原子核   関連問題


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まず、原子の構造、原子核の構造が明らかになる過程を見ておきましょう。

放射性元素ウランの存在は、ガラスの着色剤として古くから知られていましたが、ウラン単体の発見は
18世紀後半、単体分離の成功は19世紀中葉です。1896年フランスのベクレルが、ウランが放射線を出すことを発見しました。2年後には、マリー・キュリー夫妻が、ウラン鉱石からポロニウムとラジウムを分離して、自然崩壊する元素の存在が確認されました。ニュージーランド出身のイギリス人物理学者ラザフォードは、ラジウムから放射される放射線にはα線、β線の2種類があり、α線の正体がヘリウム原子核であること、自然崩壊する元素にはnを自然数として質量数が3種類の崩壊系列があることを指摘しました。質量数のの系列が発見されるのは人工核変換が可能になったずっと後のことです。また、1913年、ラザフォードの共同研究者だったイギリスのソディがα崩壊では原子番号が2減り、β崩壊では原子番号が1増えることを示しました。

放射線量を計測するガイガー管を後に開発するガイガー
(当時はラザフォードの助手)と大学生マースデンがラザフォードの指導の下に1909年に行った実験によって、原子の構造が明らかになってきました。
二人は、ラジウムから放出された
α線を金(原子量が大きい)の原子核に衝突させ、α線がほとんど通過する中に鋭く大きく反跳するものがあることを確かめました。この散乱状況を解析したラザフォードにより、J.J.トムソンが提唱していたスイカ型原子モデルは否定され、α線と原子内の正電荷との間に大きなクーロン力が働くことから、原子内の正電荷は原子の中心(原子の半径5万分の1程度の部分)に集中して存在する、というラザフォードの原子モデルが、1911年、新たに提唱されました。このモデルは、現在でもほぼ妥当と考えられていますが、当時の電磁気学の理論では、原子核の周囲を円運動する電子が、どうして電磁波を放射してエネルギーを失い原子核の正電荷に落ち込んでいかないのか、説明できませんでした。
この謎は、
1913年のボーアの原子模型により解決しますが、ラザフォードはさらに実験を続け、窒素にα線を当てて水素ができることから、1919年に窒素原子核内に正電荷をもつ粒子が存在することを結論し、水素の原子核を陽子と命名します。この核変換は、
 (は陽子、つまり水素原子核)
というものでした。
一方、既に幾つかの放射性原子の中には、同一の性質をもつのに質量が異なるものが存在することがわかっていましたが、安定なネオン原子にも
2種類の質量のもの(ソディによって「同位体」isotopeと命名されました)が存在することを、1913年、J.J.トムソンが発見しました。その後、数多くの同位体が知られるようになりましたが、原子番号が同じなのに質量数が異なる同位体の説明のために、1920年、ラザフォードは、陽子と電子が結合した無電荷粒子の存在を予言し、「中性子」と呼びました。1932年、ラザフォードの助手をしていたチャドウィックがベリリウムにα線を当て、飛び出してくる粒子が中性子であることを確認しました。この反応は、
 (は中性子)
でした。中性子は陽子とほぼ同一の質量を持つ電気的に中性な粒子でした。こうして、原子核は陽子と中性子が結合したものであることがわかりました。同年、ハイゼンベルクは、陽子と中性子は到達距離の短い強い力(核力)によって結合している、という論文(ハイゼンベルクは電子が核力を媒介すると考えた)を発表し、これを読んだ京都大学の湯川秀樹は、電磁気力は電磁波を通して伝わる、即ち光子を介して伝わる、のと同様に、核力を伝える媒介粒子があるに違いないと考え、この粒子を中間子と呼び電子の質量の200倍の質量をもつことを予測し、1935年、中間子理論を発表しました。1947年になって、宇宙線の中から湯川が予測した中間子が発見され、湯川は戦後間もない1949年に日本人初のノーベル賞を受賞しました。
他方、
1935年に連鎖反応を起こすウラン235が発見され、さらに1941年に米国でプルトニウム239が発見され、広島と長崎に投下された原子爆弾の材料となってしまったことは、原子核物理学の負の遺産と言わねばなりません。

上記に述べたように、原子核は
陽子(記号:p)中性子(記号:n)によって構成され、ほぼ半径の球の中で核力によって結合しています。陽子と中性子を合わせて核子と言います。原子を種類を示す原子番号Zは、原子核内の陽子の数です。原子核内の中性子の数をNとすると、原子核の質量数A (核子の数)は、
となります。このとき、上記ののように、元素記号Xの原子核の種別を表すのに、
という書き方をします。陽子1個からなる水素原子核は,陽子2個中性子2個からなるヘリウム原子核はのように書きます。水素には、陽子1個、中性子1個からなる重水素と、陽子1個、中性子2個からなる三重水素 (トリチウム)という同位体があります。ヘリウム原子には陽子2個、中性子1個からなるという同位体があります。
原子核は様々な反応を起こします。

という反応では、ベータ崩壊を除き、陽子数(原子番号)、核子数(質量数)の和は反応前後で変化しないので、
が成立します。

陽子の質量は、
中性子の質量は、
電子の質量は、
なのですが、後述するように核子が結合するときに結合エネルギー分だけ質量が減ってしまうので、例えばヘリウム原子核の質量は、ほぼ水素原子核の
4倍には違いないのですが、にはならず、になってしまいます。陽子1個と中性子1個の質量も微妙に異なります。
そこで、原子や核子の質量を考えるのに、がつかないように
原子質量単位というものを使います。
炭素原子は、核子が
12個入っている質量数12の原子核と電子12個からなります。そこで、炭素原子の質量を12で割った質量を1[u]として、
 ・・・@
を単位として質量を考えます。この単位では、
陽子の質量は、
中性子の質量は、
電子の質量は、
となります。水素原子の質量は、陽子
1個の原子核の質量と電子1個の質量の和として、になります。重水素原子の質量は、で、よりも小さくなるのですが、この減少分
 ・・・A
質量欠損と言います。
水素の同位体の存在比率は、
99.9885%,0.0115%なので、水素原子の平均質量は、
となり、この値を水素原子の原子量とします。他の原子も同位体の存在比率を考慮して原子量を決めます。の原子量は12ですが、天然には99%を占めるの他に1%が存在するので、炭素の原子量はになります。炭素原子1molの質量はになります。

上記の質量欠損は、アインシュタインの相対性理論から得られる、

 (E:エネルギー、m:質量、c:光速) ・・・B
により、エネルギーに転換されます。重水素原子の質量が、陽子1個、中性子1個、電子1個の質量の和より小さくなる質量欠損分は、@,A,Bより、
 ・・・C
のエネルギーとして重水素原子核に蓄えられます。このエネルギーを結合エネルギーと言います。仮に、重水素原子核を陽子と中性子に分離しようとすると、のエネルギーを加える必要があります。
核融合発電に利用される核融合反応、

 ・・・D
を考えてみます。重水素原子核の質量は原子の質量2.01410[u]から電子1個を除いて2.014100.0005492.01355[u],三重水素原子核の質量は3.0155[u]で、D左辺の和は5.02905[u]です。ところがD右辺は、ヘリウム原子核の質量4.00205[u]と中性子の質量1.00866[u]の和は5.01071[u]にしかなりません。この反応で、質量が0.0183[u]減少します。この質量欠損から、Bにより、
 ・・・E
のエネルギーが発生します。

Bの関係式によると、質量とエネルギーは等価になるので、質量をエネルギーの単位で表すことがあります。
[J]単位では、のような数がついてしまうので、電子1個を1[V]の電圧で加速したときのエネルギー1[eV] (eVはエレクトロン・ボルトと読みます)という単位を用います。

 ・・・F
重水素原子の質量欠損、即ち結合エネルギーは、Cより、
 ・・・G
になります。また、核融合反応Dにおける質量欠損分のエネルギーは、
です。仮に1molの重水素(2g)1molの三重水素(3g)を反応させると、アボガドロ数個の原子核があるので、
という膨大なエネルギーを得ることができます。1世帯当たり年間の平均電力消費量
 ・・・H
なので、100世帯分の年間電力消費を賄えてしまいます。Dは太陽で起きている反応の一つで、核融合発電は「人工太陽」とも言われます。但し、Dの核融合反応では、正電荷を有する重水素原子核と三重水素原子核をクーロン力に逆らって衝突させる必要があり、両原子核にクーロン力に打ち勝つエネルギーを与えるために数億度程度の高温環境を作る必要があります。

右図に核子
1個あたりの結合エネルギーを、横軸に質量数(核子の数)をとって描いたおおよそのグラフを示します。
核子
1個あたりの結合エネルギーは、重水素ではGより、,質量のヘリウムでは、前述しましたがであって、質量欠損は、
6.69516.6465
で、これはBより27.3[MeV]にあたり、4個の核子があるので核子1個あたりになります。
右図では、のところにピークができますが、これは、
2個の陽子と2個の中性子の結合が強く極めて安定で、3個の4個のが安定になるためです。放射線としてα線が出てくるのもヘリウム原子核が安定だからです。右図で右側の方に行き質量数が大きくなると原子核の中性子の割合が増えてきます。これは、陽子同士にクーロン力の斥力が働くため、中性子が緩衝材の役割をして核力による結合を助けているためと考えられています。
また、右図を見ると、質量数
56のところでピークになることがわかります。核子1個あたりの結合エネルギーは原子の安定度の指標とも言えるので、が最も安定な原子であることを意味します。従って、よりも小さな原子核では原子核同士融合した方が安定になり、よりも大きな原子核では原子核が分裂した方が安定になります。核反応によりエネルギーを取り出すためには、小さな原子核では核融合反応によって、質量数56より大きな原子核では核分裂反応によって、エネルギーを取り出すことになります。
恒星の一生もこれで説明できます。宇宙空間に漂う水素が重力によって集まりある程度の密度になったところで核融合反応を起こして輝き始めます。恒星の誕生です。水素同士が融合してヘリウムなどの軽い元素が合成されます。誕生後
46億年経過と考えられている太陽はこの状況にあります。ヘリウムが増え水素の割合が減ってくると、温度が下がるとともに膨張し、赤色巨星(オリオン座ベテルギウス、さそり座アンタレスなど)と呼ばれる星になります。さらに核融合が進むとある程度の大きさの恒星では、ヘリウム同士も核融合によって、炭素、窒素、酸素のような質量数の大きな元素に変換されていきます。質量が大きな恒星では、中心部分がさらに高温になり、炭素や酸素が核融合して、より大きな原子核ができてきます。最終的に鉄が生成されるとそれ以上は核融合は進まず、中心部の圧力が下がって収縮し、重力崩壊を起こして超新星爆発(最近では1987年大マゼラン星雲内で起こり、肉眼でも観察可能でした。この時発生したニュートリノが岐阜県のカミオカンデで観測されました。牡牛座のかに星雲は1054年の超新星爆発の残骸で、藤原定家の「明月記」に天喜二年の記録として残されています)に至り中性子星やブラックホールになるものもあります。

質量数の大きな原子核、のような元素は放射線を出して自然に崩壊し、他の元素に変わっていきます。これを
放射性崩壊と言います。また、こうした放射線を出す性質を放射能と言います。このときに出る放射線には、α線,β線,γ線などが知られています。上記のように、α線は、正電荷を有する原子核の流れです。β線は、負電荷を有する電子の流れです。γ線は、周波数が高く極めて短波長の電磁波で高いエネルギーを持ち電荷を持ちません。磁界をかけると、γ線は直進しますが、α線とβ線は電荷を持つので、ローレンツ力を受けて軌道が曲がります。電子の方がヘリウム原子核よりも軽いので大きく曲がります。電荷の正負が異なるので曲がる方向も反対方向です。こうして磁界をかけることにより放射線を分離できます。α線,β線,γ線を出す崩壊をそれぞれ、α崩壊β崩壊γ崩壊と言います。それぞれ、崩壊するときの質量欠損分の大きなエネルギーを、,電子、光子が持って飛び出してくるので、人体が放射線を受ける際には大きな危険が伴います。1999年に茨城県東海村で核燃料製造に従事していた作業員3名が、バケツでウラン溶液を流し込む、というずさんな作業中にウランが臨界に達してしまい高レベルの中性子線を被曝、2名が染色体破壊によって死亡する事故がありました。2006年には反体制派ジャーナリストが放射性のを飲まされて暗殺されるという事件も起きました。α線は、電離作用は大きいのですが紙1枚程度で止めることができます。β線は、物質に及ぼす影響は小さくなりますが透過力は大きく、薄い金属板で止めることができます。γ線は、透過力が非常に強く、厚い鉛の板でないと止められません。α崩壊は、例えば、
のような崩壊ですが、ヘリウム原子核が陽子2個、中性子2個を持って飛び出すので、からまで、原子番号が92から90まで2減り、質量数が238から234まで4減ります。β崩壊は、例えば、古代に作られた遺物の年代測定に使われる反応、
 (:電子、:反電子ニュートリノ)
のような崩壊ですが、原子核内で、
という反応が起きていると考えられています。β崩壊では、原子核内の中性子1個が電子1個を放出して陽子1個に変わるので、質量数は変化せず、原子番号が1増えます。γ崩壊では、原子核内の過剰なエネルギーが光子として放出されるのみで、質量数、原子番号に変化は起きません。

前述したようにウランは自然崩壊します。自然界に多く存在するは半減期
45億年で現在では自然ウランの99.3%を占めています。一方で同位体のは半減期7億年で自然ウランの0.7%です。45億年前、地球ができた頃の存在比はどうだったのでしょうか?
半減期
Tの放射性原子核が最初に個あったとして、時間t の後に原子核がN個になっていたとします。時間の間に崩壊する原子核の個数は、現時点での原子核の個数Nに比例するので、比例定数をとして、
のときとして、
,積分して、 ∴
のときとして、 ∴
半減期がTより、のとき
よって、 ∴


これが半減期を考えるための公式です。
45億年前、個,個あったとします。はちょうど半減期分の時間を経ているので、現在数は個、の現在数はそのほぼ0.007倍で個,なので、について、

地球ができた頃のの存在比は、
310
と推定できます。

放射性元素の多くは、ほぼ決まった過程を経て放射性崩壊を繰り返し、安定な元素へと変化していきます。この過程を
崩壊系列と言います。この過程は、複数回のα崩壊とβ崩壊を経るので、入試でも、崩壊系列の先頭の元素と終わりの元素を与えて崩壊の回数を答えさせる鶴亀算の問題が出題されます。また、α崩壊では質量数が4減り、β崩壊では質量数が変化しないので、各系列では質量数を4で割った余りが変化せず、自然な核分裂の系列は以下の4種に分かれます。崩壊系列の遷移図ではα崩壊を下向きの矢印で、β崩壊を右上向きの矢印で書いてあります。同一種の元素が横に並びます。崩壊系列の過程に出現する元素に、半減期の長い元素と半減期が極めて短い元素とがあり、半減期の長い元素は自然界に残存している可能性が高くなります。

右図に
トリウム系列の遷移図を示します。を先頭として安定なに至る系列です。質量数が232から208まで減少するので、回のα崩壊を起こします。α崩壊だけでは原子番号が減るはずですが、しか減らないので、回のβ崩壊が起こります。つまり、からまでに6回のα崩壊と4回のβ崩壊を経由します。崩壊過程途中の元素の質量数は全て4の倍数なのでこの系列を系列と言うこともあります。また、の半減期が140億年と地球の寿命45億年に対して長いので、現在でも天然に起こっている崩壊過程です。トリウムに至る前の元素も判明していますが半減期が短く、を先頭元素と考えます。

右図に
ウラン系列の遷移図を示します。を先頭として安定なに至る系列です。回のα崩壊と回のβ崩壊を経由します。崩壊過程途中の元素の質量数は全て4で割ると2余る数で、この系列を系列とも言います。先頭のの半減期は45億年で、ほぼ地球の寿命と同程度なので地球ができた頃からまだ半数のが残っており、現在でも天然に起きている崩壊過程です。

右図に
アクチニウム系列の遷移図を示します。を先頭として安定なに至る系列です。先頭はウランですが遷移の過程でアクチニウムを経るのでアクチニウム系列と言います。回のα崩壊と回のβ崩壊を経由します。崩壊過程途中の元素の質量数は全て4で割ると3余る数で、この系列を系列とも言います。先頭のの半減期は7億年でかなり長く、この崩壊過程も現在でも天然に起きている崩壊過程です。

右図に
ネプツニウム系列の遷移図を示します。ネプツニウムを先頭として安定なに至る系列です。回のα崩壊と回のβ崩壊を経由します。崩壊過程途中の元素の質量数は全て4で割ると1余る数で、この系列を系列とも言います。先頭のの半減期が214万年と地球の寿命に対して短いため、この系列は長らく発見されず、1941年、に重水素原子核や中性子を照射することにより(長崎に投下された原子爆弾の材料)(自然崩壊してになる)などが人工的核変換によって作られ、ネプツニウム系列は1947年になって発見されました。

現在の原子力発電はの核分裂反応を利用しています。は半減期が長く、なかなか自然崩壊しませんが、中性子を当てると
2つに割れる反応を起こします。この際に中性子を何個か出すので、この中性子をまた次のに当てることにより連鎖反応を起こし巨大なエネルギーを得ることができます。例えば、
の反応では、,中性子の質量は、235.0439[u]140.9139[u]91.8973[u]1.0087[u]です。質量欠損は、
放出されるエネルギーは、@,Bより
仮に1mol (235[g])を反応させると、
前述のように、
1世帯当たり年間の平均電力消費量Hはなので、1200世帯分の年間電力消費をまかなうことができます。
前述したように、現在では天然ウランはほぼ
0.7%ほどしかありません。は中性子を吸収してになりやすくの連鎖反応を止めてしまうので、核燃料とするために濃度を5%程度にまで濃縮する工程が必要です。また、原子炉内で中性子を吸収したとなりさらに2β崩壊してできるプルトニウムも核分裂を起こしてエネルギーを出します。原子炉内では、が多いため、核分裂するよりも生成するの方が多く、がたまってきます。は核兵器の材料になってしまうため、大量のを溜め込むと国際的な非難を浴びます。そこで、を何らかの方法で処分する必要があり、に混ぜて原発の材料(MOX燃料と言います)にしようという動きがあります。MOX燃料を燃やす原発をプルサーマル方式と言いますが、の毒性が強く住民の反対運動もあって日本では進んでいません。また、天然に多く存在するを利用するために、原子炉内に溜まってくるの核分裂によって発電すれば、核分裂するよりも燃料となるの方が多く生成されて経済的メリットがある高速増殖炉という方式もありました。ですが、残念ながら日本では、敦賀市にあった「もんじゅ」という高速増殖炉で冷却剤のナトリウムが漏出火災事故を起こし、その後も事故と不明朗な管理が繰り返され廃炉となってしまいました。高速増殖炉によって、プルトニウム型核爆弾の材料が低コストで得られるため、ロシア、中国では稼働または建設中と言われています。
大きなエネルギーが得られる核分裂型原子力発電ですが、放射能の管理とともに、大きな問題点を抱えています。のような巨大原子核では、ちょうど
2分割するように分裂するわけではなく、原子核が振動していてひょうたんのような形になったときにくびれた部分で2個にちぎれて分裂するようなイメージの核反応をします。従って、どのように2個に割れるのかが予測不可能です。例えば、次のような核反応を起こします。


さらに、こうして生成されたなどがまた放射性物質でさらに放射性崩壊して別の物質に転換して行きます。核分裂の際にBaKrができるものだけでも、


など色々です。
の反応で生成するは、
でやっと安定になります。
の反応で生成するは、
でやっと安定になります(となる反応を中性子捕獲、となる反応を電子捕獲と言います)。こうした多数の放射性物質を含む核のゴミは化学的に処理することは不可能です。広大な領土を有する国では過疎地域の地下奥深くに埋めてしまう、という処理もできますが、国土の狭い日本では、核のゴミをどこに廃棄するか極めて困難な問題です。また20113月の東日本大震災の際に起きた東京電力福島原発事故では、周辺地域が居住不可能になっただけでなく、倒壊した原発内に残った核燃料の処理、という大問題があります。平安時代の貞観地震の研究者が堤防を作るように事前に警告していたのにもかかわらず、貞観地震級の津波を想定外として警告を無視してしまった当時の東京電力経営者の態度には残念と言わざるを得ません。


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