東大物理'08年前期[3]
図3−1のように、十分な高さLをもった、断面積Sの円筒容器にnモルの気体を入れて密閉し、気体の絶対温度を一定の値Tに保つ。このとき、一様な重力の作用下では、気体の密度は容器の底に近いほど大きく、密度に勾配のある状態になる。容器の底から測った高さをz,単位体積当たりの気体のモル数をcとすれば、cはzの関数とみなすことができ、関係式
(*)
がよい近似でなりたつ。ここで、は高さの差であり、αは高さzによらない比例係数である。は十分小さいものとする。また、気体1モルあたりの質量をm,気体定数をR,重力加速度の大きさをgとする。
T 容器内の気体を理想気体とみなして、以下の問に答えよ。
(1) 高さzにおける気体の圧力をとする。を,TおよびRを用いて表せ。 (2) 図3−2のように、高さzの位置にある、厚さ,断面積Sの気柱に注目する。ここで、高さz,における気体の圧力はそれぞれ,である。また、気柱内のの変化は十分小さく、気柱内の気体のモル数はで与えられるものとする。この気柱にはたらく鉛直方向の力のつり合いを表す式を与えよ。 (3) 上の(1),(2)の結果から、関係式(*)の係数αをm,g,TおよびRを用いて表せ。
(4) 気体の温度が一様に13℃の場合に、単位体積あたりの気体のモル数cが0.10%減少するような高さの差を求めよ。ただし、気体1モルあたりの質量は,気体定数は,重力加速度の大きさはとする。 (5) 容器の底と上端での単位体積あたりの気体のモル数の差をm,g,T,R,nおよびSを用いて表せ。
U 図3−3のように、軽くて変形しない小さな物体を容器内の気体の中に入れておいたところ、やがて高さの位置で静止した。物体の体積をv,質量をMとして、以下の問に答えよ。 (1) 高さにおける単位体積あたりの気体のモル数をM,vおよびmを用いて表せ。 (2) 物体が高さ ()にあるとき、物体にはたらく力Fの大きさをM,g,α,およびを使って表し、また、その向きを答えよ。ただし、は十分小さく、関係式(*)がなりたつものとしてよい。
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解答 この問題も第1問,第2問と同様、欲張った問題ですが、Uは変位に比例する大きさの復元力が働くので、単振動すると言いたいのでしょう。なお、理想気体を参照してください。
T(1) が単位体積当たりの気体のモル数なので、体積を1として、高さzにおける状態方程式は、 ∴ ......[答] ・・・@
(2) 高さzの位置にある気柱に働く力は、鉛直上向きに下側の気体が及ぼす力,鉛直下向きに上側の気体が及ぼす力,気柱の体積のモル数はで、この気体に働く重力が鉛直下向きに,よって、鉛直方向の力のつり合いの式は、 ......[答]∴ ・・・A
(3) 高さにおける状態方程式は、 ・・・B B−@より、
これとAより、
・・・C (*)式と比較して、
......[答]
(4) 0.10%=,Cより、 13℃=273+13=286≒Kより、 ......[答]
(5) とおくと、Cは、 ,として、 ・・・D 容器内の気体のモル数はnなので、
D両辺にSをかけての範囲で積分すると、 別解 円筒容器の高さLをN等分(Nは十分に大きな自然数)して、とおき、(*)で、とすると、 ・・・・・・
辺々加えて、Sをかけると、は微小体積で、容器内の気体のモル数はnだから、より、 と、(3)の結果より、 ......[答]
U(1) 物体に働く力は、鉛直下向きに重力,鉛直上向きに浮力,この2力のつり合いから、 ∴ ......[答]
(2) (*)よりにおける浮力は、(1)の結果より、 物体に働く力Fは、鉛直下向き(z軸負方向)を正として、
() 力Fの大きさ:,向き:z軸負方向 ......[答]
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