新潟大理系数学'08年[2]
Aは,かつをみたす2次正方行列とする。ただし、,である。このとき、次の問いに答えよ。
(1) 実数tに対して、積およびを求めよ。 (2) 行列Aおよびはともに逆行列をもたないことを示せ。 (3) が逆行列をもつためのtに対する必要十分条件を求めよ。また、tがその必要十分条件をみたすとき、逆行列を求めよ。
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解答 行列の成分をもちだしてなどとしては大変なことになってしまいます。Aのまま考えていくことが大切です。
(1) より、 ......[答] ......[答]
(2) 行列Aに対し、をみたすBが存在すればBがAの逆行列です。 ・・・@ をみたす行列Bが存在すると仮定します。
@両辺に左からAをかけると、
・・・A と@より、 よってAより、
となり、に反します。よって、@をみたすBは存在せず、Aに逆行列は存在しません。 ・・・B をみたす行列Cが存在すると仮定します。
B両辺に左からAをかけると、
・・・C より、Cの左辺は零行列ですが、するととなり、に反します。よって、BをみたすCは存在せず、に逆行列は存在しません。
(3) または のときは、(2)より、は逆行列をもちません。 より、は逆行列をもちます。
よって、が逆行列をもつための必要十分条件は、 “ かつ ” ......[答] かつ のとき、 ......[答]
追記.来年度の入試を見据えて、この問題をもう少し一般的に考えてみます。
xの多項式を多項式で割る計算は、数の割り算と同様にして実行できます(多項式の除算を参照)。
しかし、行列の多項式を多項式で割ることはできません。行列には除算がないからです。そこでで割る代わりに(存在すればですが)をかけることを考えます。
そのためには、行列の多項式が与えられたときに、どうやって逆行列を求めるかが問題になります。
Aが2次の正方行列である場合(ではない,つまり、の形ではないとします)には、ハミルトン・ケーリーの定理:
・・・@ が成立します。従って、行列Aの2次式であって、であるものが必ず存在します。をで割ることができないので、代わりに、をで割って商が,余りがになるとします。
です。ここに、は2次式なので、余りは1次式であり、p,qを実数として、
と書くことができます。行列は、かけ算ならできるので、xをAに入れ替えた式:
が成立します。なので、
なり、が次数の大きな多項式であっても、Aの1次式で表すことができます(これが、「次数下げ」と呼ばれる技巧です)。すると、を求めるということは、
() ・・・A を求めることに帰着します。
のときは、であっては存在せず、,のときは、であってです。
Aで、,としたものが本問です。
@を利用して、,つまり、
と書けていたとします。Aでとおいて、本問(1)と同様にして、
これがEの定数倍の形になるとよいのですが、そのためには、より、,つまり、
が必要です。このとき、
tの2次方程式(行列Aの固有方程式):
・・・B が実数解をもたない、即ち、判別式:
であれば、t がどんな実数であってもが存在しますが、
の場合には、t がBの解以外の値をとるときにが存在します。
が存在するときには、
・・・C となります。
例えば、,, ・・・D が成り立つときに、
・・・E をみたすXを求めたいとします。
とDより、
Cで、,, (,)として、
Eの両辺に、
(∵ ) をかけて、
となります。
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