首都大物理'08[3]

5のように、圧力の大気中に置かれた円筒容器とピストンを考える。容器の上面には穴が開いている。ピストンの下に閉じ込められた気体を気体Aと呼ぶ。気体Aはヒーターより加熱することができる。容器は鉛直に置かれ、ピストンは鉛直方向になめらかに動くものとする。また、すべての気体は単原子分子からなる理想気体として扱うものとし、熱の移動はヒーターと気体Aとの間でのみ発生するものとする。容器の底面積をS,ピストンの質量をM,重力加速度の大きさをg,気体定数をRとして、以下の問いに答えよ。なお、単原子分子からなる理想気体の定圧モル比熱は1モルあたりの内部エネルギーはで与えられる。
1 ピストンが静止した状態における気体Aの圧力を求めよ。
2 ヒーターで気体Aを加熱して熱量を与えたところ、ピストンが移動し、加熱終了後にピストンは再び停止した。気体Aがした仕事を求めよ。
次に図6のように容器の上面の穴に圧力調整弁を取り付けた。圧力調整弁は、弁の両側の圧力差がを越えた場合に高圧側から定圧側に気体が流れる仕組みになっている。取り付けた直後は、弁の両側に圧力差がなかったため、弁は自動的に閉鎖状態になり、ピストン上部に大気が閉じ込められた。この気体を気体Bと呼び、その圧力は大気圧と同じであった。また、このとき気体ABは、どちらも体積はで温度はであった。ここで気体Aをヒーターで再び加熱して一定の熱量を与えたところ、ピストンが移動し、加熱終了後にピストンは静止した。その結果、気体Bの圧力は,体積はになった。この過程で圧力調整弁が開放状態になることはなかった。
3 圧力調整弁を取り付けた後の過程における気体A及び気体Bの内部エネルギーの増加分をそれぞれ求めよ。
4 圧力調整弁を取り付けた後の過程でヒーターから気体Aに与えられた熱量を、ピストンの位置エネルギーの変化に注意して求めよ。
さらに気体Aをヒーターで加熱したところ、加熱の途中で圧力調整弁が開き、気体Bが大気中に放出され始めた。放出が始まったときの気体Bの体積はであった。
5 気体Bの放出が始まったときの気体Aの温度を求めよ。
6 気体Bの放出が始まってから加熱を終えるまでの間に、気体Aには熱量が与えられた。加熱終了後、ピストンは容器の上側に到達することなく静止した。このときの気体Bの体積を求めよ。


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解答 文字数が多く、混乱しやすい問題です。

1 求める気体の圧力とします。ピストンにかかるは、大気が及ぼす下向きの,下向きの重力,気体Aが及ぼす上向きのです。ピストンにかかる力のつり合いより、
......[] ・・・@

2 加熱している間、ピストンにかかる力のつり合いに変化はなく、気体A圧力は一定です。つまり、気体Aの変化は定圧変化です。気体Aのモル数を,この間の気体A温度変化として、定圧モル比熱の式より、
気体A内部エネルギーの変化は、
熱力学第1法則より、気体Aがした仕事Wは、
......[]

3 圧力調整弁を取り付けた後の過程において、気体A圧力として、ピストンにかかる力のつり合いより、
 ・・・A
気体
Aと気体Bを合わせた体積は、加熱前で考えてです。加熱後、気体B体積になるので、気体A体積になります。
気体
Aの加熱前の状態方程式 ・・・B
気体
Aの加熱後の状態方程式 ・・・C
気体
A内部エネルギーの増加分は、C−Bに、@,Aを代入して、
......[]
気体Bの加熱前の状態方程式 ・・・D
気体
Bの加熱後の状態方程式 ・・・E
気体
B内部エネルギーの増加分は、E−Dより、
......[]

4 ヒーターから気体Aに与えられた熱量を求めるためには、熱力学第1法則より、問3で求めた気体A内部エネルギーの変化の他に、気体Aがした仕事を求める必要があります。この過程で気体Aがする変化は、定圧変化でも、定積変化でも、等温変化でも、断熱変化でもありません。バネつきピストンとも違います。気体Aに着目したのでは、気体Aがした仕事が求められないのです。
そこで、気体Bの方を考えてみます。問題文に「熱の移動はヒーターと気体Aとの間でのみ発生する」と書かれているので、気体Bのやりとりを行う相手はなく、気体Bは断熱変化をします。断熱変化では、気体B内部エネルギーの増加分は、気体Bが受けた仕事に等しくなります。気体B仕事をするのは気体Aです。
「ピストンの位置エネルギーの変化に注意して」という問題文のヒントを合わせて考えると、気体
Aがした仕事は、気体Bに対してした仕事(3)と、ピストンの位置エネルギーの増加分の和になります。
ピストンの
高さだけ高くなっているので、位置エネルギーの増加分です。よって、
熱力学第1法則より、求める熱量は、
3の結果を代入し、
......[]

5 気体Bの放出が始まったとき、気体B圧力は、大気との圧力差になるので、です。このときの気体A圧力として、ピストンにかかる力のつり合いより、
 ・・・F
このときの気体
A体積は、気体B体積なので、です。気体A絶対温度として、気体A状態方程式は、
 ・・・G
G÷Bより、
@,Fを代入することにより、

......[]

6 気体B圧力となり気体の放出が始まって以降、気体B圧力は一定になります。ということは、気体A圧力も一定となり、気体Aは定圧変化をします。問2と同様に考えると、気体A定圧変化を吸収するとき、気体Aがした仕事となります。気体Aがピストンに及ぼす圧力は一定値なので、気体Aがした仕事高さの増加分xとして、
気体B体積は、
......[]


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