早大理工物理'09年[3]
空間に固定された無限に長い2本のレールがある。レールはx軸に平行である。このレールにそって運動する質量Mの物体Aを考える(図1)。物体Aは5つのなめらかな面をもつ。面1は2辺がレールに平行な長方形で、かつ、y軸に垂直である。面2は面1とのなす角がθ の斜面である。面3はx軸に垂直である。残りの2つの面はそれぞれ面1に垂直である。
y軸の負の方向に一定の速さvで運動する質量mの粒子Bが物体Aに衝突する。衝突は弾性衝突とする。粒子Bと物体Aとの間の摩擦、および重力は無視する。このとき、以下の問いに答えよ。
まず、物体Aがレールに固定された状況を考える。
問1 粒子Bが物体Aの面2に衝突するとき、粒子Bは面2に垂直な力積を受ける。力積の大きさをPとし、粒子Bの衝突後の速度のx成分とy成分をそれぞれ,として、とPの関係式、およびとPの関係式をそれぞれ書け。 問2 衝突の前後で粒子Bの運動エネルギーが保存されることを用いて、Pを求めよ。答はv,m,θ のうち適当なものを用いて表せ。
つぎに、物体Aがレールにそって自由に動ける状況を考える。レールと物体Aとの間の摩擦は無視する。
問3 速さVでx軸の正の方向に動いている物体Aの面2に粒子Bが衝突するとき、問1と同様に、粒子Bは面2に垂直な力積を受ける。このとき、粒子Bが受ける力積の大きさを求めよ。答はv,V,m,M,θ のうち適当なものを用いて表せ。 問4 速さVでx軸の正の方向に動いている物体Aの面3に粒子Bが衝突するとき、粒子Bは面3に垂直な力積を受ける。この力積の大きさを求めよ。答はv,V,m,M,θ のうち適当なものを用いて表せ。 さらに、粒子Bと同じ粒子が空間に一様に分布しており、それぞれがy軸の負の方向に一定の速さvで運動し、物体Aと衝突する状況を考える(図2)。単位体積あたりの粒子数をnとする。物体Aの質量Mが粒子の質量mよりも十分に大きく、さらにnが十分に大きいとき、多数の粒子の衝突によって生じる平均の力により、物体Aはなめらかに運動する。このときの物体Aの運動について考える。粒子と物体Aとの衝突はすべて弾性衝突とする。レールと物体Aとの間の摩擦、粒子と物体Aとの間の摩擦、および重力は無視する。また、粒子同士の衝突、および粒子とレールとの衝突も無視する。このとき、以下の問いに答えよ。
問5 物体Aがx軸の正の方向に速さVで動いているとき、時間の間に粒子が物体Aの面2に及ぼす平均の力のx成分を,面3に及ぼす平均の力をとする。物体Aの質量は粒子の質量よりも十分に大きく()、さらに時間は十分に短いため、間の物体Aの速さは一定とみなせる。の間に物体Aの面2、および面3に衝突する粒子の数をそれぞれ,として、,をそれぞれ求めよ。答はm,v,V,,,,θ のうち適当なものを用いて表せ。 問6 ,をそれぞれ求めよ。ただし、面2の体積をSとする。答はv,V,n,,θ,Sのうち適当なものを用いて表せ。 問7 十分に時間がたつと、物体Aは初速度によらずにx軸の正の方向に等速度運動をするようになる。物体Aの質量は粒子の質量よりも十分に大きいとして()、このときの物体Aの速さを求めよ。答はvとθ を用いて表せ。
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解答 ‘95年[1]でも出題された斜衝突をテーマとする問題ですが、高難度の上にボリュームもたっぷりで、試験時間内に解ききることは無理ではないかと思います。
入試問題としては問3までで充分で、問3にしても、誘導をつけなければ、解答に至るために十分な立式をすることは困難ではないでしょうか。
なお、衝突・合体・分裂の問題を参照してください。
問1 粒子Bが受ける力積のx成分は,y成分はです。運動量の原理より、x方向について、 ......[答] y方向について、
......[答]
問2 衝突の前後で粒子Bの運動エネルギーが保存される(エネルギーの原理を参照)ので、 ・・・@ 問1の結果を用いて、
, これらを@に代入し、をかけて、 ∴ 粒子Bは面2に垂直な力積を受けるので,よって、 ......[答]
問3 衝突後の粒子Bの速度の大きさをu,面2に垂直な方向となす角をφとすると、斜面に沿う方向には力積を受けないので、粒子Bの速度の斜面に沿う方向の成分は衝突前後で変化せず、
・・・A 粒子Bは面2に垂直な力積(大きさ)を受けるので、面2に垂直な方向について、運動量の原理より、 ・・・B 粒子Bが面2に垂直で大きさの力積を受けるということは、物体Aはこれと等大逆向きの力積を受けるということです(作用反作用の法則を参照)。物体Aが受ける力積は、粒子Bが受ける力積の反作用の水平成分に等しく、大きさは,向きはx軸正方向です。物体Aに関して、x軸方向の運動量の原理より、 ・・・C 衝突時点で系に仕事をする外力は存在せず、衝突前後の系の運動エネルギーは保存され、
・・・D A,Bより、
・・・E Cより、
・・・F E,FをDに代入して2倍すると、
整理して、
をかけて、 粒子Bは面2に垂直な力積を受けるので,よって、 ......[答] 注.Cは系のx軸方向の運動量保存を意味しますが、y軸方向では、レールが物体Aに及ぼす垂直抗力が働くので、系の運動量は保存しないことに注意してください。
問4 衝突後の粒子Bの速さをu,粒子Bの速度がx軸正方向となす角をφとすると、そのx成分は,y成分はです。 粒子Bは面3に垂直な方向に大きさの力積を受けるので、x軸方向の運動量の原理により、 ・・・G 粒子Bはy軸方向には力積を受けないので、粒子Bの速度のy軸方向成分は変化せず、
・・・H ・・・I 衝突時点で系に仕事をする外力は存在せず、衝突前後の系の運動エネルギーは保存され、
・・・J G,Hより、
・・・K G,Iより、
・・・L K,LをJに代入して2倍すると、
整理して、
をかけて、 粒子Bは面2に垂直な力積を受けるので,よって、 ......[答]
問5 問3,問4の,は粒子1個が面2から受ける力積の大きさで、物体Aは粒子1個からこれの反作用となる力積を受けます。面2、面3に衝突する粒子が個、個ある場合には、物体Aの面2,面3が受ける力積の大きさは,となります。 よって、個の粒子が面2に及ぼす平均の力のx成分をとして、とすると、 ∴ ......[答]同様に、個の粒子が面3に及ぼす平均の力は、 ∴ ......[答] (の向きはx軸負方向)
問6 問題文の説明が少々足りませんが、ここは問5の結果を用いて,を求めるのではなく、問7のために、問5の,を粒子の密度nを用いて表すことが目標です。 時間の間に物体Aはx軸方向に移動するので、面2に衝突する粒子の個数は右図の黄色着色部分に存在する粒子の個数です。この部分の体積は、底面積Sで、高さが右図よりなので、です。よって、 ......[答] 面3に衝突する粒子の個数は右図の水色着色部分に存在する粒子の個数です。この部分の体積は、です。よって、 ......[答]
問7 物体Aが等速度運動をするとき、物体Aに水平方向に働く力のつりあいより、 問5,問6の結果より、
,より、 ∴ ......[答]
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