東工大物理'11年前期[3]
図1のように、透明で一様な媒質中を音波が伝わっているところに光を入射させると、特定の入射の角度において、光の強い反射が観測される。これは音波によって生じる屈折率の変化のために、音波の各波面でわずかながら反射する光が互いに干渉し強め合うことによる。今、音波はz軸方向に速さwで進んでいるものとする。簡単のために、間隔d (音波の波長)で並んでいる音波の波面(反射面)でだけ光の反射が起こり、光は速さVで直進するものとする。波面以外の領域の屈折率は1であるとする。また反射面の厚みも無視できるものとする
今、図1のように波長λの光を反射面に対して角度θ で入射させたところ、反射面に対して角度の方向に、波長の光が強く反射するのが観測された。このとき、はλとは異なり、またもθ とは異なっていた。その理由を以下で考えることにする。
(a) まず、一つの反射面における反射の法則を考えよう。以下の空欄にあてはまる数式を答えよ。
静止した鏡に光をあてると、入射の角度と反射の角度が等しくなることが知られている。これは、次のように理解することができる。図2のように、距離xだけ離れて鏡面で反射する二つの光路を考える。入射の角度をθ,反射の角度を,媒質の屈折率を1とすると、光路長の差は (符号は問わない)で与えられる。入射光の波長λを用いてを位相差に換算すると、となる。二つの光が互いに強め合うためには、,,,・・・ として、位相差がになる必要がある。実際には、距離xは様々な値をとる。いかなるxに対してもこの条件が成立するには、である必要があり、が導かれる。今の議論を音波による反射に適用してみよう。この場合、反射の法則はで与えられる。最初に述べたように、音波によって光が反射する際には、入射光の波長λと反射光の波長とが異なるため、θ とも異なることになる。 (b) 次に、隣り合う反射面で反射する光の干渉について考えよう。
等間隔dで並んだ隣り合う反射面で反射する光が、互いに強め合うように干渉すると、強い反射光が観測される。反射した光が干渉によって強め合うためには、隣り合う2つの反射面に入射し反射した光波の位相差が、一般にはの整数倍になることが必要である。しかし、音波によって光が強く反射するのは、位相差がの場合だけであることがわかっている。このことを考慮して、隣り合った反射面からの反射光が干渉によって強め合うための条件をd,λ,,θ,を用いて表せ。 (c) 入射光の波長λと反射光の波長とが異なっているのは、実は反射面が動いていることによるドップラー効果のためである。具体的には、wがVに比べて充分小さい今のような状況では、なる式が成立することがわかっている。この式と(b)の結果とから、反射光と入射光の振動数の差が音波の振動数に等しいことを導け。 (d) 図3のように、音波によって強く反射した光を鏡に入射させた。鏡の角度を適度に調整したところ、折り返された光が音波によって再度強く反射するのが観測された。再度強く反射した光に関する記述として、正しいものを選べ。 音波に対して左側から照射している入射光の振動数に対して、再度強く反射した光の振動数は(あ) 変化しない。(い) 音波の振動数だけ低くなる。(う) 音波の振動数だけ高くなる。(え) 音波の振動数の2倍だけ高くなる。(お) 音波の振動数の2倍だけ低くなる。
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解答 反射と干渉の見慣れない事象を扱う問題ですが、問題文の説明を活かして考えれば平易な問題です。
(a)(ア) 右図で、波面ACが波面BDまで進みます。A→BとC→Dの光路長の差は、屈折率1なので、実距離の差でよく、 ......[答] (イ) 波長λの光の光路長Lに相当する位相は、です。 (ア)を位相差に換算すると、 ......[答] (ウ) 音波による反射の場合、入射光のA→Bに対する位相は,反射光のC→Dに対する位相は,よって、強め合う条件は、 () いかなるxに対しても成立するためにはより、 ......[答]
(b) 右図で上側の反射面で反射した光と、下側の反射面で反射した光との位相差は、P→Qの部分が,Q→Rの部分が 位相差は両者の和で、両反射光が強め合う条件は、「位相差がの場合だけ」という問題文の記述により、 ∴ ......[答] (c) 入射光の振動数は,反射光の振動数はです。振動数の差という形を目指します。 (b)の結果で分母を払うと、 ・・・@
問題文より、
分母を払うと、 移項し、@を用いて、
で割ることにより、 は音波の速さを音波の波長で割ったものであって、音波の振動数です。
よって、反射光と入射光の振動数の差が音波の振動数に等しくなります。 (d) (c)の結果より、音波が速さwで近づいてくるとき、音波の波面で反射した光の振動数は、入射光の振動数よりも音波の振動数だけ高くなります。これが、鏡で反射して、さらに音波の波面で反射すると、さらに音波の振動数だけ高くなります。合わせて、再度強く反射した光の振動数は、音波の振動数の2倍だけ高くなります。(え) ......[答]
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