京大物理'23年前期[2]
次の文章を読んで、 に適した式または数値を、{ }からは適切なものを一つ選びその番号を、それぞれの解答欄に記入せよ。なお、 はすでに で与えられたものと同じものを表す。また、問1,問2では、指示にしたがって、解答をそれぞれの解答欄に記入せよ。ただし、真空中のクーロンの法則の比例定数はk,円周率はπとする。
(1) 真空中に置かれた正の電気量Qの点電荷から出る電気力線の本数を考える。点電荷を中心とする球面を考えると、その球面を貫く単位面積あたりの電気力線の本数(電気力線の密度)は、電場の強さと等しくなるように定められている。このことから、点電荷から出る電気力線の本数は イ である。
(2) 真空中にある半径aの導体球Aに正の電気量Qを与えると、電荷は{ロ:①球内全体に,②球の表面に}一様に分布する。球の中心Oから距離rの球面を貫く電気力線の本数は
では イ で、電気量Qの点電荷を中心Oに置いたときと同じである。そのため、電場の強さと電位は、点電荷の場合と変わらない。一方、
では電場の強さは ハ で、電位は ニ となる。ただし、無限遠を電位の基準(電位=0)とする。
(3) (2)の状態にある導体球Aを、図1の断面図のように、電荷が与えられていない中空の導体球B(内半径b,厚さd)で囲む。ただし、導体球Aと中空導体球Bは同一の点Oを中心とする。中空導体球Bを、導体球Aがつくる電場の中に置いたので、中空導体球Bには静電誘導によって正電荷と負電荷の分布の偏りが生じた。その結果、
では、電場の強さが(2)の状態から変化したが、それ以外の領域では囲む前と同じであった。そのため、
では、電位は無限遠を基準として(2)の状態と変わらない。また、導体球Aと中空導体球Bに挟まれた領域(
)においても、(2)の状態から電場が変化していないので、この領域内の2点間では、電位差も変化しない。よって、中空導体球Bの内側表面(
)と導体球Aの表面(
)との電位差(
)は ホ と求められる。
問1 (3)の状態の電位Vについて、rを横軸、Vを縦軸として、グラフを描け。
におけるVの値がわかるように縦軸に記入せよ。
(4) (3)の状態から中空導体球を接地したところ、電気量 ヘ が地表に流れた。接地により中空導体球の電位は0になり、導体球Aの電位は ト になった。この状態の電荷分布の様子から、導体球Aと中空導体球Bの組み合わせは、Qの電気量を蓄えたコンデンサーとみなすことができる。このコンデンサーの電気容量は チ である。
(5) 図2の断面図のように、同一の点Pを中心とする、半径aおよびb (
)の半球形の、厚さを無視できる薄い導体が真空中に置かれている。この装置を利用して、光電効果などで真空中に放出された電子(質量m,電気量
)の運動エネルギーを分析することができる。内側の半球(内球)と外側半球(外球)の間に電位差
(
)を与えると、両者に挟まれた領域(領域Ⅰ)に電場が生じる。ただし、半球の端における電場の乱れや、他の領域の電場は無視できるとする。このとき、内球と外球の組み合わせはコンデンサーとみなすことができる。領域Ⅰに生じる電場の強さは、(4)のコンデンサーに電位差
を与えたときの値と同じであり、中心Pからの距離rの関数としてr,a,b,
を用いて リ と表される。次に、電子が図2の装置のスリット
を通過し、点Xから領域Ⅰに進入した場合を考える。ただし、スリットは十分に狭く、図2のように電子は、点Pと点Xを結ぶ直線に対して垂直に通過し、紙面内を運動するものとする。また、重力と地磁気の影響は無視できるとする。特定の速度
をもったもの、すなわち、特定の運動エネルギー
をもったものだけが、点Pを中心とする等速円運動をし、点Yに到達した後、十分狭いスリット
を通過することができる。ここで、円軌道の半径は
である。このときの電子の運動エネルギー
はa,b,e,
を用いて ヌ と表すことができる。
(6) 金属の表面に紫外線などの光を当てたときの光電効果を考えよう。金属内部の自由電子は、いろいろなエネルギーをもっている。そのエネルギーの最大値を
とし、最大のエネルギーをもつ電子を金属の外に取り出すために必要なエネルギーの最小値(仕事関数)をWとする。
より低いエネルギーをもつ電子を金属の外に取り出すには、Wより大きいエネルギーが必要である。
問2 放出された光電子の数を、光電子の運動エネルギーの
の関数として描いたとき、そのグラフの概形として最も適切と考えられるものを、図3の①~④のうちから選び、その番号を解答欄に記入せよ。また、グラフを特徴づける運動エネルギー
をλ,W,
,
,c,hのうち必要なもので表せ。
図2の装置を利用して、光電子の運動エネルギーの分布を決めることができる。このような方法は光電子分光法を呼ばれている。
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解答 前半で、半球形の装置内の電場の状況を考察し、最後に光電効果により放出された光電子のエネルギーを考えよう、という問題です。
あるいは、クーロンの法則により、正電荷Qから距離r離れた
の電荷が受ける電気力が
であることから、正電荷Qから距離r離れた点における電場の強さは
,正電荷QからN本の電気力線が伸びる、として、電気力線の密度(半径rの球面の面積は
)が電場の強さに等しいことから
∴ 
(2) 導体球内部では電荷は自由に動けますが、電荷間に斥力が働き、電荷は互いの距離を最大化しようとするので、電荷は導体球表面に一様に分布します。 ② ......[ロ]
電気力線の本数は、
では(1)の状況と変わらず
本で、電場の強さも(1)と変わらず
で、無限遠を基準とする電位を
とすると、電位は
(電位・電圧を参照)です。
では半径rの球内に電荷は存在せず、電場の強さは0です。 0 ......[ハ]導体球内部に電荷は存在せず、導体球内部では同一電位になります。半径aの導体球表面では、球の中心に電荷が存在している場合と同じく電位は
で、導体内部(
)では同一電位なので電位は
です。
......[ニ]
(3) 元々電荷が与えられていなかった中空導体球Bの内側表面には静電誘導により負電荷
が分布し外側表面には正電荷
が分布します。
においては(2)の状態と変わらず、電場の強さは
,電位は
です。中空導体球Bの内部(
)では電場は存在せず等電位です。中空導体球Bの外側表面では電位は
,中空導体球Bの内部(
)では
です。
問1 中空導体球Bの外側(
)では電位Vは
です。中空導体球Bの外側表面(
)の電位は
で中空導体球Bの内部(
)では等電位、内側表面(
)の電位も
です。導体球Aの表面(
)における電位
は、
よりも[ホ]の電位差
だけ高く
で、導体球Aの内部(
)では等電位です。よって(3)の状態の電位Vのグラフは右図。注.
における電位
は、この領域での電場の強さが
であることから、電場が及ぼす電気力に逆らう外力がする仕事として、 となります。
(4) (3)で中空導体球Bに生じた電荷のうち、導体球Aと対向している内側表面の電荷
は、導体球表面の電荷
と引き合っているため動けません。外側表面に分布していた電荷
が地表に流れます。 Q ......[ヘ] 中空導体球Bの電位が0になり、これよりも導体球Aの電位は[ホ]により
だけ高く、導体球の電位は
です。
......[ト]コンデンサーの静電容量をCとして、
∴
......[チ]
(5) 領域Ⅰ内の中心から距離rの位置における電場の強さは(2)と同様に
ですが、Qを使わずa,b,
を用いて表すので、[チ]の結果より、
・・・① を用いて、
......[リ]半径
の等速円運動をする電子は、中心向きの電気力
を受けます。電子の運動方程式は、電子の速さをvとして、
∴ 
......[ヌ]
(6) いろいろなエネルギーが出てきて紛らわしいですが、電子のエネルギー
,電子の最大エネルギー
,仕事関数W,光子のエネルギー
,放出された光電子の運動エネルギー
の関係は右図のようになっています(光電効果を参照)。なお、放出された光電子の運動エネルギーの最大値
は、
・・・②となります。放出される光電子で
より大きな運動エネルギーを持つものはありません。電子のエネルギーが
の場合、放出される光電子の運動エネルギー
は、右図より
よりも
だけ小さくなり、
......[ル]
問2 (6)で書いたように、放出された光電子の中に、
より大きな運動エネルギーを持つ光電子はありません。そうなっているグラフは③ ......[答] また②より、
......[答]
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