東工大物理'04年前期[2]

 図のように一辺Lの正方形で厚さがd3枚の電極板P1P2P3がある。P1P3間には起電力の電池Bが接続されていて、P3は接地されている。3枚の板は平行である。P1P3は固定されており、その間の距離はである。P2は、P1P3の間で上下に動くことができ、P1P2の間隔はxとする。P2の動く速さvは、十分にゆっくりであり、その速さで電荷が動くことにより発生する磁界などは無視できるほど小さい。また板間の距離が0のときは、板同士が接触しており、電気的に互いに同電位になるとする。電池の内部抵抗は無視できるものとする。
LP1P3間の距離に比べて十分大きく、電極間は真空であり、その誘電率はであるとする。
(a) はじめP2P1と接触()させていたが、時刻からP3と接触する時刻()まで一定の速さvP2を下向きに動かした。でのP1の持つ電荷を、P2の電位およびxの関数として表せ。
(b) でのP2の電位xの関数として表せ。
(c) 時刻においてP2の下の面にある電荷とP3の上の面にある電荷は打ち消しあう。続いて時刻から、再びP2を一定の速さvで上向きに動かし、時刻()P1と再度接触させた。でのP2の電位xの関数として表せ。
(d) でのP1の電荷を時刻tの関数として図示せよ。
(e) でのP1の電荷の変化は電池Bから流れこむ電流による。電流計を流れる電流を時刻tの関数として図示せよ。ただし、電流計の内部抵抗は無視できるものとする。P1に向かって流れ込む電流の向き(図の矢印の向き)を正の向きとする。


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解答 半導体上に正確な値の抵抗を作るのは非常に難しいので、switched capacitor(ネット上で検索してみてください)という技術を使います。コンデンサーの極板間電圧がスイッチングするたびに2項間漸化式に従って変化しながら一定値に近づくので、入試問題のテーマとして取り上げられたこともあります。switched capacitorでは、抵抗値はスイッチングの周波数で正確に制御できます。この問題は、コンデンサーの極板の移動速度抵抗値を正確に制御できると言っているので、メカ的なswitched capacitorとも言えます。実用的な価値もあると思いますが、この問題を出題した東工大の先生は、きちんと特許出願なさっているでしょうか?

のとき、
P1P2間の静電容量は、
のとき、
P2P3間の静電容量は、
P2P1に接しているとき()には、P1P2P3の間、また、P2P3に接しているとき()には、P1P2P3の間が、極板間距離D面積,即ち、静電容量1個のコンデンサーになっています。

(a) P1P2間の電位差は、
よって、 ......[] ・・・@

(b) P2P1を離れる瞬間()に、P2P3に向かい合った面には、正電荷が存在します。このまま、P2P1から離れると、この電荷P2の中に取り残されてしまいます。このときには、とを直列として扱うことはできない(公式:を使うと失敗する)ので注意が必要です。
P2P1から距離xのところに来たとき、P2の下側の面に現れる電荷とすると、P2P3間の電圧だから、
・・・A
一方、P2の上側の面に蓄えられている電荷P2には電荷Qが残されているので、
 ・・・B
@,AとをBに代入すると、
で割り、分母を払うと、
整理すると、
......[]

(c) P2P3を離れる瞬間に、P2P1に向かい合った面には、負電荷が存在します。このまま、P2P3から離れると、この電荷P2の中に取り残されます。
P2P1から距離xのところに来たとき、P2の上側の面に現れる電荷は@のP2の下側の面に現れる電荷はAので与えられます。
P2には、電荷が残されているので、
@,Aより、
で割り、分母を払うと、
整理すると、
......[]

(d) においては、
@と(b)の結果より、

においては、
@と(c)の結果より、


においては、だから、においてを代入した値になっています。よって、において、
グラフは右図。

(e) が増大するとき電流が正なので、
 (電流・オームの法則を参照)
グラフは右図。


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