京大物理'06年前期[3]
次の文を読んで、 には適した式を、また{ }からは正しいものを選びその番号を、それぞれの解答欄に記入せよ。
(1) 一般に熱の出入りを伴わない状態変化を断熱変化と呼ぶが、気体の断熱変化では、変化の各段階で平衡状態が実現しているならば、という関係が成り立つ。べき定数γ は気体の種類によって異なるが、必ず1より大きい値をもつ。以下では、空気に対するべき定数を、γ と表す。 空気は断熱性がよいので、大気中の空気のゆっくりとした移動は、断熱変化とみなすことができる。いま、こうした断熱変化をくりかえした結果、大気の圧力や温度は、高度によって決定されているとしよう。また、空気1molあたりの質量をwとし、この値は高度によらず一定とする。このとき、地表の気温を絶対温度で(以下、温度はすべて絶対温度とする),気体定数をR,地表における空気の密度をとすれば、地表における大気の圧力は あ で与えられる。また、ある高度における大気の温度をTとするとき、その高度での大気の圧力は い ,密度は う と表される。 (2) さて、大気が上に述べたような状態にあるときに、熱気球を飛ばすことを考えてみよう。気球は断熱性の布でできており、気体の部分を除いた気球の質量はMである。最初、気球は空気は入っていない体積0 (ゼロ)の状態であった。飛ばないように気球を固定し、気球の下部が開いた状態で、外気を熱して温度にした空気を体積 え だけ詰めたところ、気球は浮かび始めた。さらに続けて、温度の空気を気球の体積がVになるまで入れた。このときの気球内の空気の物質量は お molである。また、空気の定積モル比熱をとすると、気球内に入った空気には、もとの大気の状態から か の熱が加えられ、内部エネルギーは き だけ増加したことになる。 (3) ここで、気球の下部を閉じ、固定をはずして気球を飛ばしたところ、ある高度まで上がって静止した。気球内の空気の温度と体積Vが変化しないとすると、この高度での大気の温度は く である。さらに、気球の下部を開き、体積はVのまま気球内の空気の温度を け にしたとき、気球の高度は変わらなかった。このときの気球内の空気の温度は、。
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解答 (1)(あ) 地表において大気n[mol]が体積の空間に存在して密度がになるとすると、その質量について、 ∴ 地表における大気圧をとして、状態方程式: ・・・@
∴ ......[答] ・・・A
(い) 問題文の「大気中の空気のゆっくりとした移動は、断熱変化とみなすことができる。いま、こうした断熱変化をくりかえした結果、大気の圧力や温度は、高度によって決定されているとしよう。」という表現をどう考えるかですが、重力加速度が与えられていないので、(上空の気体の圧力による力)+(地表から上にある気体に働く重力)=(地表の大気圧による力)と考えることはできません。 ということは、この問題文中のヒントを、地表の気体が上空に移動して、その際、断熱変化したとして考えよ、というヒントとして考えることにします。温度Tの高度における大気の圧力をp,大気n[mol]の体積をV,密度をρとします。この高度での気体の状態方程式:
∴ 一方@より、
問題文中に与えられている断熱変化における、という関係(ポアッソンの関係式)を用いると、 ......[答]
(う) (あ)を求めたのと同様に考えて、
・・・C ......[答]
(2)(え) Cにおいて、Rは定数ゆえ、pとwが一定の場合、 ・・・(*) です。 気球が浮かび始めたときの気球内の密度を,体積をだとします。このとき、気球下部が開いているので、気体の圧力は大気圧です。(*)より、
∴ ・・・E ((う)の結果は断熱変化をしている場合、Eは定圧変化の場合)重力加速度をgとして、気球が浮かび始めたとき、気球に働く力は、上向きに働く浮力,気体の部分を除いた気球に働く重力(下向き),気球内の気体に働く重力(下向き)です。
これらの力のつり合い(気球が浮かび上がる瞬間にはまだ力のつり合いが成立しています)より、 Eより、
......[答]
(お) 気球内の気体の体積がVになったとき(気球の下部が開いているので、圧力はのまま)、気体の物質量をn[mol]だとして、 気体の状態方程式:
∴ ......[答]
......[答]
(き) 内部エネルギーの増加は、
......[答]
(3)(く) 気球の体積はVのままなので、気球内の気体の密度はのままです。気球が静止したとき、この高度での大気の密度をρとして、気球に働く力は、浮力(上向き),気体の部分を除いた気球に働く重力(下向き),気球内の気体に働く重力です。 これらの力のつり合いより、
Eより、
∴ ・・・F 一方気球が静止した高度における大気の温度をTとすれば、DとFより、 両辺を乗して、 ・・・G ∴ ......[答]
(け) 気球の下部を開くと気球内の気体の圧力は、この高度での気体の圧力pになります。気球内の気体の温度をとします。また、このとき、気体の体積はVのままなので、定積変化になります。 気球の下部を開く前の気球内の気体の圧力は、気球の下部を地表で閉じたときの圧力のままです。下部を開いても、気球に働く力のつり合いが成立しているので、気球内の気体の量はn[mol]のまま変化しません。気球内の気体について、
下部を開く前の状態方程式: ・・・H
下部を開いた後の状態方程式: ・・・I
I÷Hより、 ・・・J
Bを用いて、
Gを用いて、 ......[答]
(こ) 題意より、です。 また、気球の固定をはずして気球が飛び上がったということは、
よって、
従って、(け)の結果において、より、
A ......[答] (この結果、Jより、上空に行くほど圧力が小さくなることがわかります)
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