京大物理'12[3]

次の文章を読んで、  には適した式を、  には適切な語句をそれぞれの解答欄に記入せよ。  はすでに  で与えられたものと同じ式を表す。また、問1〜問3については、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。1に近い量は、微小量ε,・・・,に対して成り立つ近似式
および
を用いて、
1(微小量)の形に表せ。以下では「重力」という言葉は「万有引力」と同じ意味である。また、地球の自転は無視する。

(1) 1のように、宇宙空間で図の上方に向かって、一定の加速度aで引っ張られている箱を考える。箱に固定された点Aにある振動数の光源から、上方に距離hだけ離れた点にある検出器に向けて光の信号を送る。ここでは、上下方向の運動のみを考え、ベクトルである量は上を正の向きとする。
光が光源を出たときの箱の速度を,検出器に到達したときの箱の速度をとすると、検出器が受け取る光の振動数の比は、ドップラー効果の公式より、

となる。
(を用いて表せ。)ここで、の大きさは光速(光の速さ)cに比べて十分小さいとし、を微小量として上記の近似式を用いた。(ここでは、物体の速さは光速に比べて非常に小さいため、時間の遅れや物差しの縮みといった、いわゆる特殊相対論的な効果は無視してよい。)
光が光源を出てから検出器に到達するまでの時間をt とすると、at を用いて い と書ける。もし、箱の速度が常にゼロであれば、t chを用いて う と書ける。箱が加速を受けている場合も、光が伝わる間、箱の速度が常に光速に比べて十分小さいとき、すなわち、がみたされている場合は、 う としてよい。以上のことから、となることがわかる。光の振動数を考える代わりに、光源から短い時間間隔をおいて出た2つのパルスが、検出器に到達するときにはどれだけの時間間隔(とする。)になっているかを考えることもできる。振動数f の光を、単位時間にf 個のパルスが出るという状況に置き換えてみると明らかなように、( え )と書けることがわかる。(hacを用いて表せ。)

(2) ところで、図1のような等加速度運動をしている箱の中にいる観測者から見ると、物体には通常の力の他に観測者の加速度運動からくる お 力が働き、見かけの重力加速度 か が生じる。(図の上向きを正として答えよ。)このようにして生じる見かけの重力と本物の重力が何ら変わりないというのが、アインシュタインの等価原理である。
たとえば、地球の中心からの距離がrである点における地球による重力加速度は、地球の外では、向きは き であり、大きさは く である。(r,地球の質量Mおよび重力定数Gを用いて表せ。)これは、場所によって向きも大きさも異なるが、任意の点のまわりで十分小さい領域を考えると、その中では重力加速度は一定とみなしてよい。その領域内での物理現象は、上のような等加速度運動をしている観測者が見るものと全く同じである。
そうすると、図
2の点線内のように、重力加速度が下向きで大きさβ が一定と見なせる領域内で、高さがhだけ異なる2つの地点ABの間で光をやり取りするとき、Aにおける時間間隔Bにおける時間間隔の間には( け )の関係があることがわかる。(βhcを用いて表せ。)

1 ここまではAからBへ光を送ることを考えたが、逆にBからAへ光を送る場合もは上の近似の範囲で同じ値となる。その理由を簡潔に述べよ。

この結果は、重力がある場合は、場所によって時間の進み具合が違っていることを示している。すなわち、Aにおいて時間が経過する間に、Bではだけ時間が経過するのである。これを、「Aにおける時間Bにおける時間が対応している」ということにしよう。今の場合は、なので、時間の流れはBにおけるほうが、Aにおけるより速い。

(3) 上の結果を、2つの地点における重力ポテンシャルを使って表そう。質量mの粒子が他の物体から重力を受けているとき、その位置エネルギーはmに比例するのでと表せる。ϕを粒子が置かれている点における重力ポテンシャルと呼ぶ。
2の場合には、ABにおける重力ポテンシャルをそれぞれ、とすると、βhを用いて、 こ と書ける。結局、cを用いて、( さ )と表される。実はこの式は、1に比べて十分小さければ、重力加速度が空間的に一定でなくてもなりたつ。
それを見るための具体例として、図
3のように地表上の点Aと、そのLだけ上空の点Bを考える。地球の半径をRとし、線分ABN等分する点を,・・・,とする。(便宜上、とする。)各点における重力ポテンシャルをとする。Nが十分大きければ、各区間では重力加速度は一定としてよいから、における時間における時間が対応しているとすると、をみたす。

2 これらのN個の式の辺々をかけ合わせ、( さ )が成り立つことを示せ。

次に、 さ を地表における重力加速度の大きさgRLcで表すことを考える。地球の外側にあり地球の中心から距離rだけ離れた点に、質量mの粒子を置いたときの重力の位置エネルギーは、無限遠を基準に取ると、mrMGを用いて し で与えられる。よって、その点における重力ポテンシャルは、である。一方、地表における重力加速度の大きさgと書けるから、gRLを用いて、 す と表せる。これらを さ に代入すると、結局、( せ )であることがわかる。(gRLcを用いて表せ。)

(4) この結果は、人工衛星の中の時計と地表の時計の進み方の違いを与えるために重要であり、GPS(全地球測位システム)等で実際に使われている。図4のように、地球の重力により、高度Lの円軌道上を一定の速さvで動いている人工衛星Cを考える。図3と同様に、ABは地表の点およびそのLだけ上空の点である。今の場合、CBに対してかなりの速さで動いているため、時計の遅れといわれる特殊相対論的な効果も考慮する必要がある。
特殊相対論によると、Bにおける時間Cにおける時間の間には、という近似式が成り立つ。Bにおける重力加速度の大きさはと書けるから、gRLを用いて表せることに注意すると、これは、( そ )と書ける。(gRLcを用いて表せ。)

3 人工衛星の中の時計と地表の時計の進み方の比はである。以上のことから、gRLcを用いて表せ。また、としたときの1(微小な数値)の形で求めよ。


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解答 誘導に乗って解答すればOKですが、ボリューム満点です。

(1)() 速さで上に動く音源Aが出す振動数の光を速さで上に動く観測者B振動数と観測することになります。ドップラー効果の公式より、
 ・・・@

......[
]
() 等加速度運動の公式より、
......[]
() 箱の速度が常にゼロであれば、光は光速cで進むので、t は、
......[]
() より、
......[]

(2)() 慣性 ......[] (慣性力を参照)
() 加速度aで加速度運動している観測者から質量mの物体を見ると、加速度と逆向きに慣性力が働いているように見えて、見かけの重力加速度が生じます。
......[]
() 地球の中心から距離rのところに位置する質量mの物体には、地球の中心に向かう大きさ万有引力が働きます。
地球による重力加速度は、向きは、
地球の中心方向
......[]
() 大きさは、
......[]
() ()の結果でとして、
......[]

1 BからAへ光を送る場合、速さで遠ざかるBが発する光の振動数として、速さで近づくAで観測される光の振動数は、ドップラー効果の公式より、
@と比べると、ABが入れ替わり、符号が−から+に変わります。
今度は、となり、です。
()()と同様に近似を行って式変形すると、
となり、()と同じ結果が得られます。
ABが入れ替わるとき、ドップラー効果の式中の符号と速度の差の符号がともに逆になるので、近似するとも同じ値になる。 ......[]

(3)() AB高さの差はhなので、鉛直下向きの重力加速度の大きさβが一定であるとして、位置エネルギーの差は、

......[
]

() ()()の結果を用いて、
......[]

2 問題文の近似式を用いると、1に比べて十分に小さいので、

,・・・,より、


() 地球の中心から距離rだけ離れた点に、質量mの粒子を置いたときの重力位置エネルギーは、無限遠を基準に取ると、
......[]
() Aにおける位置エネルギーは、

......[
]
() Bにおける位置エネルギーは、
問題文中にある通り、
 ・・・A
......[]

(4)() 人工衛星Cに働く,人工衛星C運動方程式は、

これを問題文に書かれている関係:に代入し、
......[]

3 ()の結果にAを代入して、

......[]

......[]
......[]
......[]


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