東工大物理'12年前期[2]

面積Sの同じ形状を持つ導体極板ABが間隔dで向かい合わせに配置された平行板コンデンサーを、真空中に置く。このコンデンサーの極板間に、導体極板と同じ形状を持つ面積Sの金属板Pを、極板Aから距離xを隔てて極板に対して平行に置く。真空の誘電率をとして以下の問いに答えよ。ただし、極板端面および金属板端面における電場の乱れはなく、電気力線は極板間に限られるものとする。導線、極板、金属板の抵抗、重力は無視する。また金属板の厚さも無視する。

[A] 図1のように、極板ABは、スイッチSWを介して接続され、極板Aは接地されている。
(a) スイッチSWが開いているとき、極板AB間の電気容量を求めよ。
(b) スイッチSWを閉じた後、金属板Pを電気量Qの正電荷で帯電させる。この電荷によって極板ABに誘導される電気量を、それぞれ求めよ。
(c) (b)において、コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーを求めよ。
(d) (b)の状態から、金属板Pを電気量Qの正電荷で帯電させたまま、金属板の位置をxからまで微小変位させる。この変位による、コンデンサーに蓄えられている静電エネルギーの変化量を求めよ。ただし、xdに比べては十分小さく、は無視できるものとする。微小変位によりエネルギーが変化するということは、金属板Pは力を受けていることを意味する。微小変位の間は金属板Pに働く力の大きさは一定であると見なして、この力を求めよ。ただし、極板AからBに向かう向きを力の正の向きとする。

[B] 次に、質量mの金属板Pを電気量Qの正電荷で帯電させたまま、図2のように自然長,ばね定数k2つの同じ絶縁体のばねに接続する。ばねの他端は、固定された極板ABにそれぞれつながれている。この金属板は、極板ABと平行を保ったまま、極板に垂直な方向にのみ動くことができる。極板ABは、電流計を介して接続され、極板Aは接地されている。ばねを接続したことによる電気容量の変化、電流計の抵抗、金属板の振動による電磁波の発生は無視する。
(e) 金属板Pの位置をに移動させてから放す。このとき、金属板Pが単振動するために必要となるQに求められる条件をkSdを用いて表せ。また、この条件を満たすとき、単振動の角振動数を求めよ。
(f) (e)の条件で、金属板Pが単振動しているとき、電流計には振動電流が観測される。この電流の最大値を求めよ。導線を流れる電流Iは、微小時間の間に導線の断面をの電荷が通過するとき、と定義される。


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解答 コンデンサーとばね振り子の融合問題です。(f)では、問題文に「と定義される」と書かれている上、導出過程も要求されているので、とはやりにくいところです。

[A](a) AP間の静電容量BP間の静電容量
SWが開いているとき、は直列で、合成容量とすると、
......[]
(b) SWを閉じると、は並列になります。合成容量Cは、
AP(BP間も同じです)電圧Vは、
極板Aに誘導される電気量は、 ......[]
極板Bに誘導される電気量は、 ......[]
(c) 金属板Pが極板Aから距離xを隔てて置かれているとき、コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーは、
......[] (コンデンサーの過渡現象を参照)
(d) 微小変位によってエネルギーの変化を生じさせる、金属板Pが受けるFとは、静電気力のことです。
金属板P位置xからまで変化させたときの静電エネルギーの変化は、

これは、金属板P静電気力に逆らう外力から受けた仕事に等しく、このが一定だったとして、
静電気力は、 ......[]

[B](e) 金属板Pが極板Aからx距離にあるとき、金属板Pは、静電気力Fとばねの弾性力を受けます。
左右のばねの自然長Lとすると、極板Aから極板Bに向かう向きを正の向きとして、左のばねの弾性力は正の向きに,右のばねの弾性力は負の向きにで、合わせて、
金属板Pが受ける静電気力Fとばねの弾性力合力は、(d)の結果を用いて、
金属板P単振動する条件は、この合力復元力となることで、
......[]
この条件下で、金属板P運動方程式は、金属板P加速度aとして、

これは、振動中心角振動数単振動を表します。
......[]
(f) 時刻tにおける金属板Pと極板Aとの距離は、においてであることから、
極板Bに蓄えられている電気量qは、(b)より、
 ・・・@
時刻における電気量は、
 (ここで、として近似)
 ・・・A
A−@より、
......[]


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