大分大医数学'10年[3]
微分可能な関数が次の方程式を満たすとする。
・・・(A) ここにnは自然数、 ()は実数の定数で、である。また、はのk次導関数でとする。(A)のような方程式を第n階微分方程式といい、(A)に対してtのn次方程式
・・・(B) を(A)の特性方程式という。このとき次の問いに答えよ。
(1) 特性方程式(B)の解が実数rであるとき、関数が方程式(A)を満たすことを証明せよ。 (2) n次方程式(B)が実数rをk重解にもつとき、次のtに関する方程式はrを重解にもつことを証明せよ。ただし、とする。 (注) tのm次方程式が適当な多項式を用いてとなるとき、をこの方程式のk重解と定義する。ただし、とする。 (3) 実数の定数rに対してxの関数を ()とする。このとき、をx,およびを用いて表せ。ただし、とする。 (4) 実数rがn次方程式(B)のk重解であるとき、 ()が微分方程式(A)を満たすことを証明せよ。ただし、kは自然数とする。
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解答 線形微分方程式をネタとする野心的な問題です。
(1) 特性方程式(B)の解が実数rであるとき、
・・・@
(2) n次方程式(B)が実数rをk重解にもつとき、適当な多項式を用いて、 ・・・A よって、
この両辺をtで微分すると、
このとき、
より、方程式
は、rを重解にもちます。
この両辺をxで微分すると、
・・・B さらにxで微分すると、
さらにxで微分すると、
これより、
と予測できます。これを、nに関する数学的帰納法により証明します。 (T) のとき、Bより、予測は成り立ちます。 (U) のとき、予測が成り立つと仮定して、 両辺をxで微分すると、
よって、のときにも予測は成り立ちます。 (T),(U)より、nが自然数のとき、予測は成り立ちます。
∴ ......[答]
(4) kに関する数学的帰納法により証明します。
(T)のとき、(1)より、実数rがn次方程式(B)の解であるとき、 ()のiは、に限られ、は微分方程式(A)を満たすので、題意は成り立ちます。 (U)のとき、題意が成り立つと仮定します。即ち、実数rがn次方程式(B)のm重解であるとき、 ()は微分方程式(A)を満たすと仮定します。 ここで、の場合を考えます。つまり、実数rがn次方程式(B)の重解だとします。
このとき、実数rはn次方程式(B)のm重解になっているので、(U)の仮定より、 ()は微分方程式(A)を満たします。従って、の場合のが微分方程式(A)を満たすことが示せれば、「 ()が微分方程式(A)を満たす」ことが言えて、の場合にも題意が成り立つことを示すことができます。(3)の結果でとして、 ・・・・・・
さらに、
これらより、
は微分方程式(A)を満たすので、2番目の中カッコ内は、 です。1番目の中カッコ内を考えます。実数rがn次方程式(B)の重解であるとき、(2)より、方程式 はrをm重解にもちます。すると、(U)の仮定において、,,・・・,,と見ることにより、は、微分方程式 を満たします。つまり、1番目の中カッコ内も
となります。
従って、 ()が微分方程式(A)を満たし、の場合にも題意が成り立ちます。 (T),(U)より、kを自然数として、実数rがn次方程式(B)のk重解であるとき、 ()は微分方程式(A)を満たします。
追記.(A)のような微分方程式を線形微分方程式と言います。抵抗力がある場合の振動現象や、電磁気学におけるRLC回路の挙動を調べる場合などに出てきます。 以下、最高次の係数は1だとして線形微分方程式について考えます。
(1) 線形1階微分方程式: (r:定数) 両辺を積分して、
(C:積分定数) とおいて、 (A:定数) 同様にして、を与えられた関数だとして、の解は、 とおいて、 ・・・C 以上の場合を斉次線形1解微分方程式と言います。次の方程式を非斉次線形1解微分方程式と言います。
・・・D この場合の解は、CのAを関数に置き換え、を微分方程式Dに代入し、 Dより、, ∴ からを求め、積分計算を行うことによりが求められます。 (2) 線形2階微分方程式: (p,q:定数) となるので、(1)の場合の結果を用いて、 (C:定数)これより、 この解は(1)の非斉次の場合の結果を用いて、
・・・E (D:定数) ,と置き直して、 の場合(特性方程式が重解αをもつ場合)は、Eが、 となります。
(3) 線形n階微分方程式
本問のような線形微分方程式は、とが解であれば、も解になります。本問より、n次の特性方程式が異なるn個の解,,・・・,をもてば、微分方程式(A)の一般解は、 n次の特性方程式が異なる個の解,・・・,とk重解Rをもてば、微分方程式(A)の一般解は、 となります。
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