東京工業大学2024年前期物理入試問題


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[1] 1のような、一辺の長さがの立方体である4つのブロックAのうちいくつかと、質量の無視できる伸び縮みしない糸を用いて実験を行う。Aは質量の無視できる立方体の一辺の中点に質量mの小球が取り付けられたものである。Aはすべての面で滑らかであるのに対して、は小球に接する2つの面の片方が滑らかではない。はいずれも質量の均質な立方体である。重力加速度の大きさをとする。必要であれば以下の公式を用いてよい。


[A] 図2のように、水平な床の上にを間隔をあけて置き、互いにたるみなく糸で水平につないだ。の上に、小球を下にしたAを左右対称になるように静かに置いた。図2において3つのブロックの正面は同一の鉛直面内にある。また、糸は3つのブロックの中心を含む面内にある。ブロックどうし及びブロックと床の間に摩擦ははたらかない。はいずれも傾くことがないとして、以下の問いに答えよ。

(a) 糸の張力の大きさTを求めよ。

糸を静かに切ると、の間隔が広がっていくとともに、Aが向きを保ったまま下がっていき、の間隔がを超えたところでAから離れて落下した。運動中、切断された糸はブロックの運動を妨げないものとする。

(b) 糸を切ったときから、Aから離れるまでの間のAの移動距離を求めよ。

(c) Aが床に接触する直前のAの速さの速さを、mを用いて表せ。

[B] 図3のように、水平な床の上にを間隔をあけて置き、互いにたるみなく糸で水平につないだ。の上に、小球を下にして滑らかでない面がの辺に接するようにを傾けて静かに置いた。図3において3つのブロックの正面は同一の鉛直面内にある。また、糸は3つのブロックの中心を含む鉛直面内にある。この鉛直面によるの断面において、初めにが置かれたときに小球を含む対角線と鉛直線のなす角をとする。の場合のみを考える。図3のように小球がよりもに近いとき、は正とする。がある範囲内にあるとき、は静止し続け、である場合にはは滑って向きを変化させた。の間の静止摩擦係数はμであり、床と,床との間には摩擦ははたらかない。はいずれも傾くことがないとして、以下の問いに答えよ。

(d) のとき、に及ぼす垂直抗力の大きさを、mを用いて表せ。

(e) のとき、に及ぼす垂直抗力の大きさを、を用いて表せ。
(f) のとき、に及ぼす摩擦力の大きさFを、mを用いて表せ。

(g) μを用いて表せ。

[C] 図4のように、水平な床の上にを間隔をあけて置き、互いにたるみなく糸で水平につないだ。加えて、と壁を糸でたるみなく水平につなぎ、は滑らかな滑車を通して質量Mのおもりと糸でつないだ。滑車との間の糸は水平である。小球を下にしたAの上に傾けて置き、静かに放す。Mが十分大きく、がいずれも静止したままである場合には、小球は床からの高さの点Pを中心として単振り子と同じ運動をする。図4において3つのブロックの正面は同一の鉛直面内にある。また、点P及びすべての糸は3つのブロックの中心を含む鉛直面内にある。この鉛直面によるAの断面において、小球を含む対角線と鉛直線のなす角をθとする。図4のように小球がよりもに近いとき、θは正とする。点Pと小球を通る直線と鉛直線のなす角はである。ブロックどうし及びブロックと床の間に摩擦ははたらかない。はいずれも傾くことはないものとする。初めにAが置かれたときのθとし、の場合のみを考える。以下の問いに答えよ。

まず、Mが十分大きく、Aの運動中、がいずれも静止したままである場合を考える。

(h) 単振り子と同じ運動をする小球の速さvを、θを用いて表せ。また、Aに及ぼす力とAに及ぼす力の合力の大きさGを、mθを用いて表せ。

(i) をつなぐ糸の張力の大きさ,およびと壁をつなぐ糸の張力の大きさを、GMθを用いて表せ。

次に、いろいろな質量Mのおもりを用いて実験すると、Mがある値よりも大きい場合には運動開始時の角の範囲でどのように選んでもは動かないが、よりも小さい場合にはの値によってはAの運動中の両方またはいずれかが動いた。

(j) mを用いて表せ。

[解答へ]


[2] 図1のように、長さrの導線abcdと長さの導線bcを直角につないで作ったコの字形の導線Xを、水平に固定された直線状の導線Yにつり下げて作った長方形の回路abcdを考える。Yの区間adの一部は電池、抵抗器、コイル、スイッチで作った装置Zで置き換えることができ、Yの両端は絶縁されている。XYを軸に滑らかに回転できるが、平行移動や変形をしないものとする。なお、YZは動かない。abcdの質量は無視でき、bcの質量はmであり、重力加速度の大きさをとする。また、磁束密度の大きさがBである鉛直上向きの磁場が一様に存在している。導線の太さと電気抵抗、コイル以外の自己インダクタンス、電池の内部抵抗、空気抵抗はすべて無視できるものとする。
回路を流れる電流の正の向きを
abcdと定める。また、aを通る鉛直方向の直線とabがなす角をθとし、aからbに向う向きが鉛直下向きのときにであり、abcdの向きに回る右ねじが進む向きをθの正の向きと定める。さらに、Xの角速度をωとし、微小な時間の間にθだけ変化するとき、である。

[A] 図2のように、電圧Vの電池、抵抗値Rの抵抗器、スイッチSを使ってZを作り、adの一部を置き換える。スイッチをp側に入れると抵抗器のみを通して、q側に入れると抵抗器と電池を通して回路が閉じる。電池は正の向きに電流を流そうとする向きに設置されている。以下の問いに答えよ。

(a) まずスイッチをp側に入れ、Xが水平になるようにの位置までbcをゆっくり持ち上げた。回路に電流が流れていないことを確認してからbcを静かに放したところ、XYを軸に運動した。ある時刻において回路を流れる電流Iを、rBRθωのうち必要な記号を用いて表せ。

(b) (a)において、abbccdが磁場から受ける力の大きさを、それぞれrBのうち必要な記号を用いて表せ。

(c) 十分に長い時間が経つと、の位置でXは静止した。bcを放してからの位置でXが静止するまでの間に抵抗で発生したジュール熱Qを、rmBRのうち必要な記号を用いて表せ。

(d) の位置でXが静止した状態でスイッチをq側に入れたところ、XYを軸に運動をし、十分に長い時間が経つとの位置でXは静止した。このときを、rmBVRのうち必要な記号を用いて表せ。

[B] 図3のように、自己インダクタンスLのコイルとスイッチSを使ってZを作り、adの一部を置き換える。スイッチを入れるとコイルを通して回路が閉じる。スイッチを切った状態でXが水平になるようにの位置までbcをゆっくり持ち上げた。その後、スイッチを入れてからbcを静かに放したところ、XYを軸にの間を往復する周期的な運動をした。以下の問いに答えよ。

(e) となる瞬間に回路を流れる電流の大きさをエネルギー保存則から求め、rmLのうち必要な記号を用いて表せ。

(f) 以下の文章中の空欄()()にあてはまる数式または数値を答えよ。ただし、()は、rBLθ()()rBLのうち必要な記号を用いて表せ。

ある時刻から微小な時間の間にθだけ変化するとき、電流Iの変化と求まる。θだけ変化するときのの変化はであることを用いると、Iの変化との変化は等しいことがわかる。よって、両者の差であるは時刻によらない定数となる。特にのときであることから、と定まるので、任意の時刻においてが成り立つ。

(g) となるような磁束密度の大きさを、rmLのうち必要な記号を用いて表せ。ただし、解が複数ある場合にはすべての解を列挙し、解がない場合には「=解なし」と解答せよ。
また、
Bの関数として表したグラフの概形として最も適切なものを図4の選択肢@〜Gから選び、番号で答えよ。

[解答へ]


[3] 図1のようにシリンダーとピストン及び温度調節機からなる装置に理想気体1molが封入されている。必要に応じて温度調節機により気体を加熱あるいは冷却するものとする。初期状態を体積,圧力,温度(状態0)とする。状態0から図2に示す体積 ()の状態への以下の3通りの変化を考える。
・定圧変化:変化後の体積,圧力,温度(状態1)
・等温変化:変化後の体積,圧力,温度(状態2)
・断熱変化:変化後の体積,圧力,温度(状態3)
ここで、定圧モル比熱を,定積モル比熱をとし、比熱比を,体積比をとする。なお、シリンダーとピストンの間には摩擦はないものとする。さらに、気体はシリンダー及びピストンと熱のやり取りをしないものとする。

[A] 定圧変化、等温変化、断熱変化において気体が外部にする仕事をそれぞれとし、定圧変化及び等温変化において気体に加える熱量をそれぞれとする。以下の問いに答えよ。

(a) 定圧変化、等温変化、断熱変化の概略を解答欄にp-V図として描け。そして、の大小関係を不等式で表せ。

(b) 及びを用いた数式、あるいは数値で表せ。

[B] 状態0から状態3への断熱変化を用いた熱機関を考える。状態0から状態3への断熱変化の後、圧力をに保ちながら、体積をからに戻す。ここで、圧力,体積の状態を状態4とし、その温度をとする。その後、体積をに保ちながら気体に熱量Qを加え、状態4から状態0に戻す。以下の問いに答えよ。

(c) [A]Qの比aγを用いて表せ。

(d) この熱機関の熱効率aγを用いると以下のように表される。空欄()にあてはまる数式を答えよ。

[C] 状態0から状態2への等温変化を用いた熱機関を考える。ここで状態0から状態2への等温変化において気体が外部にする仕事は(eは自然対数の底)と表される。この等温変化後の状態2 (圧力)から、体積をに保ちながら状態3(圧力)まで変化させ、その後圧力をに保ちながら体積をからに戻す。すなわち問[B]と同様に温度の状態4まで変化させる。その後、体積をに保ちながら気体に熱量Qを加え、状態4から状態0に戻す。以下の問いに答えよ。

(e) 状態2から状態3への変化において気体が放出する熱量γaを用いて表せ。ただし、気体が熱を吸収する場合には熱量は負とする。

(f) この熱機関の熱効率aγを用いると以下のように表される。空欄()()にあてはまる数式を答えよ。

[D] 状態0から状態1への定圧変化を用いた熱機関を考える。この定圧変化後の状態1(圧力)から、体積をに保ちながら状態3(圧力)まで変化させ、その後圧力をに保ちながら体積をからに戻す。すなわち、問[B]及び問[C]と同様に温度の状態4まで変化させる。その後、体積をに保ちながら気体に熱量Qを加え、状態4から状態0に戻す。以下の問いに答えよ。

(g) この熱機関の熱効率aγを用いると以下のように表される。空欄()にあてはまる数式を答えよ。

(h) 及びとして、この熱機関の熱効率と、問[B]及び問[C]における熱機関の熱効率3つの大小関係を不等式で表せ。必要に応じて、
であることを用いてよい。

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