京大物理'10年[2]
以下の(1)と(2)の には適した式を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、 はすでに で与えられたものと同じ式を表す。また、問1〜問3では、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。
(1) 図1(a)に示すように、xyz空間に電場が加えられている。この電場は、図1(b)に示すように、周期をTとして時間的に変化している。最初の半周期にはy軸の正の向きに大きさの電場が、次の半周期にはy軸の負の向きに大きさの電場が加えられる。加えられる電場は、空間的には一様である。質量がmで正の電荷qをもつ荷電粒子Pが、時刻tがで原点()にある。この粒子Pは、y軸方向の電場によって加速度運動をするが、この運動のようすはで粒子Pに与える初速度によって異なる。重力の影響は無視できるとする。
(1a) において粒子Pは原点に静止しているものとする。のときには、粒子Pはy軸の正の向きに加速される。での粒子Pの速度のy成分と座標yはそれぞれ イ と ロ で表される。のときには、粒子Pは、での速度のy成分 イ と座標 ロ を初期値としてy軸の負の向きに加速される。のとき、粒子Pの速度のy成分を時刻tの関数として表すと ハ となる。そのときの粒子Pの座標yも時刻tの関数として表すことができる。それらの結果から、 ()での粒子Pの速度のy成分は0であるが、粒子Pは時間の経過とともに原点から離れていくことがわかる。
問1 以上の結果をもとに、における粒子Pの速度のy成分を時刻tの関数としてグラフに示せ。グラフ中にはにおける速度のy成分の値を記入せよ。また、における粒子Pの座標yと時刻tとの関係を表す曲線の概要をグラフに示せ。ただし、グラフ中ににおける座標yの値を記入する必要はない。
(1b) において、粒子Pの速度のx成分とz成分をとして、速度のy成分を適切な値にすれば、時間が経過しても粒子Pが原点から遠く離れていかないようにすることができる。そのとき、およびでの粒子Pの座標yがともにになり、またでの速度のy成分がのときと同じ値である。この条件は、での粒子Pの速度のy成分が ニ の場合に満たされる。このとき、における粒子Pの速度のy成分は− ニ となる。 のときには、粒子Pはでの速度と座標を初期値としてy軸の負の向きに加速される。のときの粒子Pの速度のy成分を時刻tの関数として表すと ホ となる。そのときの粒子Pの座標yも時刻tの関数として表すことができる。
問2 以上の結果をもとに、における粒子Pの速度のy成分を時刻tの関数としてグラフに示せ。グラフ中にはにおける速度のy成分の値を記入せよ。また、における粒子Pの座標yと時刻tとの関係を表す曲線の概要をグラフに示せ。ただし、グラフ中ににおける座標yの値を記入する必要はない。
(2) 図2(a)に示すように、xyz空間に電場または磁場が加えられる。これらの電場と磁場は、図2(b)に示すように、周期をTとして時間的に変化している。最初の半周期にはy軸の正の向きに大きさの電場のみが、次の半周期にはz軸の正の向きに磁束密度の大きさの磁場のみが加えられる。加えられる電場や磁場は、空間的には一様である。質量がmで正の電荷qをもつ粒子Pがで原点()にある。 最初に、のときの粒子Pの運動が(1b)の場合と同じになるように、での粒子Pの速度のx成分とz成分をとして、速度のy成分を ニ とする。
一方、のときには、磁場の影響を受けて大きさが ヘ のローレンツ力が粒子Pに作用する。このため、粒子Pはxy平面内で円運動を始める。この円運動の中心はx軸上にあり、そのx座標は ト で与えられる。このとき、円運動の半径は磁束密度の大きさに応じて変化するが、の間に粒子Pが運動する軌跡の長さは チ となり、磁束密度の大きさによらない。
いま、磁束密度の大きさを リ に選ぶと、粒子Pは、の間にxy平面内で円軌道を半周した後、において再びのときと同じ速度のy成分 ニ と座標をもつようにすることができる。このとき、粒子Pのx座標は ヌ となる。それ以降の ()のときには、粒子Pは、y軸方向にはのときと同じ運動を行い、x軸方向には原点から離れていく。
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
解答 電磁気の基本と、等加速度運動、円運動との融合問題です。以下の問1,問2では、速度のy成分だけでなくy座標についても計算式を求めた上でグラフを書いていますが、実戦的には、計算なしで感覚的にグラフを描きたいところです。
細かいことですが、問2問題文中の「グラフ中ににおける座標yの値を記入する必要はない。」のは、問題文中でと指定されているので、の間違いではないかと思われます。
(リ)が何をすれば良いのか、少々悩むかも知れません。円運動の半周の長さ(チ)が2通りに表されることを利用します。
(1)(1a)(イ)において、 y軸正方向の電場は電荷qをもつ粒子Pに、y軸正方向に大きさの力を及ぼします(電界を参照)。粒子Pの加速度をaとして、運動方程式: ∴ (よって、粒子Pの運動は等加速度運動)等加速度運動の公式より、における粒子Pの速度のy成分は、 ......[答] において、速度のy成分を時刻tの関数として表すと、 ・・・@ y座標を時刻tの関数として表すと、
・・・A
(ロ) Aより、における粒子のy座標は、 ......[答]
(ハ) においては、電場の向きが逆になり、加速度がとなるので、粒子Pの時刻tにおける速度のy成分は、 ......[答] ・・・B 時刻tにおけるy座標は、
問1 における-t グラフは、とを結ぶ線分です。における-t グラフは、,を結ぶ線分です。以後、 ()における-tのグラフは、におけるグラフの繰り返しになります。 におけるy-t グラフは、を頂点とする下に凸な放物線、におけるy-t グラフは、を頂点とする上に凸な放物線です。以後、におけるy-t グラフは、におけるグラフを平行移動したグラフになります。における両グラフを図示すると、右図実線。 (1b)(ニ) における速度のy成分をとして、時刻t ()におけるy座標は、
におけるy座標がになるとして、 ∴ ......[答]において、となるので、このとき、における粒子Pの速度のy成分について、 より、におけるy座標も、問題文にあるように、 となります。
(ホ) における速度のy成分は、加速度がとなるので、 ......[答]
問2 における速度のy成分がになると、における-t グラフは、問1の-t グラフを軸負方向にだけ平行移動したグラフになります。また、 以後、 ()におけるy-t グラフは、におけるグラフの繰り返しになります。
における両グラフを図示すると、右図実線。
......[答]
(ト) 粒子には中心方向のローレンツ力のみ働き、円の接線の方向には力が働かないので、粒子の運動は等速円運動です。円運動の半径をrとして、粒子の運動方程式は、 ∴ 円運動の中心のx座標はrに等しく、 ......[答]
(チ) 一定の速さで時間運動するので、軌跡の長さは、 ......[答]
(リ) 時間で粒子が半周するので(チ)の結果はに等しく、 ∴ ......[答]
(ヌ) 円軌道を半周してとなったときのx座標は、 ......[答]
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
京大物理TOP 物理TOP TOPページに戻る
【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。
各問題の著作権は
出題大学に属します。©2005-2024(有)りるらる 苦学楽学塾 随時入会受付中!理系大学受験ネット塾苦学楽学塾(ご案内はこちら)ご入会は、
まず、こちらまでメールを
お送りください。