東大物理'18年前期[3]
図3のように、鉛直方向に立てられた3つの円柱状の容器A,容器B,容器Cが管でつながれている。3つの円柱の断面積は等しく、全てSである。容器内には密度が一様な液体が入っており、液体は管を通して3つの容器の間を自由に移動できる。容器Aと容器Bの上端は閉じられ、容器Cの上端は開いている。容器Aの液面より上は何もない空間(真空)であり、容器Bの液面より上には単原子分子の理想気体が入っている。以下の設問に答えよ。ただし、気体と液体および気体と容器の間の熱の移動はないものとする。また、各容器の液面は水平かつ常に管より上にあり、液体の蒸発や体積の変化は無視できるものとし、容器Bの気体のモル数は常に一定であるとする。
T 最初、図3のように容器A,容器Bの液面が容器Cの液面に比べてそれぞれ,だけ高く、また容器Aの真空部分の長さがh,容器Bの気体部分の長さがであった。このとき容器Bの気体の圧力を、外気圧を用いて表せ。
U 図3の状態から、外気圧をに保ったまま、容器Bの気体にわずかな熱量をゆっくりと与えたところ、容器Bの液面がxだけわずかに下がった。 (1) 容器A,容器Cの液面はそれぞれどちら向きにどれだけ移動するかを答えよ。
(2) 容器Bの気体の体積、圧力、温度がからに変化したとする。体積と圧力の変化率,を、xとhを用いて表せ。 (3) 容器Bの気体がした仕事をWを求めよ。ただし、xはhに比べて十分小さく、容器Bの気体の圧力はで一定であるとして、に比例する項は無視してよい。 (4) 液体の位置エネルギーの変化をとする。は、容器Bの液面付近にある厚さx,断面積Sの液体が、容器A,容器Cの液面付近に移動したと考えることによって求められる。を,,x,h,Sのうち必要なものを用いて表せ。ただし、設問U(3)と同様に、に比例する項は無視してよい。 (5) Wとが等しいか等しくないかを答え、等しくない場合はその原因を簡潔に述べよ。
V 図3の状態から、外気圧をに保ったまま容器Bの気体に熱量をゆっくりと与えていったところ、ある時点で容器Aの液面がちょうど上端に達し、真空部分がなくなった。 (1) この時点での容器Bの気体の体積、圧力、温度は、熱量を与える前の値のそれぞれ何倍になっているかを答えよ。 (2) この時点までに容器Bの気体に与えられた熱量Qと温度変化の比を、容器Bの気体のモル数nと気体定数Rを用いて表せ。
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解答 目新しい設定の問題ですが、Uの検討結果をVで使うようになっています。本問は浮力の問題ではありませんが、同じ高さの位置で圧力が等しくなるという基礎事項、圧力や密度については、浮力を参照してください。
T 液体の密度をρとします。容器Cの液面の高さでの圧力を比較します。
容器Aでは、容器Cの液面よりも高い部分の液体の高さは,この部分に働く重力は,容器Aの、容器Cの液面の高さでの圧力はです。
容器Bの液面よりも高い部分の液体の高さは,この部分に働く重力は,気体の圧力が加わり、容器Bの、容器Cの液面での高さの圧力は,容器Cの上端は開いていて容器Cの液面での高さでの圧力はです。これらが等しいので、
U(1) 容器Bの液面の高さがxだけ下がった結果、容器Aの液面の高さが上昇し、容器Cの液面の高さがc上昇したとします。容器の断面積は等しいので、 ・・・B です。元の容器Cの液面の高さを基準として、変化後の容器Aの液面の高さは,変化後の容器Cの液面の高さはcになります。変化後、容器Aの液面は、容器Cの液面よりも、だけ高くなります。容器Cの液面の高さでの圧力が等しいので、@より、 ∴ Bより、です。つまり、容器A,容器Cとも液面は上昇します ......[答]
(2) 容器Bの気体のはじめの体積は,容器Bの気体の変化分は,よって、 ......[答] 元の容器Cの液面の高さを基準として、容器Bの液面の高さは、になり、容器Cの液面の高さはになっているので、変化後、容器Bの液面は、容器Cの液面よりも、だけ高い位置にあります。この部分に働く重力はであり、変化後の容器Cの液面の高さでの圧力を容器Bと容器Cで比較して、 @,Aより、
(3) 容器Bの気体の圧力をで一定として考えるので、より容器Bの気体がした仕事Wは、 ......[答]
(4) 右図で黄緑色の部分(厚さ)の液体が上昇し、橙色の部分(厚さ)の液体が下降したと考えると、液体の位置エネルギーの変化は、
(5) (3),(4)の結果より、となるのですが、容器Cの上端は開いていて、容器Cにおいて、液面が上昇することにより、外気に対して仕事をします。外気圧はなので、この仕事はです。 Wとは等しくない。原因:容器Cの上端が開いていて容器Cの液面は外気と接しており、外気に対してする仕事の分だけWが大きくなる。 ......[答]
V 容器Aの液面がちょうど上端に達した、ということは、Uにおいて,つまりだった、ということです。 (1) U(2)でと考え、とすると、 ∴ ・・・C よって、はの倍 ......[答]U(2)でと考え、とすると、 ∴ ・・・D よって、はの2倍 .......[答]容器Bの気体のモル数をn,気体定数をRとして、容器Bの状態方程式は、 熱量を与える前が、 ・・・E
熱量を与えた後が、 ・・・F F÷Eより、C,Dを用いて、
よって、はの3倍 ......[答]
(2) 熱力学第1法則よりですが、仕事W,内部エネルギーの変化を、(1)のを踏まえて以下では、で表す(従って,で表す)ことを考えます。 ここでは、容器Bの気体の圧力は変化しており、容器Bの気体の圧力が一定であるとして求めたU(3)は使えません。
U(5)の検討により、容器Bの気体がする仕事Wは、液体の位置エネルギーの変化と外気に対してする仕事の和です。
液体の位置エネルギーの変化は、U(4)の近似前の式でとすると、 外気に対してする仕事は、容器Cの液面がだけ上昇するので、U(5)よりです。Aより,またより、容器Bの気体がした仕事Wは、 (∵ E) また、容器Bの気体は単原子分子理想気体なので、内部エネルギーの変化は、(1)の結果を用いてより、 です。よって、
......[答]
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