スペクトル分解 関連問題
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この項目は、1次変換、固有値・固有ベクトル、ハミルトン・ケーリーの定理、行列の対角化を参照してください。
n次正方行列Aが異なる固有値,,・・・,とそれに対応する固有ベクトル,,・・・, (これらの固有ベクトルは1次独立です)をもつとします。このとき、
,,・・・, ・・・@
これらは、行列Aがある固有の方向(固有ベクトルに平行な方向)を持っていて、その方向のベクトルに行列Aをかけると長さが変わるだけ、と言うことを意味しています。
n次元空間中の任意のベクトル: (,,・・・,は任意の実数)に行列Aをかけると、@を用いて、
となりますが、,,・・・, ・・・(*) のような一連の行列を捜してきて、
・・・A
のように書くことを考えてみます。
Aが任意のベクトルについて成り立てば、恒等式の条件より、
・・・B
が成立します。
(*)のような性質は、がそれぞれ、任意のベクトルのの方向成分、の方向成分、・・・,の方向成分を取り出すような行列であることを意味しています。このような性質をもつ行列、を、射影子と呼びます。が表す1次変換を、,,・・・,の方向への射影と言います。であれば、以外のすべての固有ベクトルと平行な方向からに光を当てて、の方向への影を作ることに相当します。
例えば、が射影子であるためには、
, ・・・C
であれば、性質(*)が満たされるので、このウェブサイトでは、Cをが射影子であるための条件と考えることにします。を求めるために、Cを1つにまとめて書くと、
は、,,・・・,が1次独立なので、正則()であり、逆行列をもちます。上式両辺の右からをかけると、
,・・・,についても、全く同様にして、
・・・・・
さて、こうして得られた射影子が他にどのような性質をもつかを調べてみます。
射影子をすべて加え合わせると、
より、単位行列になります。
また、性質Cより、,,のとき、
,,,
よって、任意のベクトルに対して、
,
より、 (零行列)です。
より、です。
逆に、を満たす行列があるときに、任意のベクトルにをかけたときに、あるベクトルをとって
(は実数)
になったとすると、
よって、とすれば、と書けるので、はの方向への射影子です。
また、を含む1次独立なベクトルの組,,・・・, (iは1からnのどれか)について、
とおくと、
つまり、
が任意の実数 ()について成り立つので、恒等式の条件より、となるjについて、
となって、Cが導けます。従って、
()
が、が射影子であるための必要十分条件です。
(k:実数)という形をしていると、となるjについて、となり得ないので、です。
であれば、とハミルトン・ケーリーの定理より、固有方程式を因数分解すると、が出てきて、射影子は、固有値0,1をもつことがわかります。
固有値1に対する固有ベクトルが、上記に出てきた、より、です。
が固有値0をもつということはどういうことかと言うと、以外の方向の成分はすべて縮めて0にしてしまう、ということです。
Bを用いることにより、行列の累乗の計算を容易に行うことができるのですが、通常は、への「射影」と言う場合、と垂直な方向から光を当ててできる影、つまり「正射影」のことを指します。また、射影子には、C以外にも条件がつきます。
正射影を考える場合には、,,・・・,が正規直交基底となる場合(相互に垂直で、かつ、それぞれの大きさが1)を考えるので、上記の、は、直交行列になります。
@を1つにまとめて書くと、
より、
と書けて、左からをかけると、
となって、行列Aを対角化できますが、これの転置行列を考えると、
Mは直交行列でを満たすので、両式の右辺が等しいことより、
従って、を満たす行列(対角成分に関して、右上と左下に対称に数字が並ぶので、対称行列と言います)が、直交行列によって対角化できることがわかります。
このとき、例えば、射影子についても、として、
より(計算が複雑です。成分をていねいに書いて確かめてください)、
が成り立つので、も(,・・・,も同様に)対称行列になります。
こうして、対称行列Aについて、対称行列である射影子を用いて、Bのように書くことができます。これを対称行列Aのスペクトル分解と言います。
ですが、Aが対称行列でなくても、異なる固有値,,・・・,を持てば、全く同型のB式が成り立つので、このウェブサイトでは、Aが対称行列でない場合についても、B式を行列Aのスペクトル分解と呼ぶことにします(従って、正射影でなくても、C,あるいは、が成り立つだけで射影子と呼ぶことにします)。
(スペクトル分解(その2)へつづく)
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