東京工業大学2006年前期物理入試問題


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[1] コンパクトディスク(CD)の記録面が虹色に見える現象を題材にして、光の性質を観察する実験を考えよう。
CDの記録面は図1のような構造で、図2の断面図に示すように、透明基板の下層に反射膜が塗布された面があり、その面上にピットと呼ばれる情報が記録されている部分が半径方向に間隔dで周期的に並んでいる。ピットのない部分では光がそのまま反射されるが、ピットの部分で光が乱反射されると仮定する。このとき、CDの記録面は格子定数dの回折格子とみなすことができる。ピットは曲線上に並んでいるが、狭い範囲について考えたときは直線に並んでいると考えて差し支えないものとする。
[A] 図3のように白い紙で作ったついたてに小さな穴Wを開け、その裏側からレーザー光をCDの記録面に対して垂直に照射して、その反射光をついたて上で観察する。レーザー光の空気中での波長をλ,空気の屈折率を1とする。
(a) 以下の空欄@〜Cに入る適切な数式を答えよ。
2に示すように、間隔dだけ離れて透明基板に入射する光Aと光Bを考える。屈折率n ()の透明基板中で、光Aは点Kで反射膜に対して垂直に入射し、回折した光が点Mから透明基板を出て行く。このとき、距離KPが光の波長の整数倍であれば、光Aと光Bは強め合うことになる。透明基板中での光の波長は @ で与えられるので、透明基板中で回折光が入射光となす角をとすると、強め合う条件は A m @ (mは整数)となる。
Aと光Bがそれぞれ点Mと点Nで透明基板を出た後、基板表面の法線に対してθ の方向に進む。θ は、n及び B の関係を持つ。この関係式を用いてを消去すると、CDから十分離れたスクリーン上で強め合う条件は、 C となる。
(b) 透明基板中で回折光の角が大きいとき、透明基板から空気中へ出ていく光がなくなる場合がある。その理由を述べよ。またそのときの角が満たす関係式を示せ。
(c) 3の実験において、CDとついたての間の距離l300mmのとき、小さな穴Wの上下に[mm]だけ離れた位置に一つ目の回折光が観察された。レーザー光の波長が0.50μmであるとき、格子定数dは何μmであるか。有効数字2桁まで求めよ。なお、これ以降の議論では透明基板の厚さは無視してよい。また、必須であれば以下の値を用いてよい。
1.411.732.243.16
[B] 次に、図4のように白熱灯光源から出た光が小さな穴を通り、凸レンズにより平行な光となってCDの記録面全体へ垂直に当たるようにした。図中で点PCDの中心であり、点PからCDの法線上にzだけ離れた位置QからCD表面を見たとき、赤、黄、緑、紫などの色のついた回折パターンが観察された。ただし観察するときCDに照射される光をさえぎることはないものとする。
(d) 答案用紙(e)欄の図のように、CDの記録面上に点Pを原点としてx-y座標を定義する。このとき、点Qから見てこの面上で波長λの回折光が強め合う位置の座標xyPQ間の距離zの間の関係式を求めよ。ただしzxyよりも十分大きく、としてよい。
(e) [mm]としたとき、紫色(λ0.40[μm])から赤色(λ0.64[μm])に変化する虹色の回折パターンがどのように配置されるか、答案用紙の目盛りを参考にして、おおよその形を書き入れよ。

[解答へ]


[2] 十分な長さを持つ水平な円筒状シリンダー内に、なめらかに動く断面積A[]のピストンがあり、内部に単原子分子の理想気体が閉じこめられている。シリンダーは温度が調節できるよう熱源に接触している。また、ピストンには、シリンダーの中心軸上を通る重さの無視できる糸で、滑車を用いておもりをつり下げることができる。周囲の圧力を[Pa],重力加速度をg[]とする。
[A] 図1のように、熱源の温度がT[K],おもりをつるしていない状態では、気体の温度はT[K},体積は[],圧力は周囲の圧力と等しく[Pa]であり、これを状態0とする。内部の気体の温度が変化しないようにゆっくりとおもりm[kg]をつるすと、ピストンはある位置で静止し状態1となった。次におもりをつるしたまま、熱源の温度を十分時間をかけて[K]へ上昇させて状態2とした。
(a) 状態1における気体の圧力[Pa]と状態2における気体の体積[]を求めよ。また、状態1,状態2を解答欄の圧力P-体積Vグラフにそれぞれ点として示し、状態0と状態1の圧力差を記入せよ。ただし、解答欄の点は状態0を、破線はTおよびの等温線を示している。
(b) 状態1から状態2への過程で気体が外部にした仕事[J],および熱源からシリンダー内の気体へ入った熱量[J]を求めよ。
[B] 熱源の温度をTにし、おもりをはずして気体を状態0に戻した。
(c) ここから、気体の温度が変化しないように、ゆっくりとつるすおもりの質量を0.5kgずつ増やし、ピストンの運動を観察した。すると、おもりの質量が25.5kgになった時に、おもりは止まることなく落下した。A = 0.00245[]g = 9.80[]とし、がとり得る値の範囲を求めよ。
[C] 図2ように、シリンダーとピストンを体積の無視できるばね定数k[]のばねで連結し、熱源の温度をTにした。おもりをつるしていない状態では、気体の温度、圧力、体積は状態0と同じであり、これを状態3とする。ここから、内部の気体の温度が変化しないようにゆっくりとおもりmをつるして状態4とし、次に、熱源の温度を十分時間をかけてへ上昇させて状態5とした。
(d) 状態3から状態4への体積変化を[]として、状態4における気体の圧力[Pa]を求めよ。
(e) 解答欄のP-Vグラフにを再び示し、状態4,状態5をそれぞれ点として示せ。また、を通る直線の傾き、およびを通る直線とを通る直線の交点の体積を求めよ。ただし、解答欄の点は状態3を、破線はTおよびの等温線を示している。
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[3] 水平面上を運動する、水平な床をもつ台車がある。台車は外力によって自由に加速度を変えることができるものとする。図のように、台車の床の上には前後方向に勾配をもつ傾斜角θ の斜面が固定されている。この斜面の上には、質量mの小物体が置かれている。ここで、斜面と小物体との間の静止摩擦係数をμ,動摩擦係数をとする。この斜面の右側には曲面がなめらかにつながっている。重力加速度をgとして、以下の問に答えよ。ただし、小物体の運動は台車の上から観測するものとする。

[A] 台車は一定の加速度α()で、図の左向き(正の向きとする)に運動をはじめた。
(a) 図のように、小物体を斜面上のP点に置き静かに手をはなしたところ、小物体は斜面を一定の加速度でのぼり始めた。このとき台車の上の観測者から見た、小物体に働くすべての力の向きを図示し、その名称を記入せよ。
(b) P点から斜面に沿って距離sだけのぼった地点をQ点とする。小物体がQ点を通過したとすると、Q点通過時の小物体の速さはいくらか。
(c) もし傾斜角θ が、ある角以上()であるならば、この物体はいかなるαでも斜面をのぼることはできない。このはいくらか。で答えよ。
[B] 斜面はQ点の高さのところで、前後方向の断面が円弧となる曲面になめらかにつながる。この円弧の半径はrで、中心Oは台車の床と同じ面内にある。また、小物体と曲面の間には摩擦力は働かないとする。小物体がQ点を通過した直後に台車は加速をやめ、台車の運動は等速直線運動に変わった。
(d) Q点を速さで通過した直後の小物体が、曲面から受ける垂直抗力の大きさはいくらか。を用いて表せ。
(e) 小物体は曲面から離れることなく、最高点のR点を速さで通過した。のとり得る最大の値はいくらか。
[C] 小物体がR点で速さで通過した直後に、台車は加速度の等加速度運動に移行した。その後、小物体は曲面から離れることなく、曲面上のT点を通過した。
(f) T点における小物体の速さがちょうどに等しかったとすると、は何度か。

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