慶大医物理'08年[3]
図1に示すように、平面と凸面からなる凸レンズの凸面と平板ガラスを接触させ、単色光を垂直に照射した。レンズ凸面Aおよび平板ガラス面Bからの反射を観測したところ、同心円状の模様(ニュートンリング)が見られた(図2)。レンズの厚みは、中心からの幾何学的距離をyとするとで表される。ここでLはレンズの中心部分の厚み,Rは凸レンズの曲面の曲がりの大きさを表す定数である。実験は空気中で行い、空気の屈折率を,平凸レンズおよび平板ガラスの屈折率をn,光の波長をλとする。
問1 レンズと平板ガラスの接点Cにおける反射光強度はどのようになるか述べよ。
問2 ニュートンリングは、面A,Bから反射した光の干渉により生じる。面Aと面Bが接触していなくても、両者の間隔がλよりも十分に小さければ、反射光強度が接触している場合とほぼ同じになる。このことから、ニュートンリングの中心(点Cの近傍)において、面Aから反射した光と面Bから反射した光の位相はどのような関係になっているといえるか。
問3で求めた ()の位置に幅の狭い同心円状の光を通す部分(開口部)を持つ模様板を作製した(図4)。中心の開口部を,次の開口部をのように順に番号をつける。この模様板に単色光を垂直に入射したところ、開口部を通過した光の一部分は縞模様の中心から距離fのx軸上の点Fに集光した(図5)。模様板の厚みは無視してよいものとする。
問5 光は波面上の各点を波源とする素元波が干渉により強め合う方向に伝搬する。光の伝搬に関するこの原理の名称をあげよ。
問6 平面波を模様板全面に垂直に入射した。このとき、m番目の開口部(点D)で発生した素元波に注目する。この素元波は半球状の波となり、一部分はx軸上の点Fに到達する。この素元波の経路長DFをm,R,λ,fを用いて表せ。
問7 m番目の開口部からの素元波の経路長DFと、番目の開口部(点G)からの素元波の経路長GFとの差がmに関係なく一定値λになるfを求めよ。ただし、fはより十分に大きいとして、hの絶対値が1よりも十分に小さいときに成り立つ近似式を用いよ。 問8 模様板に垂直に入射した平面波が問7で求めた点Fに集光する理由を述べよ。
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解答 ニュートン・リングの基本問題ですが、フレネルの式を使う問4は無理です。ひょっとすると問1から連想できるはず、という意図なのかも知れませんが、できなくても気にすることはありません。個人的には、理工系学部ならともかく、医学部の入試問題として賛成しかねます。
この問題では、レンズの厚みが、中心からの幾何学的距離をyとするとになることが問題文中で与えられているのですが、ここから聞かれることが多いので、この理由を書いておきます。
右図のように、平凸レンズの凸面と平板ガラスとのすき間の距離をdとすると、三平方の定理より、
展開して整理すると、
ここでdはRに比べて充分小さいとして、を無視すると、
∴
レンズの厚みは、
ニュートン・リングは、平凸レンズ内からすき間の側に出て行こうとして反射する光と、すき間に透過し平板ガラス表面で反射する光が干渉することにより、明暗の輪となって見える現象です。
平凸レンズ内からすき間の側に出て行こうとして起こる反射は、屈折率の大きい方から小さい方に透過しようとして起こる反射なので固定端の反射となり位相がπずれますが、すき間に透過し平板ガラス表面で起こる反射は、屈折率の小さい方から大きい方に透過しようとして起こる反射なので自由端の反射となり位相はずれません(波の反射を参照)。結果的に、両反射光の間には位相差πが生じ、強め合う条件と弱め合う条件が入れ替わります(波の干渉を参照)。
平板ガラス表面で反射した光はだけ余計に進むので、両反射光の間の経路差はです。
弱め合う条件は、経路差を波長の整数倍として、
() この条件をみたすyをとすると、
・・・@ となり、半径の暗輪が観測されることになります。
すき間に屈折率nの液体を流し込んだような場合には、光路差は経路差の屈折率倍となるので、弱め合う条件は、
() この条件をみたすyをとすると、暗輪の半径は、
・・・A となります。
問1 教科書的には、上記@より、では弱め合う条件が成立し、 反射光の強度はゼロになる。 ......[答]
と答えておけばよいと思います。問4を意識するなら、反射光が存在しないので、ということになります。
問2 点Cの近傍において、面Aから反射した光と面Bから反射した光の位相は、
(ほぼ)πずれている。 ......[答]
問3 上記@より、
......[答]
問4 位置については、液体の屈折率と無関係に弱め合う条件が成立し、反射光の強度はゼロのままです。グラフは、@ ......[答] 位置については、Aによると、液体の屈折率を変化させた場合に、弱め合う条件は、 となり、この条件が成立するは、 () です。これからすると、グラフはAを選択したくなります。しかしながら、における反射光の強度は、Aでの反射波: (位相がπずれている) と、Bでの反射波:
との干渉による合成波:
の振幅の2乗に比例するので、,のところでは、横軸に接する感じになるはずで、Aでは合わないのです。
実は、異なる屈折率の媒質の境界面で電磁波の反射波、透過波の振幅を与える「フレネルの式」というのがあり、屈折率n,の媒質の境界面に垂直に入射する場合の反射波の振幅は、 となることが知られています。反射波の強度は、この2乗に比例するので、
に比例することになり、では、そもそも反射光が存在しません。屈折率が一様な媒質中を光が直進していく感じになります。
従って、干渉によって弱め合う条件が成立する,以外に、においても、強度がゼロになるBのグラフを選択することになります。B ......[答]注.フレネルの式は、ずっと以前に入試問題でも見かけたことがあるように記憶しますが、高校の教科書には出てきません。電磁波を解とする電場と磁場に関するマクスウェルの方程式の境界条件から出てくる式で高校の範囲をはるかに超えます。この問題でBを選択させるのは無理というものです。
恐らく、問1で接点Cを扱い、問2で接点Cの近傍を扱っているところからすると、出題者は、問1で、ニュートン・リングの中心で暗くなるのは干渉によるのではなく(干渉は、すき間が存在する接点Cを除く部分で起こる。これが問2)、ずっとガラス中を光が透過するので反射光が存在しないことによるのだ、と、気づかせて、問4でも、なら反射光が存在しなくなる、と、させたいのだろうと思いますが、そもそも、高校の教科書のニュートン・リングの記述で接点を特別扱いにして記述しているものはないと思います。そうでなくても医学部入試は難関なのに、これでは、公正公平な入試とは言えなくなってしまいます。
問5 ホイヘンスの原理 ......[答]
問6 三平方の定理より、問3を用いて、
......[答]
問7 とおいて、
......[答]
問8 問7より、隣接開口部より来る光の経路差が波長λとなり強め合うから。 ......[答]
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