慶應大学理工学部2010年数学入試問題


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[A1](1) 平面上の2つのベクトルを満たしている。このとき、の内積であり、のなす角θ である。ただし、である。
(2) 関数における最小値はであり、最大値はである。
(3) 数列
()
を満たしている。この数列の一般項は、で与えられる。
また、である。
[解答へ]



[A2] 1234の番号が1つずつ書かれた4個の玉と1つの袋があり、番号1の玉だけが袋に入っている。この状態から始めて、
「袋から玉を
1個取り出し、その玉の番号を確認してから、次のルールに従い1個または2個の玉を袋に加える」
という作業を何回か続けて行う。
    ルール
取り出した玉の番号を
kとする。
(T) k4でないとき
@
番号の玉が袋に入っていなければ、取り出した番号kの玉を袋に戻し、さらに番号の玉を袋に加える。
A
番号の玉が袋に入っていれば、取り出した番号kの玉だけを袋に戻す。
(U) k4のとき、取り出した番号4の玉だけを袋に戻す。

(1) 上の作業を2回続けて行うとき、2回目に取り出す玉の番号が1である確率と2である確率はともにである。
(2) 上の作業を3回行うとき、取り出す玉の番号が3回とも1である確率はであり、取り出す玉の番号が順に123である確率はである。また、3回目に取り出す玉の番号が1である確率と2である確率はともにであり、3である確率はである。
(3) 上の作業を4回続けて行うとき、4回目に取り出す玉の番号が3である確率はであり、4である確率はである。
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[A3] 座標平面上において、以下の設問(1)(2)(3)のように図形Sと点Pを考える。図形S上を点Qが動くとき、線分PQの長さの最小値をと表す。
(1) 方程式の表す図形をSとする。点Pについてである。また、を満たす点P全体が描く図形は、不等式
の表す領域と一致する。
(2) 方程式の表す図形をSとする。点Pについてである。また、を満たす点P全体が描く図形の面積はである。
(3) 2つの式
の表す図形をSとする。を満たす点P全体が描く図形を図示しなさい。
[解答へ]



[A4] 正の整数nkに対して、x3次関数
を考える。3次方程式が相異なる3つの実数解をもつような正の整数の組を見つけたい。
の導関数をとする。が相異なる
3つの実数解をもつならば、の相異なる実数解の個数は個でなければならない。これより、nkの満たす不等式
 ・・・@
が得られる。
次にとおくと、も相異なる
3つの実数解をもたなければならない。これより、@を得たのと同様にして、nkの満たす不等式
 ・・・A
が得られる。
正の整数
nを与えるとき、連立不等式@,Aを満たす正の整数kをすべて求めると
3つである。に対して、方程式を考えると、これはnに無関係に定まる解nを用いて表される2つの解
3つの実数解をもつ。
[解答へ]



[B1] aを正の定数とし、座標平面上の曲線Cと直線lを考える。
(1) 曲線Cと直線lがただ1つの共有点Aをもつとき、定数aの値と点Aの座標を求めなさい。求める過程も書きなさい。
(2) (1)のとき、曲線C,直線l,およびy軸で囲まれる図形をy軸のまわりに1回転してできる回転体の体積Vを求めなさい。求める過程も書きなさい。
(3) a(1)で求めた値より小さい正の定数とする。このとき、直線lは曲線Cと共有点をもたない。点Pが曲線C上を動き、点Qが直線l上を動くとき、線分PQの長さが最小となるのは、点Pの座標がのときである。この点Py軸上にあるのはのときであり、このとき最小の線分の長さを求めるととなる。
[解答へ]


各問検討

[A1](解答はこちら) 数年前から易化傾向が続いていましたが、ことしの慶大理工は、どうしてしまったのかと言いたくなるような易しさです。問題の組み合わせとしても、首をひねりたくなるのですが、合格した受験生に話を聞いても、試験場で時間を持て余してしまう人が多かったようで、戸惑いがあったようです。慶大薬の方が遙かに高レベルの問題を出していて、こうした出題を続けるのであれば、慶大理工は並の中堅大学に落ちてしまうのではないかと危惧してしまいます。出題形式も、空所補充の割合が年々多くなってきていて、論述力・構想力は必要ない、という状況になっており、慶大理工からしてこれでは、今後、日本の技術力を担う優秀な人材を確保できるのか心配です。
もちろん、本問のような教科書の例題レベルの基礎問題の小問集合を入試問題中に含めることにも意味はあると思いますが、それにしても、東京理科大の小問集合と比較して、大きく見劣りします。有名進学校の生徒の中には、これなら高校の定期試験の方が大変だ、と、思う生徒もいるのではないでしょうか。出題なさる先生には、難し過ぎた
2000年頃に戻せとは言いませんが、せめて早大理工と肩を並べるレベルを維持し、論述部分をもう少し増やすなど、再検討をお願いしたいと思います。


[A2](解答はこちら) 慶大理工の問題だから、一筋縄ではいかないはず、と思っていると損をしてしまう問題です。
本問でまず着目すべきところは、問題文の
(1)(2)(3)で、作業回数が、2回、3回、4回となっていて、作業回数がn回となっていないところです。これで、この問題が数列との融合問題などではなく、センター・レベルの問題だとわかります。こうなってしまえば樹形図を描いて、全ての場合について数えてしまえばよい、数え漏れに要注意、ということになります。



[A3](解答はこちら) 解答にも書きましたが、本問は、論述問題だとすると、どう答案を書いていくか、少々悩むかも知れませんが、空所補充形式の問題なので、図形S上の点と点Pの距離がいつ最小になるか、ということを考えれば、即座に解答できるでしょう。論述問題だとしたらどうするか、ということも解答の追記に書いておきました。
図形
S上の点と点Pの距離の最小については、「図形と方程式」分野の基本ができていれば、教科書レベルの知識で充分に解答可能です。難関大学の受験とは言っても、まずは、教科書の例題を確実に解けるようなところから始めるようにしよう、ということが言えます。



[A4](解答はこちら) 本年の5題の中では、この問題だけが、従来の慶大理工の雰囲気を残しています。他の4題のケアレス・チェックを念入りに行った上で本問を完答できていれば、合格を確信してよいと思います。本年の慶大理工は、この問題だけ、と、言ってもよいでしょう。
とは言っても、本問も数学Uの微分の基礎事項がつかめていれば、充分に解答可能な問題です。
3次方程式が相異なる3実数解を有する必要条件は、2次方程式が相異なる2実数解をもち、3次関数が極大・極小を有することです。さらに、極大値と極小値が異符号であれば、必要十分条件となります。これは、教科書にも書かれていることです。
解答の
()の部分がわかりにくいかも知れません。kが、
 ・・・()
を満たすことがわかるのですが、この形ではkがどんな正整数値をとるのか即断はできません。そこで、両側の値の各々がどんな値なのか、整数値と比較してみると、左側は、
を満たすので、連続2整数、の間の実数であり、右側は、
より、
を満たすので、連続2整数、の間の実数、ということになります。であれば、()を満たす正の整数kを全て求めると、
ということになります。
この部分が少々工夫を要するのですが、
nに適当な整数を入れてみるとかすれば、空所補充問題なので、上記のようなことをせずとも切り抜けられるはずです。
のときのの解も、高次方程式を解くときの常套手段で、,・・・,と代入して行けば、すぐにという解が見つかるので、因数定理を用いて因数分解してしまえばよく、本問も容易に完答できます。




[B1](解答はこちら) 慶大理工からして、こんな入試問題で良いのか、と、思ってしまう2010年入試ですが、本問もまた、意義が不明な問題です。
(1)(2)で「求める過程も書きなさい」とは言っても、論証問題ではなく単なる計算問題で、論述させる、というイメージではありません。入試問題としてよく知られた技巧を使うだけの問題で、着想力・構想力の必要な問題でもなく、考える要素も見られません。本年の慶大理工の問題は、慶大理工の受験生は言われた通りに作業できればよいので、創意工夫をする必要などはない、とでも言いたげです。これで、日本の科学技術の国際競争力が保てるのでしょうか?
(3)では、[A3]と同一趣旨の問題を出題していますが、[A3]を発展的に応用する、というわけではなく、同じことを繰り返すだけで、まるで、曲線上の点との距離の最小値の求め方だけを勉強した受験生を優遇したいかのように見えます。最近、学力低下が言われていて、京大・東工大も易化の傾向にありますが、残念です。



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