東工大物理'13年前期[3]

単色光源から出た波長λの光が、単スリットS,二重スリットABを通過し、スクリーン上に作り出す干渉縞を、光の強度(明るさ)に比例した読みを与える光検出器Cを用いて観測する。屈折率が1の大気中に、単スリットSを有する遮光板と、二重スリットABを有する遮光板と、大きさの無視できる光検出器が置かれたスクリーンが、図1@のように互いに平行に置かれている。各スリットは、紙面に垂直な方向に細長く、水平方向の幅は波長に比べて十分に狭い。また、二重スリットABの間隔a ()は、波長よりも十分に大きい。スリットSの位置は、可動装置Nによって左右に動かすことができ、二重スリットABの位置は固定されている。光検出器Cの位置をスクリーン上の座標xで表し、二重スリットABから等距離にある点を原点Oとし、図の右向きを正にとる。各スリットの間の距離を,スリットと光検出器との間の距離をのように表す。以下の問いでは、原点付近()の光の強度について考える。

(a) となる位置に単スリットSを固定し、光検出器Cの位置xをずらしながら、その読みを記録した。以下の文章の空欄に入る適切な数式を答えよ。解答欄には答えのみを書くこと。

Lxaを用いて、 ア と表される。ここで、のとき、とする近似を用いると、 イ となる。同様の計算をについても行うと、 ウ となる。光検出器の位置をずらしながら、その読みを記録したところ、スクリーンに生じた干渉縞に対応して、図1Aのように読みがxとともに周期的に変化した。この干渉縞の間隔は エ であった。

(b) 可動装置Nを使って単スリットSの位置をずらした。以下の文章の空欄に入る適切な数式を答えよ。()については導出過程も書くこと。

0からに変化したとき、干渉縞がx軸正の方向にdだけずれた。 ウ より、daLを用いて オ と表すことができる。光検出器Cをずらしながら、その読みを記録したところ、読みはという関数で表すことができた。ここで、αは、干渉縞の光強度が最大となる位置における光検出器Cの読みである。
次に、可動装置
Nを使って単スリットSの位置を不規則に変化させたところ、光検出器Cの読みが不規則に変動した。そこで、光検出器の読みを十分長い時間にわたって平均し、その平均値を、光検出器の位置xの関数として作図した。すると、図1Bのように、干渉縞が消失してしまった。これは次のように理解することができる。単スリットSの位置を不規則に動かすと、が変化し、干渉縞のずれdが不規則に変化する。実験では光検出器の読みを表す式の中のという項がから1までの値を不規則に取り、長い時間にわたって読みを平均することで、平均値が0に近づいていったものと考えられる。そのために、光検出器の読みの平均値が カ に近づき、干渉縞が消失したわけである。

(c) 可動装置Nを使って単スリットSの位置を不規則に変化させても、干渉縞を観察することができるように、図2のような、問(a)の光検出器Cと同一の応答をする光検出器2台を有する新しい装置Mを用いることにした。二つの光検出器の位置をとする。同時刻における、の読みをかけあわせた値が、装置Mの読みとして得られる。を固定し、をずらしながらMの読みを記録した。以下の文章の空欄に入る適切な数式、または記号を答えよ。解答欄には、答えのみを書くこと。

まず、単スリットSとなる位置に固定した。nを整数として、 キ という条件を満たしている場合は、をずらしても、Mの読みは0のまま変化しなかった。しかし、の位置に固定すると、装置Mの読みが、の関数として間隔Pで周期的に変化した。
次に、単スリット
Sの位置をとなる位置にずらすと、スクリーン上の干渉縞が、問(b)と同様にdだけずれた。の位置に固定したまま、の位置を変えながら装置Mの読みを記録すると、その値は、αPdを用いて、 ク という関数で表すことができた。
最後に、可動装置
Nを用いて、単スリットSの位置を不規則に変化させたところ、装置Mの読みが変動した。そこで、問(b)と同様に、装置Mの読みを十分長い時間にわたって平均した値を、を変えながら記録した。に固定したままである。先ほど求めた装置Mの読み ク の中で、dを含む三角関数の値は、から1までの値を不規則に変化する。問(b)の考えに基づくと、装置Mの読みを十分長い時間平均した値は、αPを用いて、 ケ と表されるはずである。実験をしてみたところ、 コ  (3 @〜Iのうちから一つ選択せよ)のようなグラフが得られた。


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解答 (c)()が難しいのですが、ここは数学の入試問題だと思って切り抜けましょう。波動現象は三角関数の性質と合わせて理解するのがベストです。

(a) Aからx(スクリーン)に下ろした垂線の足をHとします。より、
() ......[]
問題文中の近似を行うと、
() ......[]
同様に、,よって、
() ......[]
スクリーン上でAから来た光とBから来た光が干渉して強め合う条件は、経路差波長の整数倍となることで、mを整数として、
 ・・・@
これより、干渉縞の
間隔です。
()

(b) 0からに変化したとき、Aを通る光と、Bを通る光の経路差は、

@との違いを考えると、干渉縞の位置のずれは、
() ......[]
長い時間にわたって読みを平均すると、より、光検出器の読みは、
() ......[]
注.だとして、()の干渉縞の間隔は、です。Sを有する遮光板とABを有する遮光板の距離Lだとして、となるのは、単スリットS1cm動かしたときです。
干渉縞のずれdzと表すことにすると、単スリットSを動かすということは、z時間t の関数とする、ということです。ここでは簡単にするために ()tのときzとします。数学的に言えば、「長い時間にわたって読みを平均する」というのは、

 という操作をすることに相当しますが、ここで、
であることを考えると、単スリットSの動かし方がかなり激しくてkが微小量でないときには、
 (関数の極限を参照)
です。

(c) の読みをかけ合わせた値は、
 ・・・A
これが装置Mの読みです。
単スリット
Sとなる位置に固定すると、となり、
このとき、であれば、と無関係にとなります。このために、nを整数として、

(
) ......[]
に固定すると、より、Aは、
() ......[]
 ・・・B
ここで、
 (三角関数の諸公式を参照)
よって、Bは、
(b)の考えに基づいて長い時間にわたって平均をとると、このうちのdを含む項は0に近づくので、
() ......[]
これを表しているグラフはDです。
() D ......[]


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