東大理系数学'09前期[6]

平面上の2PQの距離をと表すことにする。平面上に点Oを中心とする一辺の長さが1000の正三角形△がある。△の内部に3を、 ()となるようにとる。また、

とおく。のそれぞれに対して、時刻0を出発し、の向きに速さ1で直進する点を考え、時刻tにおけるその位置をと表すことにする。
(1) ある時刻tが成立した。ベクトルと、ベクトルとのなす角度をθ とおく。このときとなることを示せ。
(2) 角度によって定義する。αかつをみたす実数とする。(1)と同じ仮定のもとで、の値のとる範囲をαを用いて表せ。
(3) 時刻のそれぞれにおいて、次が成立した。
このとき、時刻において同時に
が成立することを示せ。


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解答 かつての後期試験風の問題ですが、こういう問題でこそベクトルの基本が問われています。(1)(2)は題意を把握できればそれほど難しくはありませんが、(3)は数値処理の部分で多大な気力・知力を必要とします。

()より、は動点の移動方向を示す単位ベクトルで、時刻0を出発し、の向きに速さ1で直進する点の時刻tにおける位置を示す位置ベクトルは、
 ・・・@
となります。
(1) より、です。@より、

この式は、右図のように、時刻0を出発した動点がの方向に速さで進み、時刻tからの距離が1の範囲、つまりを中心とする半径1の円内に来ている、ということを意味しています。右図において、として、より

(2) 問題文の図を眺めていても、の関係は見えてきません。(1)の結果は、は勝手な方向を向いているわけではなく、にかなり近い方向を向いている、ということを意味しています。つまり、の方向にはの方向に関して何らかの制約があるのですが、問題文の図ではそれが把握できないのです。
そこで、だけを抜き出したベクトル図を描いてみます。右図を見ると、のなす角がθのなす角がなので、です。複号が+になる(右図(i))とき、,複号が−になる(右図(ii))とき、となります。より、三角形DCEは二等辺三角形で、より、
(複号同順)

(1)
より、より、 ......[]

(3) 示すべき式、例えば、

は、時刻Tに動点は三角形の中心Oのかなり近くにいることを意味しています。時刻0から時刻までの間に速さ1で動点が進む距離は、です。つまり、を出発してOに向かって進むのであればちょうどOに到着する時刻に、動点はちょっとずれた方向:の方向に進んでいるのでOには来ないかも知れませんがOのそばには来ている、ということです。
右図より、のなす角はで、
 (内積を参照)
となることから、

 ( )
 ・・・A
以下では、A式を示すことが目標になります。
ところで、から
(2)の結果が得られるので、3式から、
 ・・・B
 ・・・C
 ・・・D
が得られます。ここでC+Dより、
 ・・・E
Bの各辺にマイナスをつけて不等号の向きを変え、
 ・・・F
E+Fより、
 ・・・G
注.ここを、(B+C+D)÷2より、 ・・・H
F+Hより、
としてしまうと、Gよりも緩い条件になってしまい、
 
(の変形はを利用)




()
と、A右辺()との差が極めて小さく、Aを示すのが難しくなります。

Gより、
 (三角関数の諸公式を参照)

この右辺とAの右辺を各々2乗して比較すると、



よってAが成り立つので、が成立します。
同様にして、も成り立ちます。


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