早大理工物理'09[2]

以下の問の答を解答用紙の解答欄に記入せよ。
摩擦なく動くピストンを備えた同形の容器を体積が無視できる細いパイプでつなぎ、容器全体に
1モルの単原子分子理想気体を封入した装置(図参照)について考えよう。2つの容器はパイプでつながっているので、気体の圧力は装置内のどこでも同一になる。
容器は高温物体に、は低温物体に接し、容器内の気体の温度はそれぞれ絶対温度
Tに保たれている。高温物体,低温物体と接している面を除き、容器およびピストンは熱を通さない素材でできている。
パイプには、容器内の気体とだけ熱をやりとりする「再生器」と呼ばれる装置
Gが備えられている。再生器Gはエネルギーを蓄えており、容器からに移動する気体を温度Tからに加熱、からに移動する気体をからTに冷却し、加熱時に放出した熱を冷却時に回収する。

図の装置について次の
4つの状態を考えよう。ただし、気体定数をRとする。

状態
A:容器内の気体の体積が等しくVである状態(総体積は)。このときの装置内の気体の圧力をとする。
状態
B:気体の圧力が状態Aと変わらずで、装置内の気体の総体積がになった状態。
状態
C:気体の圧力がとなり、装置内の気体の総体積が状態Bと変わらずの状態。ただし、実数xを満たし、圧力の変化率を表す。
状態
D:気体の圧力が状態Cと変わらずで、装置内の気体の総体積がになった状態。

1 状態Aの圧力を、TVおよびRで表せ。
2 状態Bにおける容器内の気体の体積を、TVRのうち適当なものを用いて表せ。
3 状態Cにおける容器内の気体の体積を、TVxRのうち適当なものを用いて表せ。
4 2つのピストンを同時にゆっくりと動かし、圧力をに保ちながら、装置の状態をAからBに変える。このとき、装置全体が外にした仕事およびピストンに気体がした仕事を、TVxRのうち適当なものを用いて表せ。
5 2つのピストンを同時にゆっくり動かし、総体積をに保ちながら、装置の状態をBからCに変える。この際に装置全体が外にした仕事およびピストンに気体がした仕事を、TVxRのうち適当なものを用いて表せ。ただし、x1より十分小さいとする。必要があれば、気体の体積変化が小さいときに気体がした仕事は、変化前の圧力pを用いてと与えられることを利用せよ。

装置の状態を、圧力を一定に保ちながらAからB,総体積を一定に保ちながらBからC,再び圧力を一定に保ちながらCからDにゆっくり変え、さらに総体積を一定にしてDからAにゆっくりと戻す過程をサイクルABCDAと呼ぼう。このサイクルについて考えよう。

6 圧力の変化率x1より十分小さいとする。装置の状態をサイクルABCDAに従って変化させるとき、装置全体が外にした仕事Wおよびピストンに気体がした仕事Yを、TVxRのうち適当なものを用い、に比例する項を無視して求めよ。必要があれば、近似式 (ただし、abは定数)を用いよ。
7 装置の状態をサイクルABCDAに従って変化させるとき、装置が高温物体から受け取る熱量Qを求めよう。再生器の働きのため、一連の状態変化の際に、容器からに移動した気体の量と、容器からに移動した気体の量が等しいとき、容器内の気体が容器内の気体および再生器Gから受け取る熱量と、内の気体が内の気体およびGに放出する熱量は等しい。このことと熱力学の第一法則を利用し、熱量Qを、WYのうち適当なものを用いて表せ。ただし、状態変化CDに伴い装置全体が外にした仕事を,ピストンに気体がした仕事をとした。
8 装置の状態をサイクルABCDAに従って変化させるとき、装置全体が外にした仕事Wを、装置が高温物体から受け取る熱量Qで割った量を、このサイクルの効率と呼ぶ。問6,問7の結果を利用し、効率を求めよ。


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久々に見た物理の難問です。気体が移動してしまうので、装置全体としてpV図を描いて仕事を考えることができません。問7の意味不明のヒントから何を読み取るか、ということが問われています。再生器Gを意識せず、容器絶対温度になった気体が容器に移動し、容器絶対温度Tになった気体が容器に移動する、と、考えましょう。

容器
1,容器2の気体のモル数を,容器1,容器2の気体の体積とします。
 ・・・@
また、状態A (),状態Dにおいては、 ・・・A
状態
B,状態Dにおいては、 ・・・B
以下、状態
ABCDにおいて、の値が変化することに注意してください。

1 状態Aにおいて、
容器状態方程式 ・・・C
容器状態方程式 ・・・D
C÷Dより、
@より、
Dに代入すると、
......[]

2 状態Bにおいて、
容器状態方程式 ・・・E
容器状態方程式 ・・・F
F÷Eより、
Bより、
 ・・・G
Fに代入して、
1の結果より、

これと@を連立して、
Gに代入して、 ......[]

3 状態Bと状態Cの違いは、圧力だったものがに変わったことで、G式は状態Cにおいても成立します。
容器状態方程式
1の結果より、

これと@を連立して、
Gに代入して、
Bより、
......[]

4 ABにおいて、装置内の気体の体積変化は、
1の結果を用いて、
......[]
容器内の気体の体積変化は、
......[]

5 BCにおいて、装置全体では定積変化なので、気体は外部に対して仕事をせず、
......[]
容器内の気体の体積変化は、
......[]

6 状態Dにおいて、
容器状態方程式 ・・・H
容器状態方程式 ・・・I
H÷Iより、
Aより、
 ・・・J
Iに代入し、
1の結果を用いて、

これと@を連立して、
Jに代入して、
CDにおいて、気体の体積変化は、
1の結果を用いて、
DAは、装置全体では定積変化で、気体のした仕事は、
......[]
CDにおいて、容器内の気体の体積変化は、
ピストンに気体がした仕事は、
DAにおいて、容器内の気体の体積変化は、
ピストンに気体がした仕事は、
また、
として、
......[]

7 状態ABCDのいずれにおいても、高温の熱源は容器内の気体にを放出し続けていて、低温の熱源は容器内の気体から熱を奪い続けていることに注意します。問題文のヒントは、の移動が容器から容器への気体の移動に伴って起こることを指摘していると考えてください。
容器熱力学第一法則を考えると、状態Aから始まって状態Aに戻ってくるので、1サイクルでの内部エネルギーの変化は0です。1サイクルで容器1内の気体がした仕事は問6Yです。よって、熱力学第一法則より、装置が高温の熱源から受け取る熱量Qは、
......[]

8 装置の効率ηは、気体が外部にした仕事を高温熱源が供給したで割って、
......[]


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