京大物理'13[1]

次の文章を読んで、  に適した式を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、  はすでに  で与えられたものと同じ式を表す。また、問1,問2では、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。

以下の設問では、地球は半径
Rの球であり、密度は一様に分布していると考えてよい。また、地球の質量をM,万有引力定数をGとし、地球の自転の影響、摩擦、および空気の抵抗は無いものとする。

(1) 1のように、地球の中心Oを通って直線状に掘られたトンネルを考える。トンネルは十分に細く、トンネルを掘ったことによる質量の変化は無視できるものとする。トンネル内の任意の1P ()で質量mの質点に働く重力は、Oを中心とした半径rの球の質量が中心Oに集まったとして、それと質点との間の万有引力に等しく、半径rの球の外側の部分は、この点での重力には無関係であることが知られている。したがって、トンネル内の1Pにおいて質点に働く重力の大きさは、mMRrGを使って ア と表すことができる。この力による質点の運動は単振動であり、その周期は イ で与えられる。

(2) 次に、図2のように、トンネルを通る直線に沿って、地表からの高さがhの点に質量μの質点Aを静かに置き、静止した状態からトンネルに落下させ、中心Oに静止している質量mの質点Bに衝突させる。質点Aがトンネルに入る瞬間の速さは ウ で、中心Oに到達する直前の速さは エ である。衝突は弾性衝突であるとすると、衝突直後の質点Aの速さは オ ,質点Bの速さは カ となる。衝突後、質点Bは反対側の地表に達した。
1 とした場合に、この後質点Bが無限の遠方に飛び去るために必要なの値の範囲を求めよ。導出の過程もあわせて示せ。

(3) 今度は、図3のように、地球の中心Oからだけ離れたところを通る直線状の細いトンネルを掘った。中心Oからの距離がrで、トンネルの中心からxだけ離れたトンネル内のP点にある質量mの質点に働く重力の大きさは ア なので、その質点に働くトンネルに沿った方向の力の大きさは、mMRxGを使って キ で与えられる。したがって、地表で静止した状態からトンネルを通って反対側の地表に出るまでにかかる時間は ク である。

(4) 次に、図4のように、質量μの質点Aをトンネルの端点に静かに置き、静止した状態からトンネルに落とし、トンネルの中心に静止している質量mの質点Bに衝突させた。衝突は弾性衝突であるとすると、質点Bが反対側の地表に達するための条件は ケ で与えられる。また、質点Bが地表から飛び出した後、再び地表にもどってくるための条件は コ となる。
2 地表から飛び出した瞬間の質点Bの運動エネルギーが、そのときの位置エネルギーの大きさの半分である場合を考える。地表を飛び出した後の質点Bの運動では、面積速度が一定となる。質点Bが地球から最も離れた地点に達したときの中心Oからの距離を求めよ。導出の過程もあわせて示せ。
なお、図
5のように質点が地球の中心Oから距離rの位置を速さvで運動している場合、その面積速度はで与えられる。ただし、θ は地球の中心から軌道上の質点に向かう方向と速度のなす角度である。


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解答 数学の試験問題の簡単さに比べて、物理の複雑さは何なのか、と、言いたくなりますが、物理は質的にも量的にもボリューム満点で時間内にやりきるのは困難でしょう。
本問は、地表から外部と内部とで
位置エネルギーの考え方を変える必要があるところがポイントになっています。(2)()(3)()で悩みますが、(1)でトンネル内で質点が単振動することを手がかりとして考えましょう。

(1) 半径rの球の体積半径Rの球の体積,地球の質量Mであることから、地球の密度ρとして、
 ∴
Oを中心とした半径rの球の質量は、
質点に働く
重力の大きさは、万有引力の公式より、
() ......[]
重力の向きはrを減少させる方向で、質点の加速度aとして、質点の運動方程式は、

これは、質点が角振動数の単振動を行うことを示します。単振動の周期Tは、
() ......[]

(2) 高さhの点での位置エネルギーは、
地表での位置エネルギーは、,トンネルに入る瞬間の速さvとして、運動エネルギーは、
両地点での
力学的エネルギー保存より、
 ∴
() ......[]
(1)
で見たように、質点はトンネルに入ると、角振動数ω の単振動をします。これを、バネ定数kのバネ振り子と同様に考え、位置エネルギーと考えると、()の結果よりとすることにより、地球の中心から距離rの地点にいる質点A位置エネルギーは、
トンネルに入る瞬間
()位置エネルギーは、
トンネルの中心に到達する直前の質点
A速さとして、トンネルに入る瞬間とトンネルの中心との力学的エネルギー保存より、
()の結果を用いて、

(
) ......[]
衝突直後の質点A,質点B速度をそれぞれ、とすると、衝突前後の運動量保存より、
 ・・・@
弾性衝突であることから、反発係数の式は、
 ・・・A
Aより、,これを@に代入して、
 (質点A速さ)
() () ......[]

1 のとき、です。このとき、地表に達したときの質点B速さとして、衝突直後と地表に達したとき(位置エネルギーは、()と同様に考えて)との力学的エネルギー保存より、

無限遠方での質点B速さとして、無限遠方と地表との力学的エネルギー保存より、




 ∴ ......[]

(3) 質点が点Pにいるとき、地球の中心Oとの距離として、質点に働く重力のトンネルに沿った方向の成分の大きさは、
() ......[]
(
)の向きはxを小さくする方向で、加速度として、運動方程式は、

これは、質点が角振動数の単振動を行うことを意味します。
地表で静止した状態からトンネルを通って反対側の地表に出るまでにかかる
時間は、単振動の周期で、
() ......[]

(4) (3)の単振動の振幅は、最初、地表で静止していたので、トンネルの端点と中心との距離に等しく、です。
単振動の公式より、質点Aの衝突直前の速さは、
()()と同様にして、衝突直後のB速度は、
()と同様にして、バネ振り子からの類推で位置エネルギーを考えます。加速度として、運動方程式は、
となるので、バネ定数として、位置エネルギーは、,トンネルの端点では、との距離なので、のとき、となります。
1と同様にして、地表に達したときの質点B速さとして、衝突直後と地表に達したときとの力学的エネルギー保存より、
 ・・・@
より、
() m ......[]
であれば、質点は地球の引力圏を脱して無限遠に飛び去ってしまうので、戻ってくるためには、




()

2 問題文より地表での運動エネルギーであることから、@より、

地表から飛び出す瞬間の力学的エネルギーは、
地球から最も離れた地点と地球の中心との
距離,ここでの質点B速さとすると、力学的エネルギー保存より、
 ∴
地表から飛び出すとき、飛び出す地点と地球の中心を結ぶ直線と、トンネル方向、即ち、質点B速度とのなす角はです。
面積速度は、地表から飛び出すとき、,最も離れたとき、面積速度一定より、


 ∴ ......[]


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