京大物理'11年[2]
次の文を読んで、 に適した式を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、 はすでに で与えられたものと同じものを表す。また、問1では指示にしたがって、解答を解答欄に記入せよ。
図1のように長方形の導線ABCDからなるコイル1と、正方形の導線EFGHからなるコイル2がxy平面内に置かれている。コイル2の中心は原点Oにあり、導線FGとEHはx軸に平行、導線EFとGHはy軸に平行な直線で、長さはいずれもである。コイル2の電気抵抗はRである。コイル1の中心はx軸上の位置にあり、導線ABとCDの間隔はでそれぞれとのy軸に平行な直線である。2つのコイルは重ならない()とする。コイル1の導線ABとCDの長さは、コイル1の幅やコイル2の一辺,および、コイル1とコイル2の中心間の距離Lに比べて十分大きい。したがって、x軸の近くでは、導線ADとBCに流れる電流がつくる磁界(磁場)の強さは、導線ABやCDに流れる電流がつくる磁界に比べて十分小さく、無視できる。また、x軸の近くでは、導線ABやCDに流れる電流がつくる磁界は、無限に長い直線電流がつくる磁界とすることができる。これらのコイルは真空中に置かれており、真空の透磁率をとする。
(1) まず、コイル1のADCBの向きに電流を流したときにできる磁界について考えよう。導線ABに流れる電流がx軸の近くの位置 (ただし、を除く)につくる磁界は、紙面に垂直に裏から表に向かう向きを正として、 イ である。x軸の近くの位置 (ただし、を除く)にコイル1がつくる磁界は、導線ABとCDの寄与を加えて ロ となる。
(2) コイル1に流れる電流がつくる磁界のもとで、中心が原点にあるコイル2を貫く磁束について考えよう。ただし、以下では、はコイル2の一辺に比べて十分大きいとし、やがに比べて十分小さいような原点付近の位置における磁界を考える。ここで、実数ε の絶対値が1に比べて十分小さいときに成立する近似式を用いると、コイル1のADCBの向きに電流を流したとき、導線ABに流れる電流がつくる磁界 イ は、xy平面内の原点付近の位置では、紙面に垂直に裏から表に向かう向きを正として、 ハ と近似できる。この近似を導線CDにも適用すると、コイル1に流れる電流がxy平面内の原点付近につくる磁界は ニ のようにxの1次関数で近似できる。以下でも、bやはに比べて十分小さく、近似式 ニ が成立する範囲内で考える。このとき、コイル2を貫く磁束は、コイル2の中心での磁束密度に、コイル2の面積を乗じた値として計算できるので、 ホ となる。コイル1に流れる電流が時間変化するとき、コイル2に誘導起電力が発生する。このとき、コイル1とコイル2からなる回路の相互インダクタンスは ヘ となる。
(3) 次に、コイル1のADCBの向きに流す電流は一定とし、正方形コイル2をx軸に沿って正の向きに一定の速さvで移動させる場合を考えよう。時刻tにおけるコイル2の中心のx座標をとする。コイル2の運動は原点付近に限り、2つのコイルは重ならず、また、(2)と同様に、bやはに比べて十分小さく、近似式 ニ が成立するものとする。時刻tにおいて、コイル2を貫く磁束は ト となる。コイル2の電気抵抗の値はRであるから、コイル2に生じる誘導起電力によりコイル2に流れる電流は、EFGHの向きを正として チ となる。ただし、コイル2の自己インダクタンスは無視できるとする。このとき、単位時間当たりにコイル2に発生するジュール熱は リ となる。
問1 時刻tにおいて、コイル1に流れる電流のつくる磁界からコイル2全体が受ける力の大きさと向きを、導出の過程も示して求めよ。
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解答 相互インダクタンスを求めるのでやや目新しいですが、問題そのものは基本的です。
(1)(イ) 導線ABを流れる電流が位置に作る磁界は、右ねじの法則より、のとき紙面に垂直に裏から表に向かう向きで、位置と導線ABとの距離がであることから、 ......[答] (電流のつくる磁界を参照) (ロ) 導線CDを流れる電流が位置に作る磁界は、右ねじの法則より、のとき紙面に垂直に表から裏に向かう向きで、位置と導線CDとの距離がであることから、 () 導線ABと導線CDの寄与を加えて、位置にコイル1がつくる磁界は、 ......[答]
(2)(ハ) 微小量εをと見て問題文の近似式を使うと、導線ABを流れる電流が原点付近の位置に作る磁界は、 ......[答] (ニ) (ハ)と同様にして、導線CDに流れる電流が原点付近の位置に作る磁界は、 導線ABと導線CDの寄与を加えて、コイル1が原点付近の位置に作る磁界は、 (ホ) コイル2の中心での磁界は、(ニ)の結果でとして,磁束密度は,コイル2の面積は,よって、コイル2を貫く磁束は、 ......[答] (ヘ) (ホ)の結果を用いると、時間の間に電流が変化したときにコイル2に発生する起電力の大きさVは、電磁誘導の法則より、 ∴ ......[答]
(3)(ト) (ニ)の結果でとして、コイル1が原点付近の位置に作る磁界は、 (ホ)と同様にして、コイル2を貫く磁束は、 ......[答] (チ) コイル2を貫く磁界は、導線ABが導線CDよりもコイル2の近くにあるので、導線ABの影響を受けて導線ABがコイル2の中心に作る磁界の向き、つまり正の向きとなり、コイル2がx軸正方向に移動すると、コイル2を貫く磁束は増加するので、負の向きの磁界を作る向き(レンツの法則を参照)、つまり、EHGFの向きに誘導電流を流す向きに誘導起電力が発生します。EFGHの向きの電流を正としているので、誘導電流の向きは負です。 コイル2に発生する起電力の大きさVは、電磁誘導の法則より、
......[答] (リ) 単位時間当たりにコイル2に発生するジュール熱は、 ......[答]
問1 (リ)で求めた単位時間当たりのジュール熱は、コイル2をx軸に沿って正の向きに一定の速さvで移動させる外力Fの仕事率に等しくなります。 より、
コイル2は等速度運動するので、力のつり合いより、コイル1に流れる電流のつくる磁界からコイル2全体が受ける力は、この外力Fと等大逆向きで、大きさは、 ......[答] 向きは、x軸負方向 ......[答]
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