東大物理'19年前期[2]

2-1左に示すように、面積Sの薄い円板状の電極2枚を距離dだけ隔てて平行に配置し、誘電率ε,抵抗率ρの物質でできた面積S,厚さdの一様な円柱を電極間に挿入した。電極と円柱はすき間なく接触しており、電場は向かい合う電極間にのみに生じると考えてよい。電極の抵抗は無視できるものとする。この電極と円柱の組み合わせは、図2-1右に示すように、並列に接続された抵抗値Rの抵抗と電気容量Cのコンデンサーによって等価的に表現することができる。以下の設問に答えよ。

T RCをそれぞれερSdのうち必要なものを用いて表せ。

U 図2-2に示すように上記の電極と円柱の組み合わせをN個積み重ねて接触させ、素子Xを構成した。スイッチを切り替えることによって、この素子Xに電圧の直流電源、抵抗値の抵抗、電圧の交流電源のいずれかひとつを接続することができる。ωは角周波数、t は時間である。以下の設問(1)(3)にはερは用いずに、NRCのうち必要なものを含む式で解答せよ。
(1) はじめにスイッチを端子に接続して素子Xに直流電圧を加えた。スイッチを操作してから十分に長い時間が経過したとき、直流電源から素子Xに流れる電流の大きさと、素子Xの上端に位置する電極Eに蓄積される電気量を求めよ。
(2) 続いてスイッチを端子端子からに切り替えたところ、抵抗と素子Xに電流が流れた。ただしスイッチの操作は十分に短い時間内に行われ、スイッチを操作する間に素子X内の電極の電気量は変化しないものとする。スイッチを操作してから十分に長い時間が経過したところ、電流が流れなくなった。スイッチを端子に接続してから電流が流れなくなるまでに抵抗で生じたジュール熱を求めよ。また、素子Xを構成する電極と円柱の組み合わせの個数Nを増やして同様の操作を行ったとき、抵抗で発生するジュール熱はNの増加に対してどのように変化するかを次の@〜Cから一つ選べ。
@ 単調に増加する  A 単調に減少する  B 変化しない
C 上記@〜Bのいずれでもない
(3) 次にスイッチを端子からに切り替え、素子Xに交流電圧を加えた。スイッチを操作してから十分に長い時間が経過したとき、交流電源から素子Xへ流れる電流を求めよ。

V 設問Uで用いた素子Xを構成する物質のεおよびρの値が未知であるとき、これの値を求めるためにブリッジ回路を用いる方法がある。図2-3のように素子X,設問Uの交流電源、交流電流計、3つの抵抗と1つのコンデンサーを配置し、交流ブリッジ回路を構成した。抵抗値と電気容量の大きさを調節したところ、交流電流計に電流が流れなくなった。このとき、図2-3のように各抵抗の抵抗値は,コンデンサーの電気容量はであった。次のからに入る適切な数式を書け。なお、JKLMは回路上の点を表す。

K-M間の電圧はである。このことを用いて、抵抗に流れる電流を、を含まない式で表すと、となる。一方、J-K間の電圧はであることから、J-L間を流れる電流をCRを含む式で表すととなる。以上のことから次式が得られる。
ただし、ωNsdのうち必要なものを用いて表すこと。


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解答 交流ブリッジ回路を使って物質の誘電率と抵抗率を求めよう、という問題です。入試問題として少々無理な気もしますが、Vイウは、という問題自体がヒントになっています。その他は、状況がつかめなくても、問題文の指示通りに計算して行けばゴールに到達できます。

T 面積S,厚さdの円柱内の物質の抵抗率ρ誘電率εのとき、等価的な抵抗R,電気容量Cは、
......[] ・・・@

U 抵抗RN個直列接続されたときの合成抵抗,電気容量CコンデンサーN個直列接続されたときの合成容量です。
(1) オームの法則より、素子Xに直流電圧を加えたときに素子Xに流れる電流の大きさは ......[]
電極Eに蓄積される電気量は ......[]

(2) 問題文の意味が取りづらいですが、「スイッチを切り替えている間には、素子X内のコンデンサーに蓄積されている電気量は変化せず、スイッチ切り替え後十分に長い時間が経過する間に、素子X内のコンデンサーに蓄積されていた電気量は、素子X内の抵抗R,また、外付けされた抵抗を通して放電される」と読んでください。
スイッチ切り替え前に、素子X内のコンデンサーに蓄積されていた電気量が放電されるのですが、抵抗と素子X内の抵抗とで、ジュール熱をどう分け合うかが問題になります。

そこで、電気容量
Cのコンデンサーに電気量Qの電荷が蓄えられていて、抵抗値2つの並列接続された抵抗(合成抵抗)を通して放電される場合に、十分時間が経過する間にで発生するジュール熱を調べてみます。に流れる電流をとして、両抵抗の電圧は等しく,コンデンサーから流れ出る電流をiとして、
より、


はコンデンサーに蓄えられていた
静電エネルギーです。同様にして、


以上より、であることが分かります。

つまり、抵抗と抵抗とで、ジュール熱をに分け合います。よって、抵抗で生じたジュール熱は、
......[]
ここで、Nを大きくすると、で発生するジュール熱は、単調に減少します。 2 ......[]

(3) N個ある電極と円柱の組み合わせの1個にかかる電圧はです。抵抗Rに流れる電流は,コンデンサーCに流れる電流です。この2つの電流が直列接続されている全ての電極と円柱の組み合わせに流れます。交流電源から素子Xに流れる電流は、両者の和となり、 ......[]

V K-M間の電圧は、抵抗が直列接続されているうちのの電圧で、
[] ......[]
抵抗に流れる電流は、問題文のの形から、コンデンサー両端の電圧をとおくと、コンデンサーを流れる電流は、
 (微分の公式を参照) ・・・A
この電流にも流れ、両端の電圧は、
より、
抵抗の電圧とコンデンサーの電圧の和は
K-M間の電圧に等しく、[]の結果を用いて、
の係数を比較して、
これより、
抵抗に流れる電流は、Aを用いると、より、
 []  [] ......[]
J-K間の電圧は[]と同様にして、[] ......[]
J-L
間を流れる電流は、U(3)とすることにより、  []  [] ......[]
交流電流計に電流が流れないので、この電流はと等しくなります(ホイートストン・ブリッジを参照)。よって、
係数比較して、
よって、
 []  [] .......[]



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