東大理系数学'10年前期[3]

2つの箱LR,ボール30個、コイン投げで表と裏が等確率で出るコイン1枚を用意する。x0以上30以下の整数とする。Lx個,R個のボールを入れ、次の操作()を繰り返す。

() Lに入っているボールの個数をzとする。コインを投げ、表が出れば箱Rから箱Lに、裏が出れば箱Lから箱Rに、個のボールを移す。ただし、のときのときとする。

m回の操作の後、箱Lのボールの個数が30である確率をとする。たとえばとなる。以下の問(1)(2)(3)に答えよ。
(1) のとき、xに対してうまくyを選び、で表せ。
(2) nを自然数とするとき、を求めよ。
(3) nを自然数とするとき、を求めよ。


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解答 この問題も[1]と同様に、東大ではかなり以前によく出題されていたタイプの問題です(例えば90年前期[6]84[5])(1)の出題意図がつかみにくいのですが、漸化式を立てて機械的に処理せよ、というヒントです。一般的なxで考えようとすると討ち死にしかねませんが、(1)ができなくても、(2)(3)は、の場合との場合だけなので、樹形図を書いて行けば、(1)を利用しなくても解答できます。

(1) 操作()を一般的なxで考えて行くと、の場合分けが考えにくく(こうした問題もかつて東工大81[1]などに見られたものです)、混乱し易いので、試験場では、最初からの場合で樹形図を書いて行くのがよいと思います。右図にの場合との場合について樹形図を示します。
の場合、操作()1回行うと、裏が出たときに、L0個,R30個という状態になりますが、この後はとなりボールを移す操作は行われず、このまま変化しなくなります。また、操作()1回行っただけでは、L30個という状態にはなり得ないので、です。操作()2回行うと、確率で箱Lの個数が30個になります。よって、
 ・・・@
です。これ以降となり、このまま箱のボールの個数は変化しなくなります。また、確率L10個という状態になるのですが、これは最初の状態()と同じ状態です。別解にこのことに着目した解答を後述します。
の場合には、操作
()1回、または、2回行うときには、L30個という状態にはなり得ないので、です。3回行うと、確率で箱Lの個数が30個になるので,これ以降となり、このまま箱のボールの個数は変化しなくなります。4回行うと、となる場合以外にさらに確率で箱Lの個数が30個になり、
 ・・・A
となります。また、操作()4回行うと、確率で最初の状態(**)と同じ状態が出てきます。
さて、「
xに対してうまくyを選び、で表せ」という問題文の意図がわかりにくいのですが、m回操作後の確率を回操作後の確率を用いて表す、という発想では、考えづらくなります。
ここでは、
1回の操作であれば、樹形図はすぐに書けることをヒントにしましょう。1回の操作の樹形図だけから、の関係を考えるのであれば、Lx個,R個入れた最初の状態からm回操作を行うときの確率がで、1回操作後のLの個数y個から回操作を行うときの確率,ということになります。
つまり、であれば、最初にL10個あるところから考えたm回操作後の確率がですが、最初の1回の操作後、L20個、あるいは、L0個の状態から考えた回操作後の確率との関係を考えるようにします。1回の操作でL20個,また、L0個の状態になる確率は、ともにです。1回目の操作と2回目以降の操作は独立でかつ表が出る事象と裏が出る事象は排反なので、
 (和事象・積事象・余事象を参照)
という具合にして、関係式を作ることができます。
但し、試験場でここが切り抜けられない場合、
(2)(3)は別解のように考えて解答してください。

以上を踏まえて、のとき最初の
Lの個数がxm回操作後にLの個数が30個になる確率と、最初の1回の操作後のLの個数がyで、以降回操作後にLの個数が30個になる確率との関係を求めます。
ここで、まず注意しなければいけないのは、操作
()においてのときとのときとで移動する個数が異なるということです。場合分けが必要になります。
(i) のとき、より、表が出れば(確率)L個となり、以降回の操作でL30個になる確率は,裏が出れば(確率)L個となり、以降回の操作でL30個になる確率はになります。従って、
 ・・・B
(ii) のとき、より、表が出れば(確率)L個となり、以降回の操作でL30個になる確率は,裏が出れば(確率)L個となり、以降回の操作でL30個になる確率はになります。従って、
 ・・・C
前述したように、Lの個数が0個になるか30個になってしまうと、となり、移動するボールの個数は0で、それ以降、Lの個数は変化しなくなります。つまり、Lの個数が0になってしまうと、以降何回操作しても、Lの個数は30になり得ません。よって、Bの0です。また、Lの個数が30になってしまうと、以降何回操作しても、Lの個数はずっと30です。よって、Cの1です。
よって、のとき、
......[]

(2) 以下では、とします。(1)の結果を用いて、のとき、より、
のとき、より、
両式より、
ここで、とおくと(2項間漸化式を参照)
 ・・・D
 ・・・E

D−Eより、
数列は、初項 ( @),公比等比数列で、
......[]

(3) (1)の結果を用いて、
ここで、とおくと、
 ・・・F
 ・・・G

F−Gより、
数列は、初項 ( A),公比の等比数列で、
......[]

別解.(1)が切り抜けられなくても諦めることはありません。樹形図で、何回かの操作の後に、最初の状態()が出てくることを利用すれば(2)(3)を解答できます。最初から(1)を放棄して、以下のようにする方が得点的にはよいかも知れません。
(2) のとき、2回の操作後に確率で最初の状態()が出てきます。
最初から始めて回の操作後にLの個数が30個になる確率はです。
2回操作後の()から始めて回の操作後にLの個数が30個になる確率はです。
樹形図より、最初から始めて回の操作後に
Lの個数が30個になるのは、最初の2回で、2回続けて表が出た場合(確率)と、2回の操作で表、裏と出て(確率)さらに以降の回の操作でLの個数が30個になる場合です。つまり、
この後、2項間漸化式を解くのは上記の通りです。
(3) のとき、4回の操作後に確率で最初の状態(**)が出てきます。
最初から始めて回の操作後にLの個数が30個になる確率はですが、こうなるのは、最初の4回で、3回続けて表が出た場合(確率)と、4回の操作で表、表、裏、表と出た場合(確率)と、表、表、裏、裏と出て(確率)さらに以降の回の操作でLの個数が30個になる場合(確率)です。つまり、
この後、2項間漸化式を解くのは上記の通りです。


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