東大物理'24年前期[3]

音波に関する以下の設問に答えよ。空気中の音速をVとし、風の影響は無視せよ。

T x軸正負の方向に音波を発生する音源が、一定の速さ ()x軸上を正の向きに運動している。音源の振動数はで一定である。時刻に音源はの原点Oを通過した。音源の大きさは無視できる。
3-1のように、の点をPとする。ただし、とする。時刻に音源で発生した音波が点Pに到達する時刻をとする。

(1) 時刻に音源で発生した音波が点Pに到達する時刻をVLのうち必要なものを用いて表せ。

(2) Pでの音波の位相がだけ変化するために要する時間をVLのうち必要なものを用いて表せ。

続いて、図3-2のように、反射板を点Pに置く。音源から直接届く音波と反射板で反射されて届く音波の干渉によりうなりが生じる。

(3) 観測者が音源とともに運動する場合を考える。観測者と音源の距離は小さく、観測者は音源と同じ位置にいるとしてよい。音源が反射板に到達するまでの間に観測されるうなりの振動数(うなりの周期の逆数)VLのうち必要なものを用いて表せ。

(4) 観測者がの点Qに静止している場合を考える。ある時刻にうなりが観測され始めた。うなりが観測され始める時刻と、観測されるうなりの振動数をそれぞれVLのうち必要なものを用いて表せ。ただし、音源が原点Oを通過するとき、反射板で反射された音波は原点Oに到達しているものとする。また、音源の運動は観測者に影響されることはなく、音波は音源や観測者に遮られない。

U 音源から出る音波の振動数が時刻t によって変化する場合を考える。音源は原点Oに静止している。反射板はx軸上を運動できる。音源の大きさは無視できる。
音源から、の間だけ振動数が図3-3(A)や図3-3(B)のように時間変化する音波を発生させる。時刻t ()におけるぞれぞれの振動数は、を正の定数として、で与えられる。ただし、Tと比べて十分大きいとする。
音源から直接届く音波と反射されて届く音波の干渉によるうなりを、音源のすぐ近くで観測する。観測を行う位置と音源の距離は十分小さく、無視できる。このうなりの観測を用いて、反射板の位置や速度を計測することを考える。なお、音源で発生する音波は、反射板で反射された後、音波の周期より十分長く
Tよりも十分短い時間で、音源の位置に達するとする。
(1) 振動数が図3-3(A)のように時間変化する音波を音源から発生させる。図3-4のように反射板は位置に静止している。ただし、である。このとき、うなりの振動数はであった。TVのうち必要なものを用いて表せ。


次に、図3-5のように反射板が音源に向って一定の速さで近づく場合を考える。ただし、時刻での反射板の位置をとし、とする。

(2) 振動数が図3-3(A)のように時間変化する音波を音源から発生させる。時刻に音源で発生した音波は、ある位置で反射板により反射され、時刻に原点Oに到達した。に観測されるうなりの振動数をTVのうち必要なものを用いて表せ。

(3) 振動数が図3-3(B)のように時間変化する音波を音源から同時に発生させる。時刻に音源で発生した音波は、ある位置で反射板により反射され、時刻に原点Oに到達した。ただし、とする。時刻に観測されるうなりの振動数をTVのうち必要なものを用いて表せ。

(4) 振動数が図3-3(A)と図3-3(B)のように時間変化する音波を音源から同時に発生させる。振動数が図3-3(A)のように時間変化する音波とその反射波によるうなりの振動数を,振動数が図3-3(B)のように時間変化する音波とその反射波によるうなりの振動数をとする。うなりの振動数の差TVのうち必要なものを用いて表せ。

(5) 設問U(4)におけるの測定によりを求めることができる。として、を有効数字2桁で求めよ。


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解答 ドップラー効果によるうなりの振動数の測定により、運動する物体の位置、速度を求める、という問題です。U(3)でうなりを起こす2つの振動数のどちらが大きいのかが問題になるのですが、(5)の問題文の数値と(1)の結果から判断するしかありません。

T 音波がからまで音速Vで進む時間は、 ・・・@

(1) 時間の間に音源は進んでいるので、音波が進む距離は,この距離を音波が進む時間は、 ・・・A
よって、音波が点Pに到達する時刻は、@より、
......[]

(2) Pで位相がだけ変化する時間は、音波の周期です。音波の波長をλとして、点Pに音波が到着したのと同時に、点Pから波長λだけ離れた位置から発せられた音波が点Pに到着する時間です。よって、@,AのLλとして、その時間は、
波の公式より,これを代入して、
......[]
注.本問は、ドップラー効果の公式を覚えていなくても解答できるように配慮されているので上記ではAを用いましたが、Aによらず、ドップラー効果の公式を用いて、点Pで聞く音波の振動数は、
求める時間はこの逆数で,として解答できます。以後は、ドップラー効果の公式を用いて解答します。

(3) 反射板で聞く音波の振動数は、ドップラー効果の公式よりです。反射音を聞く観測者は、速さで反射音の音源である反射板に近づくので、観測者が聞く振動数は、ドップラー効果の公式より、
に注意して、うなりの振動数は、
......[]

(4) 音源が点Qに到達するまでは、点Qにいる観測者が聞く振動数は、直接音、反射音ともに、なので、うなりは生じません。うなりが観測され始めるのは、音源が点Qを通過したときで、その時刻は ......[]
音源が点Qを通過すると、点Qで聞く反射音の振動数は変わらずですが、点Qで聞く直接音の振動数はとなります。点Qで観測されるうなりの振動数は、
......[]

U(1) 音源を出た音波が反射板との間を往復する時間はです。反射音が音源を出た時刻をとして、反射板は静止しているので、観測者が聞く反射音の振動数は,直接音の振動数はです()。うなりの振動数がだったので、
......[]

(2) に音源を出た音波の振動数はです。問題文よりにいる反射板で反射されるので、この音波は距離を往復して原点Oにいる音源に戻ってきます。その時間は、
 ・・・B
ドップラー効果の公式より、この音波を反射板が聞く振動数は、,音源のすぐ近くにいる観測者が聞く反射音の振動数は、
 ・・・C
に音源が発生する音波の振動数はです。観測者は反射音とともにこの振動数の音波を聞きます。に注意して、に観測されるうなりの振動数は、Cより、
 ( B)
......[
]

(3) に音源を出た音波の振動数はです。この音波が距離を往復して原点に戻ってくるまでの時間はです。よって、
 ・・・D
(2)と同様にドップラー効果の公式を用いると、この音波が反射板で反射して、音源のすぐ近くにいる観測者が聞く反射音の振動数は、
 ・・・E
に音源が発生する音波の振動数はです。両振動数の差をとると、Eより、


 ( D)
下記注より、これは負なので、うなりの振動数は、
......[]
注.上記中カッコ内の正負を調べます。音波が反射板に到達するまでの時間は、です。
なので、は、
 ・・・F
一方で、より、
 ・・・G
(1)の結果よりですが、なので、 ・・・H
つまりです。
関数は、において単調増加なので、よりです。よって、
Gと合わせて、
 ・・・I
Fの右辺−Iの右辺より、


Hより、と考えられます。つまり、であって、
つまり、(3)のうなりの振動数の結果は正です。
ただ試験会場でこんな確認作業をやっている余裕はありません。という条件は、音速
Vをかけると、となり、は音波の波長で、距離が音波の波長(1cm30m程度)よりも充分に大きい、ということを言っています。(5)で与えられる数値によると程度で、100m程度として,ここでを大きめに見積もって50m/s程度(自転車程度)としてであれば、つまり、問題文が想定している程度の状況では、反射音よりも音源から直接来る音波の方が振動数が大きい、と考えることができます。ただ、250m/s1000m程度になる(ミサイルを迎撃する、というような状況)と、が大きくが小さくなり、反射音の方が振動数が大きくなることもあり得て、状況は微妙になります。(4)はどちらの振動数の方が大きいのか判断しないといけませんが、(3)だけなら絶対値をつけて解答する方がよいと思います。

(4) (3)と同様に反射板がに来ているとして、(3)より、
 ・・・J
また、図3-3(A)のように振動数がと時間変化する音波の場合も、(3)と同様に考えて、反射音を聞く振動数と直接音を聞く振動数との差は、


 ( D)
中カッコ内は正なので、
Jより、


......[]

(5) (5)の結果より、
数値代入して、
よっては、有効数字2桁で、 ......[] (これは歩く速さ程度です)



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