早大教育物理'09[2]

以下の問題の答を解答用紙の所定欄に記入せよ。
図U−
1に示すように、平行平板コンデンサーに比誘電率の誘電体が挿入されている。コンデンサーの極板は一辺Lの正方形であり、極板間の距離はdである。挿入された誘電体は極板と平行に滑らかに動かすことができる。スイッチSを閉じ、電圧Vを印加してコンデンサーを充電した後、再びスイッチを開いた。真空の誘電率をとして以下の問いに答えよ。ただし、コンデンサーの端の効果は考えなくてよい。
1 コンデンサーの電気容量(静電容量)はいくらか。
2 コンデンサーに蓄えられたエネルギーはいくらか。
次に図U−2に示すように、誘電体を右側にxだけ引き出した。以下の問いに答えよ。
3 このときのコンデンサーの電気容量はいくらか。
4 誘電体を引き出すために誘電体に加えられた仕事はいくらか。
5 xLに比べて十分短いとして、誘電体に働く力の向きと大きさを求めよ。
必要ならば、1に比べて非常に小さいときに成り立つ近似式を用いよ。ただしqは実数である。
誘電体を引き出すために加えていた力を時刻ではずすと、誘電体は運動を始めた。誘電体の質量をm,左から右に向かう方向を運動の正の方向として以下の問いに答えよ。
6 運動を始めた瞬間に誘電体が受ける力の大きさをとする。誘電体が再び元の位置に戻る時刻を求めよ。
7 問6の時刻における誘電体の速さを求めよ。
8 誘電体は運動を続け、ある時刻で速度がゼロとなった。その時刻で表せ。
9 問6から問8の結果を用いて、誘電体の速度を時間の関数として図示せよ。横軸はを単位として時刻からまで描き、速度の目盛は各自で記入すること。
誘電体を元の位置に戻してコンデンサーを放電させた後、再び電圧Vを印加してコンデンサーを充電した。今度はスイッチを閉じたままにして、誘電体を右側にxだけ引き出した。
10 誘電体を引き出すために加えられた仕事はいくらか。
11 として、誘電体が受ける力の大きさを有効数字一桁で求めよ。解答には単位を明記すること。
12 加えられた力をはずすと、誘電体は運動を始める。どのような運動を行うか説明せよ。


【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

 問10では、静電容量の増減、静電エネルギーの増減、仕事の正負に注意して、慎重に考える必要があります。

1 極板間距離d極板面積,極板間の誘電体の誘電率がなので、コンデンサー静電容量は、
......[]

2 コンデンサーに蓄えられる静電エネルギーは、
......[]

3 誘電体が存在しない部分の極板面積なので、この部分の静電容量は、
誘電体が存在している部分の極板面積なので、この部分の静電容量は、
並列の合成容量Cは、
......[]
スイッチを開いてから誘電体を引き出しているのでコンデンサーが蓄えている電気量は変わらず、このときのコンデンサー両端の電圧は、
静電エネルギーは、
また、
 ・・・@

4 誘電体を引き出すために誘電体に加えられた仕事は、コンデンサーの静電エネルギーの増加分として、

......[]

5 より、問4の結果に問題文中の近似式を適用します。このために、が出てくるように式変形します。
 (問題文中の近似式を利用)
 (を無視)
誘電体を一定の大きさF外力で、距離xだけ引き出すとして、誘電体に加えられた仕事は、
よって、外力の大きさ、即ち、誘電体に働く(外力とつり合っていて、外力とは等大逆向きです。力のつり合いを参照)の大きさは、
......[] (この結果は実際に、xに依存せず一定です)
外力の向きは誘電体を引き出す向きです。誘電体に働くは、外力とつり合うので、その向きは、左向き ......[]

6 問5で求めたの大きさFxに依存しないので、運動を始めた瞬間に誘電体が受けるであれば、誘電体が受けるのまま一定で、誘電体は等加速度運動をします。
誘電体の加速度aとして、誘電体の運動方程式

時間の間にx進むので、

......[]
注.問題文に「」という記述が出てきて悩むのですが、この「」は誘電体が図U−1位置にいることを意味するだけで、解答で用いたx,つまり、誘電体に加えていたをはずした時刻における位置を示すxとは別のxということにします。

7時刻における誘電体の速さとすると、誘電体を引き出すときに誘電体が受けた仕事運動エネルギーに転化する(力学的エネルギー保存則を参照)ので、
......[] (時刻における速度の向きは左向きです)

8 運動の対称性より、における運動と、における運動とは、運動の向きが逆になり、において速さは次第に減少しゼロに戻ります。次に速度がゼロになる時刻は、
......[]

9 運動の対称性より、問8におけるの運動との運動とは、の向きが逆で、速度変位の符号が入れ替わります。以降、周期で同様の運動が繰り返されます。誘電体の速度のグラフは右図。

10 今度はコンデンサー両端の電圧Vのまま一定です。誘電体をx引き出したときのコンデンサーの静電エネルギーは、問3Cを用いて、
コンデンサーの静電エネルギーの変化は、
電池がした仕事Wは、電池が供給した電荷(実際には、コンデンサーから電荷が戻ってきます)であることから、公式(電位・電圧を参照)より、
誘電体を引き出すために加えられた仕事として、
 ・・・A
......[] ( @)
注.A式は、電池と外力が誘電体に対してした仕事が、コンデンサーの静電エネルギーの増加になる(ここではですが)、ということを表しています。

11 この場合においても、問5の状況と同様に、誘電体に働くと誘電体を引き出す外力はつり合っています。よって、問10の結果より、誘電体が受けるの大きさをFとして、問5と同様に、


......[]
12 図U−1の位置を中心とし、中心の左側、右側において、それぞれ等大逆向きで中心に向かう加速度で等加速度運動を行いながら、振動を続ける。 ......[]



【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

  物理TOP  TOPページに戻る

【広告】ここから広告です。ご覧の皆さまのご支援ご理解を賜りたく、よろしくお願いいたします。
【広告】広告はここまでです。

各問題の著作権は
出題大学に属します。

©2005-2024
(有)りるらる
苦学楽学塾 随時入会受付中!
理系大学受験ネット塾苦学楽学塾
(ご案内はこちら)ご入会は、
まず、こちらまでメール
お送りください。