東京工業大学2007年前期数学入試問題
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[1] pを素数、nを0以上の整数とする。
(1) mは整数でとする。1からまでの整数の中で、で割り切れで割り切れないものの個数を求めよ。 (2) 1からまでの2つの整数x,yに対し、その積xyがで割り切れるような組の個数を求めよ。 [解答へ]
[2] 正数aに対して、放物線上の点Aにおける接線を、Aを中心に回転した直線をとする。ととの交点でAでない方をBとする。さらに点をC,原点をOとする。
(1) の式を求めよ。 (2) 線分OC,CAとで囲まれる部分の面積を,線分ABとで囲まれる部分の面積をとする。このとき
を求めよ。
[解答へ]
[3] 一辺の長さが1の正八角形の周上を3点P,Q,Rが動くとする。
(1) の面積の最大値を求めよ。 [解答へ]
[4](1) 整数と正数に対して
(2) は(1)で定めたものとする。,とy軸で囲まれる図形の面積を,に対し,とで囲まれる図形の面積をとおく。このとき
を求めよ。 [解答へ]
各問検討
[1](解答はこちら) こういう問題を見たときに、いきなり解答のように、1からまでの整数の中で、で割り切れる整数を挙げていく、という方針で考えていくことのできる頭脳明晰な人は、それで構わないと思います。
ですが、なかなかそれについて行けない、という人の場合(私もそうです)は、文字のまま、あるいは、抽象的なまま、問題を無理に考えようとせずに、以下のように考えるようにしましょう。
pのまま考えずに、pに具体的な数を当てはめてみるのです。では問題の状況がよくつかめないので、くらいにしてみます。
(1)では、,くらいにしてみると良いと思います。1からまでの整数の中で、で割り切れてで割り切れないものを考えることになります。小さい方から挙げてみます。
25,50,75,100,
150,175,200,225,
275,300,325,350,
400,425,450,475,
525,550,575,600
の20個あります。4個ずつ5行に分けて書いたのは、125,250,375,500,625を除いているからです。次に、どうして20個になるかを考えます。1から625の中に25の倍数は、個ありますが、このうち、125の倍数の個を除くことになるので、個ということになります。625を,25を,125をに置き換えれば、
と解答することができます。
(2)では、1から625までの整数x,yに対し、その積がで割り切れるような組を探します。
(i) のように、xが5の倍数だがの倍数でないような数のときには、が625で割り切れるために、yは、の倍数であればよいので、125,250,375,500,625の5通りです。xの方は、(1)を使って、通りあるので、の組は、組できます。 (ii) のように、xがの倍数だがでないような数のときには、が625で割り切れるために、yは、の倍数であればよいので、25〜625の通りあります。xは上記のように20通りあり、の組は、組できます。 (iii) のような場合(xは4通り)は、yは、5の倍数で通りです。 (iv) の場合は、yは、1〜625の何でもよく625通りです。 (v) のように、xが5の倍数でないときには、だけで、1通りです。 以上の場合のの組の数の総和を求めればよいわけです。
(ii)のような場合を取り上げて、5をpに戻すことを考えます。xがで割り切れるがで割り切れない数のとき、xは、(1)より、通りあります。(ii)ではになりますが、「yがの倍数」の指数の2は、の2です。になります。つまり、yは、の倍数になりますが、個あります。の組は、組(mによらない)できます。上記でも、(i),(ii),(iii),(v)はどれも、組になります。
ところが(iv)だけ、の組は組できます。のときだけ、別に考える必要があるのです。これで解答が書けるはずです。
上記のような検討を計算用紙上で行っても10分程度ですみます。問題のカラクリを理解するのに10分くらいかかるかも知れませんが、理解できてしまえば、10分くらいで答案にまとめられるでしょう。東工大の数学の試験時間は、4問で150分です。遠回りのように感じるかも知れませんが、上記のようにやっても、充分に試験時間内に解答できるのです。
東大、東工大の合格者の中には、もちろん、頭脳明晰な秀才も数多くいますが、私のような凡人で合格してしまう人間もいます。というか、凡人で合格してしまう方が8割だと言っても過言ではありません。
抽象的な難問は、難問のまま考えるのではなく、具体的な易しい問題に直してから考えれば、凡人でも難関大学を制することができるのです。
[2](解答はこちら) 放物線の接線とx軸とのなす角θ を2等分する直線、とか、接線と角φをなす直線について考える問題を入試でよく見かけます。
すべて、正接に関する公式を使って処理できます(ベクトルの内積を考える人もいます)。
角θ を2等分するのであれば、
角φをなすのであれば、
を利用することになります。たいてい計算のややこしい問題になります。
この問題もそうした計算問題の1つで、途中の計算は、なす角ということもあって案の定ややこしくなります。ですが、面積は、のとき、4という簡単な値に近づくのです。きれいな答に、なぜだろう!と感動します。出てきた結果に感動することが、数学を得意科目にする第一歩だと私は思います。
実は、この問題は一般的に考える方が、が暴れず、計算が簡単にすみます。
放物線の点Aにおける接線の傾きはです。
この接線をAを中心にとなる角φだけ回転した直線をとして、の傾きをm,とおくと、
分母を払ってmについて解くと、
・・・@ の方程式は、
・・・A で、ここにを代入すれば、(1)の答が出ます。
Aとを連立すると、
∴
よって、は、
との比をとると、
これで、が一定値でありさえすれば、でなくても、のとき、となることがわかります。
[3](解答はこちら) 解答は自然な流れに沿ってやってありますが、こうした問題では、より簡潔にまとめるのにはどうするか、ということも一つのテーマになります。
東工大の場合には、問題数に比して時間はたっぷりあるので、解答方針のところに時間をかけることもできるのですが、かと言って、簡潔な答案を書くためだけのために、1題30分も考えるのであれば、私は、多少手間がかかっても、自然な流れで望む方が安全だと思います。この辺は、個人の趣味の問題でもあるので、こうすべきだ、というようなことは言えませんが......。正八角形の問題なので、対称性を考えて整理すれば、自然に考えても、いくつかの類型に分けることができて、充分に試験時間内に入りきると思います。
(1)では、P,Qが隣接2辺にいて、Rが他の辺の上にあるとき、P,Qが1つおいた辺の上にいて、Rが他の辺の上にあるとき、を、考えれば十分です。Pのいる辺を固定すれば、場合分けはそれほど複雑ではありません。P,Qの位置に対して、Rがどこに来ると、三角形の面積が最大になるか、ほとんどの場合では容易に考えることができます。問題は、Pが上、Qが上にあって、Rが上を動くときですが、PQ // かどうかで場合分けすれば解決します。
(2)では、場合分けなしで解答する方法もあるようですが、私にはオーソドックスな考え方だとは思えません。オーソドックスに行くのでは時間がかかって試験時間内に完了できない、というのならともかく、(1)のように場合分けして考えれば、多少回り道でも、三角形の面積=底辺×高さ÷2で解決します。
(1)だけでも充分ではないかと思いますが、根性さえあれば小中学生でも取り組める全員参加型の入試問題で良問だと思います。
[4](解答はこちら) (1)は2曲線が接する条件:y座標同士が等しい、接線の傾きが等しい、を、考えるだけのことで、ゴタゴタしますが一本道の問題です。(2)の面積は、大変そうに見えますが、計算そのものは大したことはありません。面積を計算する図形が中途半端なところで切れているので、極限を求めるときに、はさみうちで味付けすれば、最終結果は汚い式ですが、容易に解答にたどりつけます。
この問題が、‘07年の4題の中では、最も差のついた問題だと私は思います。差のついたところは、検算をしっかりしたか、(2)の中途半端な部分をはさみうちできちんと処理しているか、の、2点だと思われます。誰でも計算ミスをします。中途半端なところは、何とか適当にごまかしたくなります。そこを手抜きをせずにきちんと仕上げたかどうかで'07年は大差がついたのではないでしょうか。
細かいことですが、指数にという形が出てきます。このまま書いていると、書いている自分自身が見間違い易くなります。などと置き直して、最終結果のところで入れ戻す、くらいの心がけをしてもらうと、計算ミスを防ぐことができると思います。こうした細かい計算の工夫は、日常から、自分のクセに合わせてよく考えておいてください。そうした心がけが、将来、社会の第一線で活躍するようになったときに生きてくるはずです。
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