京大理系数学'96年前期[5]

xy平面上の正三角形△ABCを考える。△ABCの重心は原点Oにあり、ベクトルの長さは1とする。△ABCの内部または辺上の点に対し、3頂点ABCから1点を等確率で選び、この頂点との中点をとする。次に点に対して同様の操作を行い得られた点をとし、以下この操作を繰り返して、点,・・・,を作る。ベクトルの長さの2の期待値をとおく。
(1) をベクトルの長さを用いて表せ。
(2) 選んだ頂点が,・・・,のとき、ベクトルをベクトルを用いて表せ。
(3) が原点Oのときを求めよ。


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解答 現行数学Aの確率では範囲外になっていますが、「和の期待値は期待値の和」という技巧が功を奏する問題です。

まず、「和の期待値は期待値の和」を証明しておきます。
変数
Xn通りの値 ()をとり、変数Ym通りの値 ()をとるとします。
また、事象が起こる確率,事象が起こる確率とします。

XY期待値は、
です。ここで、abを定数として、の期待値を考えてみます。のとりうる値は、 ()です。
事象となる確率は、となる
ijのすべての組み合わせについて、を加え合わせたものです。この和を
と書くことにします。ijが、を動くとき、がとり得る値を,・・・, (互いに相異なる)とします。
()として、事象と,事象とは、排反です。従って、の期待値を求めるために、のとりうる値すべてについての和をとると、
 (がとりうる値すべてにわたって和をとると、Xのとりうる値、Yのとりうる値のすべてにわたって和をとることになります。しかも、排反なので、重複はできません)


 (です)

これを繰り返し使えば、n個の変数がある場合でも、,・・・,を定数として、
 ・・・()

本問に戻ります。

題意より、

 ・・・@ (ベクトルの内分・外分を参照)
 ・・・A
(1) 3頂点ABCから1点を選ぶとき、
(i) Aを選ぶと、
 (内積を参照)
 ( A)
(ii) Bを選ぶと、
 ( A)
(iii) Cを選ぶと、
 ( A)
よって、

......[] ( @)

(2)

・・・・・・
として、
よって、帰納的に、
......[]

(3) (2)の結果において、が原点Oのとき、より、

 (ここで、は、kを、jを除いて1からnまで動かしたときの和を表すことにします)
ここで、上記の()を使います。「和の期待値は期待値の和」より、
の期待値をの期待値をとして、
 ・・・B
ここで、は、の確率でをとることから、
 ( @)
は、の確率でをとり、これと独立に、の確率でをとることから、
 ( @,)
よって、Bより、
 (等比数列を参照)
......[]


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