように、磁場測定回路全体を箱に入れた磁場測定装置を、図2x軸の正の向きが鉛直上向きになるように保持した。このときの半導体正面の向き(半導体正面に垂直で、半導体の外側に向かう向き)を基準の向きとする。そして、半導体の中心を貫く鉛直方向の軸を回転軸として、上から見て反時計回りに、磁場測定装置を基準の向きに対して角度θだけ回転させた. その結果、半導体が地磁気を感知し、電圧計は角度θに応じて図3に示すような値を示した。ただし、A面とB面の間に生じる電位差には、キャリアが受けるローレンツ力のうち、図2y軸方向の成分のみが寄与するものとする。

10 以下の文章の (a) に入るべき適切な数値を()()  (b) に入るべき適切な数値を()()の中からそれぞれ選んで記号で答えよ。

3のグラフより、地球のS極がある方角はθ =  (a) であると推定される。この方角を磁北と呼ぶ。一方、地球の自転軸の通る北極点の方角(真北)は、磁北からずれていることが知られている。国土地理院によると、大阪の場合、磁北は真北に対して西に約ずれていることが知られている。このことから、地球の自転軸を基準とした真北、真西、真南、真東の方角がわかる。このうち, 真東の方角は、θ =  (b) であると推定できる。
(a)
の選択肢
() () () ()
(b)の選択肢
() () () () () () () ()

11 図3のグラフから推定される、地磁気の磁束密度の水平成分の大きさBは何Tか、有効数字2桁で求めよ。ただし、半導体の抵抗率は キャリア1個の電気量の大きさは,単位体積あたりのキャリアの数は,半導体の各軸方向の幅は,電源電圧はとする。



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解答 T,Uのホール効果の部分は平易です。どの文字を使って解答するのか、ということに注意しましょう。Vは落ち着いて丁寧に考える必要があります。

T.問1 ケイ素原子の最外殻電子は4個です。ケイ素の結晶では、この最外殻電子が周囲の4個のケイ素原子と4つの共有結合を作ります。アルミニウム原子では最外殻電子は3個で、アルミニウム原子がケイ素の結晶中に入り込むと、4つの共有結合を作ろうとする際に、電子が1個不足し、この電子の空き(正孔)が、正電荷を持つキャリアとなり、p型半導体となります。リン原子では最外殻電子は5個で、リン原子がケイ素の結晶中に入り込むと、4つの共有結合を作ってなお電子が1個余ります。この余った電子が負電荷を持つキャリアとなり、n型半導体となります。
アルミニウム:(),リン:() ......[]

2 速さv,電気量の大きさqのキャリアが磁束密度の大きさの磁場から受けるローレンツ力の大きさFは、
......[]

3 大きさE電場からキャリアqが受ける力の大きさは,これが、問2の大きさの力とつり合うので、
 ・・・@
断面積の面が速さvで単位時間に通過する体積は,この体積内に存在するキャリアの総数は,このキャリアの電気量は,単位時間に断面を通過する電気量が電流Iなので、 ・・・A

@に代入して、 ......[]

4 AB間に生じる電圧は、問3の結果を用いて、
 ・・・B
......[]

5 フレミング左手の法則により、電流(中指の向き、x軸正方向)は磁場(人差し指の向き、z軸負方向)から力(親指の向き、y軸正方向)を受けます。p型半導体では、正電荷を有する正孔がキャリアとなるので、y軸正方向(A面→B面の向き)の力を受けてB面に正電荷が蓄積しとなります。n型半導体では、負電荷を有する電子がキャリアとなるので、y軸正方向(A面→B面の向き)の力を受けてB面に負電荷が蓄積しとなります。 ()() ......[]

U.問6 長さLの半導体に電圧が加えられると、半導体に大きさの電場ができます。電気量qのキャリアが電場から受ける力の大きさは、 ......[]

7 キャリアにはたらく抵抗力と、電場から受ける力とのつりあい,問6の結果より、
 ∴ ......[]

8 断面積,長さL,抵抗率ρの半導体の抵抗はです。オームの法則より、 ・・・C
......[]

9 Aでとして,ここに問7の結果を代入し、
Cを代入し、 ∴ ......[]

V.図2x軸正方向から見た様子を右図に示します。半導体が茶色で塗られて示されています。半導体の正面の向きはz軸正方向で、ここをとして、半導体をx軸の周りに反時計回りに角θ回転させます。図2で電流方向がx軸正方向、磁場の向きがz軸正方向とすると、p型半導体なので、フレミング左手の法則により正電荷がy軸負方向(B面→A面の向き)に力を受けてA面に蓄積され、電圧計の読みが正になります。
つまり、半導体が基準の向き()であって、電圧計の読みが正のとき、磁場の方向はz軸正方向(半導体正面側がS極で北極側)、電圧計の読みが負のとき、磁場の方向はz軸負方向(半導体正面側がN極で南極側)です。

10 図3のグラフを見ると、のときに電圧計の値が最大値をとり、のときに電圧計の値が最小値をとります。
右図で、磁場測定装置を回転させたときの半導体を黄緑色で描いていますが、のときとのときで、半導体は同じ位置に見えても、半導体正面側が、のときには左下側で、のときには右上側であることに注意してください。磁北側がS極なので、のときは磁場が最も強く、電圧計の読みが正なので半導体正面側が北極側でが地球のS極がある方向です。 (a) () ......[]
のときは、半導体正面は、右図で右上のの方向を向くのですが、電圧計の読みが負であって、半導体正面側が南極側で地球のN極がある側です。問題文より、磁北(の方向)が真北に対して西にずれるので、真北は、右図よりの方向です。真東の方角は、真北から反時計回りに回転した方向での方向です。 (b) () ......[]

11 半導体に流れる電流をとして、Bより、 ・・・D
Cより、 ∴
これをDに代入して、
地磁気の磁束密度の水平成分に対する電圧計の読みはなので、

......[]



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なお、解答は、
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