東工大物理'06年前期[2]
十分な長さを持つ水平な円筒状シリンダー内に、なめらかに動く断面積A[]のピストンがあり、内部に単原子分子の理想気体が閉じこめられている。シリンダーは温度が調節できるよう熱源に接触している。また、ピストンには、シリンダーの中心軸上を通る重さの無視できる糸で、滑車を用いておもりをつり下げることができる。周囲の圧力を[Pa],重力加速度をg[]とする。
[A] 図1のように、熱源の温度がT[K],おもりをつるしていない状態では、気体の温度はT[K},体積は[],圧力は周囲の圧力と等しく[Pa]であり、これを状態0とする。内部の気体の温度が変化しないようにゆっくりとおもりm[kg]をつるすと、ピストンはある位置で静止し状態1となった。次におもりをつるしたまま、熱源の温度を十分時間をかけて[K]へ上昇させて状態2とした。 (a) 状態1における気体の圧力[Pa]と状態2における気体の体積[]を求めよ。また、状態1,状態2を解答欄の圧力P-体積Vグラフにそれぞれ点,として示し、状態0と状態1の圧力差を記入せよ。ただし、解答欄の点は状態0を、破線はTおよびの等温線を示している。 (b) 状態1から状態2への過程で気体が外部にした仕事[J],および熱源からシリンダー内の気体へ入った熱量[J]を求めよ。 [B] 熱源の温度をTにし、おもりをはずして気体を状態0に戻した。
[C] 図2ように、シリンダーとピストンを体積の無視できるばね定数k[]のばねで連結し、熱源の温度をTにした。おもりをつるしていない状態では、気体の温度、圧力、体積は状態0と同じであり、これを状態3とする。ここから、内部の気体の温度が変化しないようにゆっくりとおもりmをつるして状態4とし、次に、熱源の温度を十分時間をかけてへ上昇させて状態5とした。 (d) 状態3から状態4への体積変化を[]として、状態4における気体の圧力[Pa]を求めよ。
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解答 [B](c)で、力のつりあいが崩れたときに、シリンダー内の気体の圧力をピストンにかかる力に加えなくて良いのか、断熱変化で考えるべきなのではないか、どうも、しっくり来ないのですが、問題文の書き方からして、と考えるしかなさそうです。
シリンダー内の気体の量をn[mol],気体定数をR[]とします。
[A](a) 状態1においてピストンには、シリンダー内の気体の圧力による右向きの力,大気圧による左向きの力,右向きに糸を通しておもりに働く重力がかかっています。これらの力のつり合いより、 ∴ [Pa] ......[答]状態0における状態方程式は、 ・・・@
状態1における状態方程式は、 ・・・A
状態1から状態2までの過程は、ピストンに働く力のつりあいが成立したままの変化なので、定圧変化です。よって、状態2における圧力もです。
状態2における状態方程式は、 ・・・B
@,Aより(またはボイルの法則より)、 ∴ [] ......[答],および、状態0と状態1の圧力差、は、右図の通り。
(b) 状態1から状態2への過程で気体が外部にした仕事は、,を結ぶP-VグラフとV軸で挟まれた部分の面積になります。@,A,Bより、 [J] ......[答] [J] ......[答]
[B](c) シリンダー内の気体の圧力をPとします。ピストンに働く力のつり合いより、
∴ ・・・C[kg]のときには、力のつり合いCが成立していましたが、[kg]のときには、力のつり合いが成立しないということは、のときには、シリンダー内の気体がピストンに圧力を及ぼして、だったのに、のときには、ピストンが右に動き出したために、シリンダー内の気体がピストンに力を及ぼすことができなくなり、ピストンに働く力の合力が右向き、つまり、となった、ということです。
のとき、より、 [Pa] のとき、より、 [Pa] 以上より、 ......[答]
[C](d) 状態4において、ピストンに働く力は、シリンダー内の気体の圧力による右向きの力,大気圧による左向きの力,ばねの伸びがで、ばねが左向きに引く力,右向きに糸を通しておもりに働く重力がかかっています。これらの力のつり合いより、 ∴ [Pa] ......[答] 状態4より状態5に至る過程において、体積をV,圧力をPとすると、ばねの伸びはとなり、ピストンに働く力のつり合いの式は、 ∴ ・・・D
これより、状態4から状態5に至る過程のP-Vグラフは直線で、Vの係数を見ると、
,を通る直線の傾きは、[] ......[答],を通る直線上では、圧力はで一定なので、Dにおいて、として、より、 ∴ 交点の体積は、[] ......[答]
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