共通テスト数学IIBC '25年第5問
以下の問題を解答するにあたっては、必要に応じて問題末の正規分布表を用いてもよい。
Q地域ではレモンを栽培しており、収穫されるレモンを重さによってサイズごとに分類している(表1)。過去に収穫されたレモンは、平均が110g,標準偏差が20gの正規分布に従うとする。
表1 レモンのサイズと重さの対応関係
サイズ | レモン1個の重さ |
S | 80g以上90g未満 |
M | 90g以上110g未満 |
L | 110g以上140g未満 |
2L | 140g以上170g未満 |
その他 | 80g未満または170g以上 |
(1) Q地域で今年収穫されるレモンの重さ(単位はg)は、過去に収穫されたレモンの重さと同じ分布に従うものとする。すなわち、今年収穫される1個のレモンの重さを確率変数Xで表すと、Xは正規分布
に従うとする。よって、今年収穫されるレモンから無作為にレモンを1個抽出するとき、そのレモンがLサイズである確率は、
であることに注意すると、
である。 いま、Q地域で今年収穫されるレモンが20万個であるとし、その中のLサイズのレモンの個数を確率変数Yで表すと、Yは二項分布に従い、Yの平均(期待値)は
となる。
については、最も適当なものを、次の
〜
のうちから一つ選べ。
13100
13360
31740
68260
86640
10000
168260
16640
(2) 太郎さんと花子さんは、Q地域で今年収穫されるレモンから何個かを抽出して、今年収穫されるレモンの重さの平均(母平均)を推定する方法について話している。
太郎:母平均に対する信頼度95%の信頼区間の幅を4g以下にして推定したいね。
花子:母標準偏差を過去と同じ20gとすると、何個のレモンの重さを量ればいいかな。
太郎:信頼区間の式から、必要な標本の大きさを求めてみようよ。
母平均に対する信頼度95%の信頼区間の幅を4g以下にするために必要な標本の大きさを求める。いま、Q地域で今年収穫されるレモン全体を母集団とし、その重さの母平均をmg,母標準偏差をσgとする。この母集団から無作為に抽出したn個のレモンの重さを確率変数
,
,・・・,
で表すと、標本の大きさnが十分に大きいとき、標本平均
は近似的に正規分布
に従う。また、mに対する信頼度95%の信頼区間
と表すと、信頼区間の幅は
となる。
したがって、母標準偏差を過去と同じ
として、nに関する不等式 を満たす自然数nを求めればよい。@の両辺は正であるから、両辺を2乗して整理すると、
となる。この不等式を満たす最小の自然数nを
とすると、
である。ゆえに、mに対する信頼度95%の信頼区間の幅を4g以下にするために必要な標本の大きさnのうち、最小のものは
であることがわかる。
の解答群
σ

については、最も適当なものを、次の
〜
のうちから一つ選べ。
σ


(3) 太郎さんと花子さんは、Q地域で今年収穫されるレモンの重さについて話している。
太郎:今年のレモンの重さは、他の地域では例年よりも軽そうだと聞いたよ。
花子:Q地域でも、過去の平均110gと比べて軽いのかな。
太郎:標本の大きさを400,母標準偏差を過去と同じ20gとして、仮説検定をしてみようよ。
(2)のmを用いて、Q地域で今年収穫されるレモンの重さの母平均mgが過去の平均110gより軽いといえるかを、有意水準5%(0.05)で仮説検定を行い検証したい。ただし、標本の大きさは400,母標準偏差は過去と同じ20gとする。
ここで、統計的に検証したい仮説を「対立仮説」、対立仮説に反する過程として設けた仮説を「帰無仮説」とする。このとき、帰無仮説は「
」、対立仮説は「
」である。これらの仮説に対して、有意水準5%で帰無仮説が棄却(否定)されるかどうかを判断する。
いま、帰無仮説が正しいと仮定する。標本の大きさ400は十分に大きいので、(2)の標本平均
は近似的に正規分布
に従う。無作為抽出した400個のレモンの重さの平均が108.2gとなった。このとき、確率
は
となる。この値をパーセント表示した値は有意水準5%より
。したがって、有意水準5%で今年収穫されるレモンの重さの母平均は110gより軽いと
。
の解答群


の解答群

の解答群
小さいから、帰無仮説は棄却されない
小さいから、帰無仮説は棄却される
大きいから、帰無仮説は棄却されない
大きいから、帰無仮説は棄却される
の解答群
判断できる
判断できない

正規分布表
次の表は、標準正規分布の分布曲線における右図灰色
部分の面積をまとめたものである。
 | 0.00 | 0.01 | 0.02 | 0.03 | 0.04 | 0.05 | 0.06 | 0.07 | 0.08 | 0.09 |
0.0 | 0.0000 | 0.0040 | 0.0080 | 0.0120 | 0.0160 | 0.0199 | 0.0239 | 0.0279 | 0.0319 | 0.0359 |
0.1 | 0.0398 | 0.0438 | 0.0478 | 0.0517 | 0.0557 | 0.0596 | 0.0636 | 0.0675 | 0.0714 | 0.0753 |
0.2 | 0.0793 | 0.0832 | 0.0871 | 0.0910 | 0.0948 | 0.0987 | 0.1026 | 0.1064 | 0.1103 | 0.1141 |
0.3 | 0.1179 | 0.1217 | 0.1255 | 0.1293 | 0.1331 | 0.1368 | 0.1406 | 0.1443 | 0.1480 | 0.1517 |
0.4 | 0.1554 | 0.1591 | 0.1628 | 0.1664 | 0.1700 | 0.1736 | 0.1772 | 0.1808 | 0.1844 | 0.1879 |
0.5 | 0.1915 | 0.1950 | 0.1985 | 0.2019 | 0.2054 | 0.2088 | 0.2123 | 0.2157 | 0.2190 | 0.2224 |
0.6 | 0.2257 | 0.2291 | 0.2324 | 0.2357 | 0.2389 | 0.2422 | 0.2454 | 0.2486 | 0.2517 | 0.2549 |
0.7 | 0.2580 | 0.2611 | 0.2642 | 0.2673 | 0.2704 | 0.2734 | 0.2764 | 0.2794 | 0.2823 | 0.2852 |
0.8 | 0.2881 | 0.2910 | 0.2939 | 0.2967 | 0.2995 | 0.3023 | 0.3051 | 0.3078 | 0.3106 | 0.3133 |
0.9 | 0.3159 | 0.3186 | 0.3212 | 0.3238 | 0.3264 | 0.3289 | 0.3315 | 0.3340 | 0.3365 | 0.3389 |
1.0 | 0.3413 | 0.3438 | 0.3461 | 0.3485 | 0.3508 | 0.3531 | 0.3554 | 0.3577 | 0.3599 | 0.3621 |
1.1 | 0.3643 | 0.3665 | 0.3686 | 0.3708 | 0.3729 | 0.3749 | 0.3770 | 0.3790 | 0.3810 | 0.3830 |
1.2 | 0.3849 | 0.3869 | 0.3888 | 0.3907 | 0.3925 | 0.3944 | 0.3962 | 0.3980 | 0.3997 | 0.4015 |
1.3 | 0.4032 | 0.4049 | 0.4066 | 0.4082 | 0.4099 | 0.4115 | 0.4131 | 0.4147 | 0.4162 | 0.4177 |
1.4 | 0.4192 | 0.4207 | 0.4222 | 0.4236 | 0.4251 | 0.4265 | 0.4279 | 0.4292 | 0.4306 | 0.4319 |
1.5 | 0.4332 | 0.4345 | 0.4357 | 0.4370 | 0.4382 | 0.4394 | 0.4406 | 0.4418 | 0.4429 | 0.4441 |
1.6 | 0.4452 | 0.4463 | 0.4474 | 0.4484 | 0.4495 | 0.4505 | 0.4515 | 0.4525 | 0.4535 | 0.4545 |
1.7 | 0.4554 | 0.4564 | 0.4573 | 0.4582 | 0.4591 | 0.4599 | 0.4608 | 0.4616 | 0.4625 | 0.4633 |
1.8 | 0.4641 | 0.4649 | 0.4656 | 0.4664 | 0.4671 | 0.4678 | 0.4686 | 0.4693 | 0.4699 | 0.4706 |
1.9 | 0.4713 | 0.4719 | 0.4726 | 0.4732 | 0.4738 | 0.4744 | 0.4750 | 0.4756 | 0.4761 | 0.4767 |
2.0 | 0.4772 | 0.4778 | 0.4783 | 0.4788 | 0.4793 | 0.4798 | 0.4803 | 0.4808 | 0.4812 | 0.4817 |
2.1 | 0.4821 | 0.4826 | 0.4830 | 0.4834 | 0.4838 | 0.4842 | 0.4846 | 0.4850 | 0.4854 | 0.4857 |
2.2 | 0.4861 | 0.4864 | 0.4868 | 0.4871 | 0.4875 | 0.4878 | 0.4881 | 0.4884 | 0.4887 | 0.4890 |
2.3 | 0.4893 | 0.4896 | 0.4898 | 0.4901 | 0.4904 | 0.4906 | 0.4909 | 0.4911 | 0.4913 | 0.4916 |
2.4 | 0.4918 | 0.4920 | 0.4922 | 0.4925 | 0.4927 | 0.4929 | 0.4931 | 0.4932 | 0.4934 | 0.4936 |
2.5 | 0.4938 | 0.4940 | 0.4941 | 0.4943 | 0.4945 | 0.4946 | 0.4948 | 0.4949 | 0.4951 | 0.4952 |
2.6 | 0.4953 | 0.4955 | 0.4956 | 0.4957 | 0.4959 | 0.4960 | 0.4961 | 0.4962 | 0.4963 | 0.4964 |
2.7 | 0.4965 | 0.4966 | 0.4967 | 0.4968 | 0.4969 | 0.4970 | 0.4971 | 0.4972 | 0.4973 | 0.4974 |
2.8 | 0.4974 | 0.4975 | 0.4976 | 0.4977 | 0.4977 | 0.4978 | 0.4979 | 0.4979 | 0.4980 | 0.4981 |
2.9 | 0.4981 | 0.4982 | 0.4982 | 0.4983 | 0.4984 | 0.4984 | 0.4985 | 0.4985 | 0.4986 | 0.4986 |
3.0 | 0.4987 | 0.4987 | 0.4987 | 0.4988 | 0.4988 | 0.4989 | 0.4989 | 0.4989 | 0.4990 | 0.4990 |
3.1 | 0.4990 | 0.4991 | 0.4991 | 0.4991 | 0.4992 | 0.4992 | 0.4992 | 0.4992 | 0.4993 | 0.4993 |
3.2 | 0.4993 | 0.4993 | 0.4994 | 0.4994 | 0.4994 | 0.4994 | 0.4994 | 0.4995 | 0.4995 | 0.4995 |
3.3 | 0.4995 | 0.4995 | 0.4995 | 0.4996 | 0.4996 | 0.4996 | 0.4996 | 0.4996 | 0.4996 | 0.4997 |
3.4 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4997 | 0.4998 |
3.5 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 | 0.4998 |
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解答 正規分布、二項分布、推定に関する基本問題です。[サ]は、帰無仮説と対立仮説に重なりがあってもよいかどうかを問題にしているのですが、私が持っている教科書にはその記述がありません。一般的な定義で解答しました。
(1) 過去に収穫されたレモンの重さxが、平均
g,標準偏差
gの正規分布
に従うとき、確率変数
は標準正規分布
に従います。Lサイズのレモン、
のとき、
つまり、正規分布表の
のところ読むと0.4332です。従ってLサイズのレモンである確率pは、
です。 アイウエ 4332 ......[答]
個のレモンのうちでそれがLサイズである個数Yは、二項分布
に従います。個数Yの平均値
は、
です。 オ 4 ......[答]
(2) 母平均m,母標準偏差σの母集団からn個の標本をとるとき、nが十分に大きければ、その標本平均
は近似的に正規分布
に従います(母集団と標本を参照)。 カ 6 ......[答] mに対する信頼度95%の信頼区間は、正規分布表で
となるところを読むと1.96なので、
であって、 つまり、
,
です。信頼区間の幅は、 です。 キ 5 ......[答]信頼区間の幅を4g以下とするために、σを過去の母標準偏差
として。 両辺を2乗して整理すると、
これを満たす最小の自然数
は、
クケコ 385 ......[答]
mに対する信頼度95%の信頼区間の幅を4g以下にするために必要な標本の大きさは385個以上、ということです。
(3) 本問の場合、Q地域で今年収穫されるレモンの重さの母平均mgが過去の平均110gより軽いといえるかを検証するので、帰無仮説は「
」,対立仮説は「
」です(帰無仮説と対立仮説は排反でなければなりません)。 サ 0 ......[答] (2)の標本平均
は
,
であり、標本数
が十分に大きく近似的に正規分布
に従います。
より、正規分布
に従います。 シ 5 ......[答]このとき、
は標準正規分布
に従いますが、 正規分布表の1.8のところを読むと0.4641です。これは、
,つまり、
である確率です。平均以下となる確率は
なので、
となる確率
は、
スセソタ 0359 ......[答]この確率を%表示すると3.59%で有意水準5%よりも小さく、帰無仮説は棄却されます(
が正しいなら、
ということはほとんど起こり得ない)。 チ 1 ......[答]従って、有意水準5%で今年収穫されるレモンの重さの母平均は110gより軽いと判断できます。 ツ 0 ......[答]
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