東大物理'11年前期[2]

電気製品によく使われているダイオードを用いた回路を考えよう。簡単化のため、ダイオードは図2-1のようなスイッチと抵抗とが直列につながれた回路と等価であると考え、Pの電位がQよりも高いか等しいときにはが閉じ、低いときにはが開くものとする。なお以下では、電池の内部抵抗、回路の配線に用いる導線の抵抗、回路の自己インダクタンスは考えなくてよい。

T 図2-2のように、容量Cのコンデンサー2個、ダイオード,スイッチS,および起電力の電池2個を接続した。最初、スイッチS側にも側にも接続されておらず、コンデンサーには電荷は蓄えられていないものとする。点Gを電位の基準点(電位0)としたときの点それぞれの電位をとして、以下の設問に答えよ。
(1) まず、スイッチS側に接続した。この直後のを求めよ。
(2) (1)の後、回路中の電荷移動がなくなるまで待った。このときの,およびコンデンサー1に蓄えられた静電エネルギーUを求めよ。また、電池がした仕事Wを求めよ。
(3) (2)の後、スイッチS側に切り換えた。この直後のを求めよ。
(4) (3)の後、回路中の電荷移動がなくなったときのを求めよ。

U 図2-2の回路に多数のコンデンサーとダイオードを付け加えた図2-3の回路は、コッククロフト・ウォルトン回路と呼ばれ、高電圧を得る目的で使われる。いま、コンデンサーの容量は全てCとし、最初、スイッチS側にも側にも接続されておらず、コンデンサーには電荷は蓄えられていないとする。
スイッチS側、側と何度も繰り返し切り換えた結果、切り換えても回路中での電荷移動が起こらなくなった。この状況において、スイッチS側に接続したとき、点と点の電位は等しくなっていた()。また、スイッチS側に接続したとき、点と点の電位は等しくなっていた()。スイッチS側に接続したときの点の電位Nで表せ。なお、点Gを電位の基準点(電位0)とせよ。


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解答 Tは教科書の例題レベルの問題です。試験会場で、壮大なUがコンデンサーの問題ではなくロジックの問題だと見破り易問だと感じた受験生は合格を確信できたでしょう。
以下では、ダイオードの等価回路で、
P電位Qよりも高いか等しいとき(が閉じる)を「順方向」、低いとき(が開く)を「逆方向」と言うことにします。

T(1) スイッチS側に接続した直後、充電されていないコンデンサーは導通したのと同じになるので、回路は等価的に右上図のようになっています。右上図より、電位G電位に等しく、電位電位に等しくなります。は順方向、は逆方向です。
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(2) 回路中の電荷移動がなくなるまで待ったときの回路は等価的に右下図のようになっています。右下図より、電位はともに電位に等しくなります。
......[]
コンデンサー1に蓄えられる静電エネルギーUは、
......[] (コンデンサーの過渡現象を参照)
コンデンサー1に蓄えられる電荷で、電池は電圧電荷を供給しているので、電池がした仕事Wは、
......[] (電位・電圧を参照)
(3) スイッチS側に切り換えた直後、充電されていないコンデンサー2は導通したのと同じになるので、回路は等価的に右上図のようになっています。右上図より、電位G電位より高く、電位電位に等しくなります。は逆方向、は順方向です。
......[]
(4) 回路中の電荷移動がなくなったときの回路は等価的に右下図のようになっています。コンデンサー1の上側の極板には最初、電荷が蓄えられていたので、右下図のように、コンデンサー1,コンデンサー2に蓄えられる電荷とすると、電荷保存より(合成容量の公式を参照)
キルヒホッフ第2法則より、
両式より、
 ∴
電位なので、
......[]

U スイッチSの切り換え、1回目、2回目、・・・、と各コンデンサーの電圧を調べて行きたくなるのですが、本問では、手に負えなくなります。
スイッチSの切り換えn回目の電位を求めるのではなく、「切り換えても回路中での電荷移動が起こらなくなった」状況で、電位を求めるので、この最終的な状況だけを考えることにします。
以後、点,・・・,における
電位,・・・,とします。
「スイッチ
S側に接続したとき、点と点電位は等しくなっていた()。また、スイッチS側に接続したとき、点と点電位は等しくなっていた()」という問題文のヒントについて考えてみます。
スイッチ
S側に接続したとき、点と点電位は等しくなっていた、ということは、電荷の移動がないのであれば、接続直後に、であったということです。なぜなら、であれば、間のダイオードが順方向にならず、にはなり得ないからです。つまり、スイッチS側に接続したとき、間のダイオードは順方向になっていて、ダイオード等価回路のスイッチが閉じており、電荷の移動が無く電流がゼロなので抵抗両端の電圧もゼロ、ダイオード両端の電位は等しい、ということになります。
また、にはならないので、間のダイオードは逆方向でダイオード等価回路内のスイッチは開いた状態にあります。この状況を右図に示します。
電荷の移動がない状況では、間のコンデンサーと間のコンデンサーとは()、両端の電位が等しいので、両端の電圧も等しくなります。
同様に、スイッチ
S側に接続したとき、点と点電位は等しくなっていた、ということは、間のダイオードは順方向でダイオード等価回路内のスイッチは閉じた状態にあり、電荷の移動が無く電流ゼロなのでダイオード両端の電位が等しくなるということです。
間のダイオードは逆方向になっていてダイオード等価回路のスイッチが開いた状態にあります。この状況を右図に示します。
電荷の移動がない状況では、間のコンデンサーと間のコンデンサーは()、両端の電位が等しいので、両端の電圧も等しくなります。
以上より、
電荷の移動がない状況では、G間のコンデンサーを除いて、全てのコンデンサー両端の電圧が等しくなります。最初からこの事実を直感できれば、本問は易問と言えるでしょう。答案には、
「スイッチSを切り換えても回路中での電荷移動が起こらない状況では、スイッチS側に接続したとき、間のダイオードが順方向で、間のダイオードが逆方向、スイッチS側に接続したとき、間のダイオードが順方向で、間のダイオードが逆方向となり、電荷移動が起こらなくなったとき、電流が流れず抵抗電圧はゼロで、間のコンデンサー以外の全てのコンデンサーの電圧は等しくなる。」
と書いておけば良いでしょう。
電荷の移動がない状況で、スイッチS側に接続したとき、間のダイオードは順方向で、G間のコンデンサーの電圧となり、電位は、です。
この後、スイッチ
S側に接続したとき、電荷の移動がないので、のままです。間のダイオードは順方向で、となります。電位なので、間のコンデンサーの電圧です。従って、G間のコンデンサーを除いて、全てのコンデンサー両端の電圧です。
Gからまで、電圧のコンデンサー1個と、電圧のコンデンサーが個直列に並ぶので、
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からまで、電圧のコンデンサーがN個直列に並び、電位なので、
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